第169話 『四神ダッチ』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第169話
『四神ダッチ』
ダッチは高く飛び上がり、操られているスーツの集団の頭上を飛び越える。ロボスがスーツの集団を操り、飛んだダッチを捕まえさせようとするが、操られている彼らの動きは遅い。
ダッチは壁を蹴り軌道を変えて、上手く集団の手を躱していく。左右の壁を蹴り飛んで、集団を飛び越えたダッチは刀を抜く。
そしてロボスと彼らの間にあった細い糸を切った。
糸が切れると、スーツの集団はバタバタと倒れ始める。元々意識はなく、無理やり動かされていた連中だ。立っていることは不可能だ。
スーツの集団を解放したダッチに、ロボスは拍手で称賛する。
「出来る限り傷付けないように。やるねぇ、四神君」
「テメェはどこまでクズなんだ」
ダッチが睨みつけるが、そのダッチの言葉にロボスは首を傾げた。
「何を言っている。俺は負けないためにあらゆる手段を講じるだけだ」
首を傾げたロボスの顔は笑っていた。しかし、ここでやっとダッチは理解した。
この人物は表面上は笑顔を見せていても、心の底では笑顔を見せていない。
「テメェ、何が目的なんだ……」
その笑顔に思わずダッチは口を開いた。
喋ろうと思っていたこととは違う言葉が出たことで、ダッチは自分にびっくりして口をムにして閉じる。
ロボスは首を元に戻すと、
「楽しく生きること。それが俺の目的かな〜。んじゃ、四神君、俺からの質問だ。君はなんのために戦う?」
「はぁ? なんで俺が答えなくっちゃなんねぇ」
「俺は答えてあげたんだ。こういう場だからこそ、会話を楽しもうじゃないか」
こいつは何を考えているのか。敵への不信感が高まるが、それと同時に心の中で自問自答が始まる。
全ての始まりは四神の騒動。あれからイタッチと出会い…………。
そうしていくうちにダッチの心はロボスのペースに飲まれていく。深く暗い渦の中に飲み込まれていく感覚。
「答えるかよ……ッ」
ダッチはその心のモヤモヤを振り払うように、刀を振りかざしてロボスに斬りかかる。
「刀の振り方が雑になってるよ」
ロボスはダッチの刀を指先で受け止めて見せた。
「なっ!?」
「迷いある攻撃は俺には届かない」
「このやろぉが!!」
ダッチは何度も刀を振り下ろしてロボスへ攻撃を仕掛けるが、全て指で受け止められて止められる。どうやらロボスの人差し指の爪は普通の爪ではなく、何かが仕込まれている様子だ。
そんな爪で刀をとめてくる。
さらにロボスはダッチの攻撃の隙を見切り、ダッチの懐に入り込む。
「四神君、君もここで終わりだ」
ロボスの爪がダッチの喉元を狙う。