第177話 『格闘王』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第177話
『格闘王』
スタジアム内を声援が包み込む。十数名以上も猛者達の転がる中、ただ一人リング内で立つ動物がいた。
長い鼻と立派な牙を持ち、その動物は両手を高く上げる。
「俺は最強だァァァァァ!!!!」
彼は敗北という言葉を知らなかった。
ただの一度も敗北を知らず、全ての勝負に勝ち続けて来た彼は、無敗を誇るチャンピオン。スタジアム内にそのチャンピオンの名が響き渡る。
「十四名もの猛者を倒し、優勝したのはエレファントだ!!」
駅から徒歩十分ちょいの場所にある喫茶店。そこにイタチと子猫が働いていた。
「イタチさん、これ洗い終わりました!」
「了解、じゃあそこに置いといて」
イタチはアンに洗い物を任せ、作り終わったコーヒーを常連の客に出す。客はコーヒーを受け取った後、アンの方に目線を向ける。
「アンちゃんも完璧に仕事ができるようになって来たんじゃない? コーヒーは作ってるの?」
「よく任せてますよ。でもたまに……」
イタチが話している中、常連客はコーヒーを口にする。そしてその味に思わず吹き出した。
「失敗します」
「ブーっ!?」
「……ちょうど当たっちゃいましたか」
「今のアンちゃんが作ったコーヒーなの!?」
客がコーヒーの味に苦戦する中、店の扉が開き巨大のゾウが店の中に入ってきた。ゾウはマスクにサングラスをして顔を隠しているが、巨体から伝わってくる強者感にイタチは警戒をする。
「好きな席へどうぞ」
イタチが言うと、ゾウは一番奥の席へ座る。そしてコーヒーを注文して飲み始めた。
「…………悪くないな」
アンが作ったコーヒーを美味しそうに飲み干し、ゾウはイタチにある紙を渡した。
「ある人物がこの喫茶店に通ってるという情報を得てな。その手紙をそいつに渡して欲しい」
ゾウはイタチに手紙を渡して、さっさと店を出て行ってしまった。
「常連さんへのラブレターでしょうか?」
イタチが持つ手紙をアンが覗き込む。すると、そこには、
「ダッチさんへの決闘の申込み……」
ダッチに対しての挑戦状が書かれていた。
そしてタイミングよりダッチが来店する。
「おう、イタチ、アン。今日も来たぜ」
陽気に挨拶をするダッチだが、そのダッチに向けた二人の目線は真剣なもの。それを見てダッチも表情を変えた。
「何があったんだ……」
チャンピオンの元に関わってきた電話は、ナナシを名乗る人物からだった。その人物はある実力者の情報を伝えた。
その者は無敗を誇るチャンピオンを震わせるほどの戦績を持ち。チャンピオンはその者に勝ってこそ、本物の世界一の漢になれると確信した。