第205話 『懐かしい』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第205話
『懐かしい』
「雨が強くなってきてますね」
ホテルでパソコンの画面を覗くアンが、独り言を呟く。イタッチ達を追って飛ばしたドローンの映像には、雨粒がかかり、視界を遮る。
「お二人とも……無事でしょうか」
「約束の時……か。分からないが、受けて立つぜ」
雨も強くなり、天が唸り声を上げ始める。そんな中、ダッチは刀を横に持つ。
「音波……か。こんな雨の中、効果があると?」
雨だけでなく、雷の音も響いている。ダッチの刀が発する音が、ウンランに届くのかは怪しい。
「いいや、効果はあるさ」
ダッチは刀を揺らし始める。すると、刀から音が発生して、辺り一体に特殊な音が響き渡った。
その音で草木は揺れて、イタッチも耳を塞ぐ。
木に吊るされているロボスはその音を心地の良い音色を聴くように聴いている。
「雨の中でも……響くのか」
ウンランは音によりじーんと頭が重く感じ始める。音から身を守るため、両手で耳を塞いだが、その音は隙間から入ってくる。
やがて音によりウンランは膝を地面につけた。
「はぁはぁ……終わった…………のか」
ダッチが音を止めると、ウンランは片手を地面につけた状態で顔を上げる。そして刀を握るダッチに目やる。
「……音は何にも負けない。壁を通過し、雨や風の影響は受けない」
ダッチはそう言いながら刀を手を地面につけているウンランへと歩む。そしてウンランの前に着くと足を止めた。
「さぁ、約束とはなんだ、教えろ……」
ダッチは刀を向けてウンランへ詰問する。しかし、ウンランは目線を下に向けて、応えることはない。
「お前と俺は会ったことがあったのか?」
「………………」
どれだけ聞いても答えない。
「そうか、言う気はないか……」
そんな答える気のないウンランの態度に、ダッチはため息を吐くと、刀を振り上げる。
雨粒が刀を伝い、ダッチの刀を濡らす。
音の効果で動けずにいたウンランは、やっと身体の重さを感じなくなり、自由に動けるようになった。しかし、ダッチはすでに刀を下ろすだけでウンランを切れる状態。
ウンランはもう間に合わないと、立ち上がることを諦めてその場で座り込んだ。
「さらばだ。ダッチ……我が……」
ダッチの刀がウンランを狙って振り下ろされる。雨粒をウンランを切り捨てようと、刃が向かう。
「友よ……」
──とある遊園地で彼らは出会った。小さな彼らの出会いは、この先の運命を大きく変えることとなる──
──全ては約束──
──全ては友へ──