第168話 『飛び越えて』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第168話
『飛び越えて』
次々と動き出した倒れていたはずのスーツの集団。彼らはどうやらロボスに動かされている様子だった。
「リベンジしてやりなさい」
ロボスがそう言うと、彼らは固い動きで攻撃を仕掛けてくる。ダッチは囲まれながらも簡単に攻撃が避けられる。
「何だこいつら、どうなってんだ」
明らかに人の動きではない。まるで糸で吊るした人形を動かしているような……。
ダッチが攻撃を避けていると、天井の照明に反射して細く白い線が一瞬見えた。
「マジかよ」
ダッチの予想は当たっていた。彼らはロボスが糸を使って操っていた。
「そんな技ができるのかよ」
ということは、もう動けない負傷者を無理やり戦わせているということ。昔のダッチなら何とも思わなかったかもしれない。
しかし、
「……嫌な戦い方をしやがる」
それを理解したダッチは、操られている奴らを攻撃しないように、避けることにだけ徹底する。
だが、ダッチがそうすることをロボスは知っていたのだろう。糸を使い、仲間を操るとダッチを囲わせた。
「囲まれた……」
「さぁどうするかい?」
笑みを浮かべるロボス。そして囲まれたダッチ。その二人の様子を見て、リドルグの治療をしていたゴリラ警部は立ち上がる。
「無能、お前はそいつの治療をしてろ」
「ゴリラ……お前」
「アイツを助けに行く。このままじゃやられる」
ゴリラ警部は助けに向かおうとするが、ヒョウが腕を横に伸ばしていく手を阻んだ。
「なんで止めるんだ。パンテール……」
「悔しいが……行ってもやられるだけ。私達では足手纏いだ」
ヒョウは歯を食いしばって悔しそうに伝えた。
ヒョウもタイミングがあれば、加勢に向かうつもりだった。しかし、そのタイミングを掴むことができなかった。
ヒョウも実力が浅いわけではない。彼女自身もかなりの量の訓練と実践を積んでいる。だが、そんな彼女ですらこの戦いに参戦することはできなかった。
囲まれたダッチ。そんなダッチにロボスは笑みを浮かべる。
「どうする? 四神君。そこから逃げたければ、彼らを切るしかない。しかし、君にそんなことはできるかい?」
「……ッチ」
ダッチは刀を鞘にしまった。
ダッチはイタッチと出会ってから、多くの出会いと体験をした。それは彼にとって今までにない刺激であり、彼の心を成長させるきっかけにもなっていた。
最初は四神の件でなぜこのイタチと出会わせたのか。父親に疑問を感じることも多々あった。
だが、
「分かった。テメェがそういう手を取るなら俺はもう刀を抜かない」
ダッチはそう宣言すると、膝を大きく曲げる。そしてその曲げた足をバネにして大きく飛び上がった。