第166話 『危険なヒットマン』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第166話
『危険なヒットマン』
──ある一人の人間がいた。両親もおらず、頼れる人は誰もいなかった。
動物の特徴を持たない人間は能力が低い。身体能力も、聴力も嗅覚もあらゆる動物に劣っていた。
そんな彼だが、一つだけある才能を持っていた。
カボチャの被り物が外れて、素顔が顕になる。その素顔を見て、ヒョウは身体を震わせながら、地面に両膝をついた。
「まさか……こんなところにいるなんて…………」
さらにヒョウだけではない。フクロウ警部、そしてゴリラ警部もその人間の顔に驚く。
そして当然、その顔はダッチも知っていた。
「四神でも何度か名前は耳にしてた。警察はこんな奴に依頼してまで隠蔽したいのか」
──彼が才能を発揮したのは……
──暗殺──
ヒョウは震える身体を両手で抱きながら、その名前を口にした。
「鬼人……アンス・ロボス」
──彼は鬼のように強い、その実力からそう呼ばれていた。
ロボスは目を細めて笑顔のまま、頭を掻き始める。
「やっぱり知ってるよね〜。だからつまらないんだ。昔は名前が有名になっていくのを楽しんでたのに、今はそれができない」
正体が分かったことでさらにこの場にいる全員が、ロボスの警戒を強めた。その様子にロボスはハハハと笑いながら、困り顔になる。
「そう緊張しないでよ。緊張してたら実力が出せないよ?」
一人だけ余裕たっぷりの態度のロボス。その様子にダッチは舌打ちをした。
「びっくりはしたが、さて戦闘を再開しようか」
ダッチは刀を構え直す。それを見てロボスは笑顔で手を叩いた。
「いいねいいね。四神のダッチ。君は俺を楽しませてくれるよね」
手を叩き終えると、ロボスはダッチに背を向けた。
「じゃあ、行くよ〜」
ロボスがそう言うと、背中のスーツが破れて、中から大量の針が発射された。ハリネズミのように無数の針が飛び出して、ダッチへと飛んでいく。
一本一本は小さい針だが、数が多い。
「不意打ちばっかりしやがって!!」
ダッチは刀を振り回して、針を打ち落としていく。避けてもよかったが、避ける事はできなかった。
「結構仲間思いなんだね。それとも怪盗君の影響かな?」
「このやろぉ」
ダッチの後ろにはヒョウや負傷したリドルグ達がいた。避ければ彼らに当たる。
針を切っていくが、数が多すぎて全ては防ぎきれない。打ち落としそびれた半分以上の針がダッチの身体に突き刺さった。
「くっ……」
針の大きさが小さいためか、致命傷ではない。だが、確実にダメージは受けていた。
「さぁどんどん行こうか」
スーツを脱ぎ捨ててタンクトップ姿になったロボスがニヤリと笑った。