第172話 『ワンコの提案』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第172話
『ワンコの提案』
「サソリ君を警官として復帰させたいのだが、どうだろうか?」
ワンコ長官の提案。それはサソリを警官として復帰させようというものだった。
その言葉にフクロウ警部とゴリラ警部はビクッと肩を揺らした。
しかし、飛び出してきそうになった言葉を無理やり押し殺す。
フクロウ警部は立ち上がると、ワンコ長官に反論する。
「なぜ、サソリを警官に戻すのですか!! コイツは警官をやめ、今は犯罪者と手を組んでるんですよ!!」
さらにゴリラ警部も立ち上がる。
「そうです。それに怪盗としての罪もある。盗みの件は偽物だったということでどうにかできても、美術館への不法侵入もあります」
二人は言葉では反対してはいるものの、戻ってきて欲しいというのが本音であった。いや、もしかしたら二人はその本音に気づいていないで強がっているのかもしれない。
だが、二人が考えていることはどうであれ、本当の心ではサソリと再び仕事がしないのだ。
ワンコ長官はソファーに深く腰をかけたまま、腕を組むと
「サソリ君の意見を聞こうか」
「俺も戻れません。元々俺は殉職ということになってました。だからこそ、上層部を調べやすかったのもありますが…………今の俺では戻れません」
「そうか……まぁ、君達がそう来ることは分かっていたよ」
ワンコ長官はニヤリと笑い、三人の顔を順番に見る。
「上層部の件。今回この報告を受け、俺は信頼できるメンバーに声をかけ、秘密裏にある組織を設立しようと考えている」
三人が首を傾げる中、ワンコ長官はソファーの隙間に隠してあった書類を取り出してテーブルの上に置いた。
「今回のような事件を防ぐために警察組織の中に特殊組織を設立する。その組織にサソリ、君に入って欲しい」
「しかし、俺は……」
「殉職という情報はそのままだ。それに表向きは怪盗としてのサソリとして活動して欲しい。そうすることで警察組織内を騙す。今の君の立場だからこそできる仕事だ」
「今の俺だからできる……」
サソリが迷う中、後を押すようにゴリラ警部はソファーに勢いよく座ると、
「良いんじゃねぇか。こんな奴だが役には立つだろうよ、今回みたいな事件を起こさないためにも、こういう輩は必要だ」
さらにフクロウ警部は腕を組むと、
「俺もそう思うぜ。まぁ、こんなスパイみたいな奴がいるとヒヤヒヤして手柄が出せなくなるかもしれないがな」
「お前はいつも逃げられてるだろ?」
「あぁ?」
いつものペースを取り戻したのか、フクロウ警部とゴリラ警部は睨み合いを始める。そんな二人を放置して、ワンコ長官はサソリに再び尋ねた。
「どうする? あとは君の判断だ」