第164話 『カボチャ』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第164話
『カボチャ』
リドルグ達とカボチャが向き合う。カボチャの肩には負傷したカボチャの仲間が捕まっており、パッと見ではリドルグ達の方が有利に見える。
だが、そんな状態だというのにカボチャの立ち振る舞いは自信に満ちたものだ。こんな状態でありながら、絶対に負けることはないという確信のようなもの。
「ごほほほぉ、…………逃げないとは骨があるなぁ」
カボチャの不審な態度にリドルグの笑顔は徐々になくなり、真剣な表情へと変化していく。
「この状況だしねぇ、任務は失敗……本来なら逃げ出すべきだろうな」
本心かどうなのか。そんなことを口にしたカボチャ。この場で無傷なのはこのカボチャだけだ。
仲間を見捨てて逃げれば、このカボチャだけなら逃げられるかもしれない。
「おい、俺のことは良い、任務失敗なら逃げろ。依頼人もすでに……」
カボチャに肩を借りているスーツの仲間は、カボチャを心配してそんなことを口にした。助けてもらった恩からか、少しでもリドルグ達を足止めしようという気なのか。
だが、
「何言ってんだよ!! 仲間を置いて行けるかよ!!」
カボチャはトーンを上げて、わざとらしい声で仲間を伝える。それを聞いた仲間は「申し訳ねぇ、すまねぇ」と涙を浮かべるが、二人の様子を見ているリドルグ達から見れば、わざとらしい姿としか見えない。
リドルグは改めてカボチャの人物へと警戒を強める。
──なんだあのカボチャ……。言動も行動も全て薄い紙みたいな感じだ。気味が悪い。
カボチャへの警戒が強まるが、リドルグは一歩も退くことはなかった。この人物が何を企み、どんな手段を持っていようとも正面から打ち倒すことができる。
その経験と積み上げてきた肉体への自信が勇気を生む。
「とにかく……逃げる気はないんだなぁ」
リドルグが拳を握りしめて、今度こそカボチャを倒そうと構える。そんなリドルグの態度にカボチャはクククっと顔を上下させて笑って見せた。
「あぁあ、だが、絶対に勘違いするなよ、俺達だ。倒れた仲間も含めて、残った俺達に力をくれるからな」
カボチャの発言に肩を貸してもらっている負傷した仲間は涙を流す。
「なんてアツい奴なんだ。ああ、俺ももうフラフラだがやってやる……」
すぐにでも戦闘が始まりそうな状態。そんな中、リドルグの後ろで待機していたダッチが尋ねる。
「一人でやるのか?」
ダッチの問いにリドルグは一呼吸置き、
「自信はあるぜ。だが、聞いてきたってことはそういうことだろ、その時は任せる」
「ああ」
ダッチは刀に手を置いていつでも抜けるようにしておく。
リドルグは発言通り、自信はある。先程は奇襲だったがそうでなくても勝てていただろう実力差があった。
だが、その時はカボチャが逃げていたからだ。あのカボチャの実力が未知数である以上、どうなるかはわからない。
ダッチもそれを知って声をかけてきた。本来ならこの場にいる全員で戦いたいところだが、廊下で通路も狭いし、全員がやられてしまう可能性もある。
ならば、
──俺が正体を掴んで後に繋げる……。
リドルグは拳を大きく振り上げる。最初にカボチャを攻撃。負傷している敵は後でなんとかなる。
リドルグの拳がカボチャを狙う。
「なぁ、仲間だもんなぁ」
カボチャは肩を貸していた仲間を前に突き出し盾にした。
気づいたリドルグが拳を止めようとする。が、それに気づき、ただ盾にするのではなく、無理矢理前に突き出し勢いがなくなる前の拳に仲間をぶつけた。
リドルグの拳のぶつかった負傷兵は何が起きたのか理解することもできず、拳を顔面に喰らって白目をむいて気を失った。
「コイツ!?」
リドルグが味方ですら利用したカボチャを懲らしめようと反対の拳を振り上げようとする。
しかし、
「遅れたな。COLORSリドルグ」
カボチャが仲間を盾にしたことでリドルグの思考は一瞬硬直した。
その時のことだろう。そして実際にその時間を利用し、カボチャは気を失った仲間の背中に左手を当てて、
次の瞬間、カボチャの左手にあるスーツの中から、刃が突き出してくる。機械が何かを仕込んであるのだろう。火薬が爆発したような音と共に刃が、仲間の背中を突き破り、リドルグの腹にまで到達した。
「ぐっぅ!?」
カボチャは腕を大袈裟な動作で曲げて、二人の傷を抉るように刃を抜き出す。
気絶していたカボチャの仲間は崩れるように地へと倒れた。
負傷からか、口から赤い液体が流れる。体内へのダメージも大きいはずだ。だが、リドルグは倒れることも傷口を抑えることもせず、その場で立ち尽くしてカボチャのことを睨みつける。
そんなリドルグに笑顔で
「COLORS。お前達の実力は俺も一目置いていた。正面戦闘なら負けてたかもな〜」
と伝えるカボチャ。カボチャは赤く染まった状態の刃をリドルグへ向ける。
「勇敢だよ、君は。でも、ここまで」
再び、爆発音。同じように刃が動き出す。今度は服から飛び出すのではなく、弾丸のように発射された。
動けないリドルグは刃を避けることもできない。
「そこまでにしてもらおうか」
発射された刃が刀によって打ち返された。
刀で刃を切って地面に叩きつけたのは、ダッチ。リドルグが刺されて、次の攻撃がされるまでの短い時間で、二人の間に入り込み、リドルグを攻撃から守った。
「ここからは俺が相手をする」