第179話 『漢の中の王』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第179話
『漢の中の王』
街にある川辺。そこでエレファントとダッチは激しい戦闘を繰り広げていた。
「やるな……象」
ダッチは刀を両手で握りながら、エレファントに賛美を送る。
「四神。君もね」
エレファントも汗を流して、息を荒げながら言葉を返した。
戦闘が始まって15分が経過。二人は体力が削れ始めていた。
「はぁはぁ、まだ降参しないのか? 四神」
「降参するのはお前だろ……だいぶ疲れてるようだが」
二人とも息が荒くなり、もう体力も限界に近い。実力はほぼ互角。パワーで押し切ろうとするエレファントと剣術で応戦するダッチは、お互いにダメージを与えられても倒しきれずにいた。
体力が削れ、これ以上の長期戦は厳しいと判断したのか、エレファントは構を変えた。
姿勢を低くして両手を前にして構えた。構えからして低い姿勢で飛びかかり、接近戦の組み手へ持ち込むつもりなのだろう。
「四神。これから俺の究極の技をお見せする。この技を喰らって、リングで立っていたものは一人もいないぞ」
この技で終わりにするという気迫を放つエレファント。ならばと、ダッチも刀を鞘に収めると居合を構えになる。
「そうかい。なら、俺もこの技で決めさせてもらうぜ」
二人は構えた状態で固まる。静寂が川辺を包み込み、水の流れる音だけが周囲に響く。
「行くぞ!!」
「っ!!」
エレファントがダッチに向かって走り出す。走り出したエレファントは低い姿勢でダッチの脚を掴もうとしたが、
「くっ」
視界からダッチの脚が消える。そして、エレファントの背後にダッチが立っていた。
すれ違った二人。掴み損ねたエレファントは、ダッチの方を振り返ることはせず、その場で真っ直ぐ立つと、
「……ダッチ。まさか、この技がやぶ、られるとは…………な」
エレファントは立った状態の前、気を失った。ダッチは刀をしまった後、ふらっとして片手を地面につける。
「俺も危なかったぜ。エレファント……」
ダッチは気絶したエレファントにそう伝えてから、ふらふらの足で立ち上がる。そして川辺から離れて、決闘の勝利を二人に伝えるために喫茶店へ向かった。
こうして二人の漢の決闘に決着がついた。
戻ったダッチは仲間の2人に出来事を話し、勝利を告げる。勝ちを舞い上がるアンと当然だという顔のイタチ。しかし、彼らはまだ知らない。
この戦いが、次の事件へと始まりであったを……。
そしてあの大事件はもうすぐそこまで近づいてきているということも。
まだ、まだ誰も知らない。彼ら以外は…………。
「四神のダッチか……。ふ、もう時期時が来る。その時こそ、旧世代から新世代へと移り変わる時だ」