第17話 『相棒に』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第17話
『相棒に』
イタッチはダッチの写真を撮っていた。
「おい、隠すなよ、上手く撮れないだろ」
「なんで俺の写真を撮るんだよ!!」
普段から裸だというのに、写真を撮ることになると恥ずかしがるイタッチ。
イタッチはダッチの周りを回りながら、ダッチの模様を撮っていく。
写真を印刷すると、それをテーブルの上に並べた。そして写真に写っているダッチの模様を一枚の紙に写す。
「そろそろ教えろ。なぜ、俺の模様が必要なんだ?」
「……お前がこの宝の地図を最後の鍵なんだよ」
ダッチの模様の書かれた紙を黄金の甲羅の上に翳す。そしてその上に光を立てると、
「これは……」
甲羅の模様とダッチの模様が合わさって地図が出来上がった。そして甲羅の真ん中に空いていた穴。その穴は一際目立つ。
「これが宝のありかだ」
「俺の模様で完成するとは……。だから、親父は…………」
ダッチは立ち上がると
「じゃあ、早速宝のある場所に行くか」
ダッチとイタッチは地図に描かれていた場所に着いた。そこは海沿いの森林。そこしばらく進み、イタッチは脚を止めた。
「ここだな」
「ここって……何もないぞ?」
「甲羅にも穴が空いてただろ。掘るんだよ」
イタッチは折り紙でスコップを作るとダッチに渡して一緒に掘り始めた。
しばらく掘っているとダッチのスコップが何か硬いものにあった。それは掘り起こせるものではなく、その大きさは体育館並みの大きさがある石造の遺跡。
イタッチが穴を開け、二人は中に入る。中は空洞になっていて薄暗く開けている。
そんな空間に降り立った二人がライトをつけると、
「……これが親父達の遺産」
そこには大量のお宝が眠っていた。
「おぉぉ!?」
興奮したイタッチが宝の山に飛び込む。泳ぐようにお宝の中を進んでいく。
「流石は四獣だな。これだけの宝を隠し持っていたとは……」
お宝に喜ぶイタッチだが、そんなイタッチに向けてダッチが刀を向けた。
「では、案内ご苦労だったな、イタッチ……」
刀を向けられたイタッチは動きを止める。
「ここまで大人しくしてたのは、俺に遺産を見つけさせるため。そういうことだな」
「分かっているなら話が早い」
イタッチは宝の山から出てくると、折り紙の剣を作る。
「そうだな。決着をつけるとしようか」
二人は各々の武器を構える。遺跡の中に緊張感が走る。
最初に動いたのはイタッチだ。剣を振り上げてダッチに近づく。
ダッチは刀を横にするとイタッチの剣を受け止める。
二人の武器がぶつかり火花が散る。イタッチの剣を受け止めたダッチにイタッチは折り紙で作った手裏剣を取り出すとそれを投げる。
しかし、ダッチは素早く移動して、イタッチの攻撃を避けた。
後ろに大きく飛んでイタッチから距離を取ったダッチ。そんなダッチに追撃をするため、イタッチは手裏剣を何度も投げる。
だが、その手裏剣をダッチは一つ一つ的確に刀を振って打ち落としていった。
やがてイタッチの手裏剣のストックが減り、イタッチは手裏剣を投げるのを止める。
二人の距離は物を投げれば届く距離だが、剣が届く距離ではない。
最初は手裏剣を持っていたイタッチが攻撃をし、ダッチは防戦の一方だったが、手裏剣が止まるとダッチは刀を横にした。
その名前は前にも見たことがある。
「お前を一度倒した技……。これで前回と同じように平伏すんだな」
ダッチは刀を小刻みに震わせる。それにより発生した音が周囲に広がる。
遺跡を震わせるほどの音波。それが室内に響く。それによりイタッチは頭を抑えながら膝を地面につけた。
イタッチに生まれた隙。それを逃さまいとダッチは刀を握りしめてイタッチに近づく。
刀を振り上げてイタッチに刀が振れる。
イタッチの身体が真っ二つに切断される。だが、
「これは……折り紙……!?」
ダッチが斬ったのはイタッチの作った身代わりの折り紙。
「こっちだよ」
ダッチの背後に現れたイタッチはダッチに抱きつく。ダッチは抵抗して刀を振るが、後ろにいるイタッチには当たらない。
イタッチはダッチをそのまま持ち上げると、身体を仰け反らし、ダッチの頭を地面へと叩きつけた。
地面に頭を打ったダッチは力尽きて気絶する。その隣でイタッチは胡座で座る。
「……その刀はお前と相性が悪いみたいだな」
イタッチはそう言うと耳から折り紙で作った耳栓を取り出した。
転がっているダッチの耳からも耳栓が転げ落ちた。
目を覚ましたダッチの隣にはイタッチがいた。
「俺を負かしたんだ。さっさと宝を盗んでいけば良いだろ」
寝た状態のままダッチはイタッチに声をかける。
「そしたら宝を盗んだことにはなんないだろ」
「……宝はこの遺跡にある宝石」
「違うな」
イタッチは黄金の甲羅を取り出すと、それを倒れているダッチの隣に置く。
「爺さんは黄金の甲羅を見たいと俺に依頼した。黄金の甲羅はお前とセットで完成系だ。爺さんは最後にお前とその甲羅を見て、安心してこの世を去った……。後は白虎に託してな」
ダッチは白虎の名前を聞くと疑問に感じた顔をした。これに応えるようにイタッチは続ける。
「お前が組んでた相手だが、白虎は爺さんとグルだ」
「……!?」
「四獣の遺産を預けられる相手かを見極める。残った一人として、最後の砦として立ち塞がったんだ」
ダッチは天井を見上げる。入る時に開けた穴、そこから太陽の光が遺跡の中に入り込む。
「全ては爺さんの手のひらの上。ノロノロ歩いてるようで、走るウサギを追い越していたみたいだな」
「じゃあ、親父は俺に遺産を渡す気で……」
「爺さんだけじゃないさ。お前は四獣に認められたんだ。後継者として……」
ダッチは起き上がると、イタッチに向かい合うように座る。
「すまないな。こんなことに巻き込んで」
「いいさ、爺さんには何度もやられたことだ……」
「だが、お前はどうする。親父の依頼で引き受けたんだろ。報酬はどうやって払う」
イタッチは静かにダッチに手を伸ばす。
「約束は守ってもらうさ。宝はくれてやるって言ってたんだからよ」
それを聞いたダッチは溜息を吐く。
「まさか、お前……最初から全て知ってたんじゃないだろうな……」
そして呆れた顔でイタッチの顔を見た。イタッチは頬を上げてニヤリと笑うと、
「ダッチ。俺の相棒にならないか?」
ダッチはイタッチの差し伸ばされた手を勢いよく握る。
「良いぜ。親父の払えなかった報酬。俺が払ってやる」