第204話 『懐かしい』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第204話
『懐かしい』
ダッチがウンランに刀を投げ渡すと、ウンランはキャッチして二刀流で構え直す。それを見てダッチはニヤリと笑った。
「なんでだろうな、分からない。分からないが、懐かしいよ」
そして笑ったダッチはウンランにそう伝える。すると、構えたウンランもふふと頬を上げた。
「ああ、俺もだ。懐かしい、こんなことはなかったはずなんだけどね。アンタとは大昔から戦っていたみたいだ」
ダッチと刀を構え直し、武器を持った二人はお互いへと走り出した。刀を振り上げ、お互いを切りつけ合う。
二人の攻防が続き、その間にイタッチとロボスの戦闘は終了していた。
二人が武器をぶつけ合い、弾かれあった時。
雨が降り出した。二人の戦いを激化させるように降り出した雨は、森に霧を発生させる。
それでも二人の戦闘は続く。
地面が濡れて足場が悪くなった。霧が出て視界が悪くなった。しかし、何が起ころうとも、二人の戦闘は休まることはない。
いや、逆に二人の武器をフルスピードは早く、そして強くなっていった。
戦闘の中で成長し、壁を越えた二人の戦闘は雨にも負けなかった。
イタッチに敗北したロボスは、拘束された状態で二人の戦闘を見守っていた。そして二人の成長スピードに胸を躍らせる。
「なんて成長だ。これだ、これこそ俺の求めていたもの……ああ、なんて良いんだ」
興奮するロボスの近くでは、木の下で雨宿りするイタッチが、二人の戦闘を観戦する。
「戦いの中で成長する……か。二人の実力が均衡しているからこそ起こる現象か……。もう、どちらが勝ってもおかしくないな」
イタッチは腕を組む。
もう。イタッチがそう言葉にしたのは、戦闘が始まる前の段階で、勝者に目星がついていたからだ。
何が起こるか分からない。それこそが戦闘。だが、ダッチには大きく劣る点があった。
「戦いの中で自分を取り戻したか」
かつてイタッチとダッチが出会った時。彼は四神を奪い取るということに執着していた。
そして事件が終わり、ダッチが四神のボスとなってからは、伝統を守ることを第一とした。
「だが、どれもお前じゃない。ダッチ、これからはお前の時代だ、お前のやり方を貫け……」
ダッチとウンランの刀が弾かれ合い、戦闘から数分の時が経った。
雨に濡れた二人の毛は、水分で重さを持ち始めた頃。
「…………ダッチ。……お前が本当に約束を忘れていたとしても、運命はこうやって俺達を巡り会わさせた。その運命に俺は感謝しよう」
ウンランは雨の中、ニヤリと頬を上げた。
「さぁ、約束の時だ」