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怪盗イタッチ大作戦!!  作者: ピラフドリア
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第18話 『機関車の襲撃者』

怪盗イタッチ大作戦!!




著者:ピラフドリア




第18話

『機関車の襲撃者』





 駅から徒歩5分ほどの場所にある小さな喫茶店。カウンター席とテーブル席の隙間がほぼなく、椅子を出すと歩くのが精一杯な店内。





 ラジオの音が店内に響き、一人の客が店員に向かって話しかけた。




「また現れたらしいな。怪盗が……」




 彼はこの店の常連客の老人のカエル。客足の少ないこの店だが、このような常連客がよく来てくれている。




「らしいな……」




 エプロン姿のイタチの店員がコーヒーカップを洗いながら適当に返事をした。




「あんたも同じイタチだろ。まだ若いんだから、もっと派手なことしたらどうだ?」




「俺はそういうのは……ちょっとな」




「そうかい。……っと、今日は早めに店閉めるんだっけ? もう出た方が良いか?」




「ああ、……すまないな」




 カエルは立ち上がると手慣れた様子で小銭をテーブルの上に置いた。




「また飲みにくるよ」




「いつでも来てくれ」




 客がいなくなり、イタチはテーブルを拭いたりして片付けを始める。

 明かりを消して鍵を閉めようとした時。




 扉についた鈴を鳴らして誰かが入ってきた。




「もう今日は終わりだ……」




 イタチが入ってきた人物を見ると、黒いコートを羽織り、シルクハットを被っている。

 帽子には二つの穴が空いていて、そこからウサギの耳が飛び出している。




 コートの人物は店に入ると扉を閉める。




「いや、これからだろ。仕事は……」




 コートの人物が帽子を取るとそれはダッチだった。







 二人は服を着替えると二階にあるアジトで計画を立てる。




「それで今回盗むものはなんなんだ? 俺の初めての仕事だ。大物で頼むぜ」




 ダッチは表情には出さないが、楽しそうに聞いてくる。




 イタッチは部屋の壁に貼られている一枚のチラシを指差す。




「今回狙うのはあれだ」




 そこには蒸気機関車の写真が大きく印刷されたチラシだ。




「列車……? あんなもの盗んでどうする?」




「いや、違う」




 イタッチは蒸気機関車の手前にいる運転手を指差す。そしてその運転手の首には宝石が嵌められたネックレスがしてあった。




「このネックレスを手に入れるのか?」




「そうだ……」




 イタッチとダッチは必要なものを手に、チラシに書いてあった場所へと向かう。





 蒸気機関車の10年ぶりの運行。久しぶりの復活にファン達が集まるイベントだ。




 イタッチとダッチは夜のうちにその会場に近づいていた。




「それでこのネックレスはどんなものなんだ?」




 車を運転しながらダッチは助手席に座るイタッチに聞く。




「これはスーパージュエル。歴史的にも価値のある宝石だ」




「そんな宝石をなんで車掌が?」




「贈り物なんだ。大貴族のな……」




「大貴族の?」




「この蒸気機関車の設計にはヴィオレットゥっていうフランスの貴族と当時の鉄道会社の社長が協力して作ったもので、その宝石はそのお礼にと贈られたものなんだ」




「そういうことなのか」










「初めまして警視庁のフクロウ警部です。イタッチからの予告状はどちらですか?」




 イベント開始の1日前にフクロウ警部は、鉄道会社の元を訪れていた。




「よく来てくれました。フクロウ警部」




 黒猫の車掌はフクロウ警部を連れて、駅にある控え室に向かった。




 部屋には何人かの職員がおり、奥には運転士姿をした子猫がいた。




「当日運転するのは私の娘のこの子だ」




 紹介されると子猫は頭を下げて挨拶する。




「ミーシャです。よろしくお願いします」




 ミーシャの首にはイタッチからの予告状にあったネックレスが付けてあった。




「今回のイベントは我々の鉄道会社の恒例行事。必ず成功させていただきたい」




 フクロウ警部は敬礼する。




「お任せください!!」








 駅員との話を終えたフクロウ警部は、外で待っていたネコ刑事と部下達の元へと向かう。




「どうでしたか?」




「なぜ娘のみでこのイベントを開催するのかは疑問だが、俺の目的はイタッチを捕らえることだ」




 フクロウ警部はキリッとした顔で部下達の方を向く。




「今回こそはイタッチを捕まえるぞ!!」




「おーー!!」






 ついにイベント当日。蒸気機関車を撮ろうと何人ものファン達が押し寄せていた。

 そんな中、蒸気機関車に乗るためのチケットを手に入れた客達は列車の中へと入っていく。





 フクロウ警部もネコ刑事と何人かの部下を連れて蒸気機関車の中で警備にあたることにした。








 汽笛を鳴らして、蒸気機関車は動き始めた。




 イタッチとダッチは関係者の老人に変装して、蒸気機関車の中で寛いでいた。




「それでいつ動くんじゃ?」




 ダッチは杖をつきながらイタッチに聞く。イタッチは変装のためにつけた白い髭を撫でる。




「……まだだ。警部も近くにいるのう」




 イタッチの視界には警備をしているフクロウ警部の姿があった。




 機関車の中には見張りがおり、怪しい動きをすればすぐに騒ぎになる。タイミングを見分けなくてはならない。




 イタッチ達がフクロウ警部達の動きを確認しながら待っていると、フクロウ警部がイタッチ達の元へと近づいてきた。




「すみませんね。予告があったことで警戒体制で……」




「いえいえ、わしらも安心じゃ……」




「では……」




 フクロウ警部は一言話しかけると離れていく。フクロウ警部が離れてイタッチはホッと息を吐きた。




「バレたのかと思った」




「ハハハ! あの警部、なかなかだな」




 ダッチは驚いているイタッチを軽く笑う。




 しばらくの時間が経過したが、警備の多さで動けない。そんな中、列車の上からヘリの音が聞こえ始める。




 テレビか何かかと思っていたが、天井の走る音が聞こえ、次の瞬間。




 移動している列車の窓ガラスを破り、覆面の人達が列車の中に侵入してきた。




「動くな!!」




 覆面の集団は銃を乗客に向けて警備員の動きを止めた。




「まだイタッチは来ていないようだな……」




 覆面の集団の中からリーダーと副リーダーらしき人物が出てくる。

 リーダーは小柄で覆面の中から冷たい目線で乗客を睨む。

 副リーダーは三メートル近い巨大で、無言でリーダーの後ろをついて歩く。




 老人の変装をしているため、イタッチはばれていないようだ。

 ダッチはバレないように小声でイタッチに聞く。




「知り合いか?」




「いや、知らないな……」




 同業者か。俺が予告を出したことを知っておきながら、横から現れるとは良い度胸だな……。




 人質を取られ、フクロウ警部達は動くことができない。

 フクロウ警部は銃を地面に捨てさせられ、部下も動けない。

 覆面の集団は前の車両の扉を開けると運転席へと行き、運転士の子猫を連れてきた。




「お前達、何者だ」




 フクロウ警部は手を上げたまま、覆面の集団に聞く。するとリーダーが答えた。




「私たちはパンテール。ある人の依頼でスーパージュエルを奪いに来た」




「ある人……?」




「お前達は知る必要はない」




 リーダーは子猫からネックレスを奪い取ろうとするが、子猫はそれを拒否する。




「抵抗するか。なら……」




 リーダーが懐から銃を取り出そうとした時、ネコ刑事が動いた。




 近くにいた覆面の一人に掴みかかると投げ飛ばした。それに動揺し覆面の集団はネコ刑事の方に銃口を向ける。




 だが、ネコ刑事が動くと同時に、覆面の集団の銃口に折り紙が詰まり、発砲できなくなる。

 その隙にネコ刑事は地面に落ちていたフクロウ警部の銃を拾い、フクロウ警部に投げた。




 フクロウ警部は銃を受け取るとリーダーに向けて銃を発砲する。だが、それとほぼ同時にリーダーも銃を抜き、フクロウ警部に向けて撃つ。




 同時に撃たれた銃弾。フクロウ警部は急所は避けたが肩を撃たれた。リーダーは持っていた銃を弾かれて、地面に落としてしまった。




「なかなか良い腕だ。人質がいるのに躊躇なく的確に私の銃だけを狙う……見事だ…………」




 フクロウ警部は肩を押さえる。




「お前に褒められても嬉しくないな……」





 フクロウ警部はリーダーが睨みつける。リーダーは落とした銃の位置を確認するが、すぐには動かない。




「どうやらすでに、イタッチはここに来ていたようだな」




 そして警戒しながらそう言った。




 ネコ刑事は驚いているが、フクロウ警部は当然という顔をしている。




「そこの刑事を救う意味は分からないが、お前が傍観しているだけならば、この宝石は私が貰っていく」




 リーダーはそう言って子猫の首につけているネックレスに手を伸ばす。

 だが、




 子猫とリーダーの間に赤い折り紙で作られた剣が飛んできた。

 剣は二人の間を通り抜けて壁に刺さる。




「無駄は争いは避けたかったが、宝を横取りされるのは許せないな」




 そう言いながら客の老人が立ち上がる。老人は腕を振って折り紙で着ていた変装装備を脱いだ。




「イタッチ……遅いじゃないか……」




 肩を押さえながらフクロウ警部は強がるように笑う。




「ああ、お前がやられるのを見ててやったぜ」




「最悪だ……」




 イタッチが登場すると、リーダーは部下に向かって指示をする。




「イタッチを倒せ!!」




 警備員達を見張っていた部下達の全員が一斉にイタッチの方を向き、襲いかかってくる。

 だが、イタッチは一歩の動かずその場で立ち尽くす。




「任せたぜ」




 イタッチがそう呟くと、もう一人客の老人が立ち上がる。そして刀を抜くと、軽快に襲撃者達を切り倒していった。




 そしてあっという間に十人以上いた覆面の集団はリーダーと副リーダーを除いて倒された。




「あいつは……何者だ」




 覆面の集団だけでなく、フクロウ警部も驚いた表情を見せる。そんな中、老人は変装の折り紙を剥がす。




 老人の正体はダッチウサギ。




「……貴様はダッチ!! 四神のダッチか……なぜ、イタッチと……」




「色々事情があってな。今はコイツの相棒だ」




 イタッチとダッチは並び、覆面のリーダーと副リーダーと向かい合う。




「四神と手を組んでいるとはな。怪盗イタッチ、期待外れだったな……」




 リーダーはそう言って、子猫を引っ張り人質にする。




「そんな野暮なことはいないさ。一対一だ、そいつで蹴りをつけよう」




 イタッチはそう言いながら歩み寄っていく。




「……やれ、コション」




 リーダーは副リーダーにそう告げると、副リーダーは頷く。

 そしてその巨漢で拳を振り上げると、イタッチに向けて殴りかかってきた。




 イタッチはそんな巨漢の拳が近づいてきても、動揺することはなく冷静に進んでいく。




「邪魔はさせねーよ」




 巨漢の拳をダッチが刀を抜いて、横にすると受け止めて止めた。




「コイツは俺がやる。問題はないな」




「ああ、任せたぜ。ダッチ」




 イタッチと副リーダーの攻撃を受け止めたダッチはすれ違い、イタッチはリーダーの元へと進む。




 そしてリーダーの前でイタッチは止まった。




「改めて予告状を出すとしよう」




 イタッチは懐から赤い紙を取り出すと、それをリーダーに向けて投げた。

 リーダーはそれを片手でキャッチすると、その予告状を見る。




「お前ら、パンテールからこの列車とその乗員の全てを盗み出す。怪盗イタッチ」









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