第195話 『思い出』
怪盗イタッチ大作戦！！
著者:ピラフドリア
第195話
『思い出』
四神は四人の最高幹部によって設立された。
だから、もう一人、設立に携わっていた人物が裏にいた。
しかし、彼女の情報は全て消え去り、さらには彼女も四神から姿を消した。
彼女について知っているのは、古参の最高幹部である四人のみ。そして彼女がいなくなったことで、四神は四つに分裂した。
「ここがダッチさんの思い出のお店ですか〜」
辿り着いたのは日本でもあるようなレストラン。
車から降りたイタッチはそのレストランに驚いて無言でレストランを見つめる。
アンは深く追求することなく、単純に楽しんでいるという様子だ。
「さっさと行こうぜ」
中も変わらず、普通の店だ。
これといって特徴があるわけではない。
店内を進み、適当な席に座るとメニュー表を広げて注文。
ホテルのメニューよりも減っているようにも感じられるが、ダッチは満足げな様子だ。
メニューを注文し、料理が運ばれてくるのを待っている間、アンがダッチに尋ねた。
「思い出の店ってことでしたけど、このお店で何があったんですか？」
「親父と……前によく来てた店なんだよ」
ダッチは昔のことを思い出す。
「仕事で忙しかったはずなんだがな。どうにか時間を作ってここに連れてきてくれてた」
「そうなんですか……」
「その時に聞かされた四神開設時の話。あれがどうも頭をよぎってな」
「四神開設時？」
アンは首を傾げる。イタッチは椅子に深く座り、椅子に寄りかかる。
「俺も何度か四神とはぶつかったが、そういえばそれは知らないな……どんな話なんだ？」
「ああ、これは親父達の目的でもあり、それを引き継いだ俺もそれを目標としなければならない」
そう言って、ダッチは昔の話を語り始めた。
かつて四神には五人目の幹部がいた。四人の幹部をまとめ上げる、リーダー的存在。彼女が中心となることで、荒くれ者だった彼らは連携が取れて、まとまりが生まれていた。
彼女の見た目は紺色のフードに白い仮面を被った女性。美しくも不気味さを持ち、幹部達を魅了した彼女は組織を大きくしていった。
やがて組織が大きくなり、組織の名前が世界中に広まった頃。その女性は突然姿を消した。
何も言葉も残さず、どこに行ったのか、行方を掴むことは誰一人できなかった。
四人の幹部に残されたのは、大きくなった組織のみ。彼女がいなくなったことで統率を失った組織はバラバラになっていき、四人の幹部はそれぞれの道を行くこととなる。
だが、そんな四人だが、一つだけ一致している目的があった。それは……。
彼女が帰ってきたくなった時、彼女が帰って来れる場所を残そう。
バラバラになった幹部達。しかし、全員、それを成すために動くことを決めていた。
