第193話 『裏切り者に』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第193話
『裏切り者に』
「俺は、作戦を流したスパイがいると考えている」
牛乳を飲み終えたダッチは、イタッチとアンに伝える。
薄々二人もその可能性を考えていた。しかし、スパイがいるとすれば、四神の幹部の中にいる。
あのメンバーの中に裏切り者がいると言えば、ダッチの仲間を侮辱することにもなる。だから、二人からはそのことを口に出すことはしなかった。
だからこそ、ダッチが切り出した。信頼する仲間を疑う。それを四神のリーダーであるダッチから動いたのだ。
「俺達が奇襲を仕掛けることを知っていたのは、四神の幹部と俺達だ。信四神会の反撃で危険な目に遭った俺達三人は可能性が薄くなり、作戦内容だけ知らされていたあのメンバーに裏切り者がいる」
ダッチが宣言すると、アンが手を上げた。
「でも、皆さん忠誠心は強そうでしたよ……まぁ、一人を除いてですが…………」
アンの脳裏には幹部の一人であるカマキリの顔を浮かぶ。
彼は四神に対しての忠誠心は強かったが、ダッチへの忠誠は決して高くはなかった。
もしもカマキリが本当の四神は信四神会であると判断し、裏切っているという可能性も考えられる。
アンと同じようにイタッチも頷く。
「ああ、俺も同感だ。アイツだけ他のメンバーに比べて異質だった。あのカマキリならありえるぜ」
「ですよね! イタッチさん!!」
イタッチとアンは同じ意見のようで頷きあう。しかし、ダッチだけは賛同していない様子だ。
「俺は別のやつがスパイだと思う……。アイツは確かに不器用なやつだが、親父が現役時代の頃からの仲だ、四神に対する忠誠心は人一倍強い。アイツが信四神会に情報を流してるとは考えられない」
断言してみせるダッチ。しかし、そうなると誰が裏切り者なのか。
アンとダッチは唸り声をあげて考え込む。そんな中、イタッチはある人物のことを思い出した。
「そう言えば、幹部のカンガルーいるよな。アイツ、やけに今回の作戦について聞いてこなかったか?」
「そういえばそうでしたね」
幹部との話し合いが終わった後、作戦は三人で行うということになったが、カンガルーはその後もしつこくついてきて作戦について聞いてきた。
ダッチは立ち上がると、
「……アイツ。確かにアイツも色々怪しい点があったな。少し話を聞いてみるか」
その日は次の日の作戦会議に向けて、イタッチ達は休むことにした。翌日、四神の幹部ともう一度会い、今回の議題についてさらに深く話し合うこととなる。
カマキリとカンガルー、どちらが怪しいのか。