第163話 『リドルグの拳』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第163話
『リドルグの拳』
カボチャとリドルグ達が対峙する数分前。エレベーターの中でダッチは隣に立つリドルグにあることを尋ねた。
「なんでアンタはイタッチに勝てた。確かにアンタらは強い。だが、イタッチが負けるほどとは思えない……」
目線は合わせることはせず、そのままの体制で質問したダッチに、リドルグは吹き出すようにして笑い出す。そして笑顔のまま、
「仲間のことを信頼してるんだな。かつてのお前が見たら驚くだろうな」
まるで昔のダッチのことを知っているかのように答えたリドルグ。ダッチは舌打ちをすると、不機嫌な顔で
「うるせぇ」
「そうだなぁ、もう一度やったら俺は負けるだろうな。俺の技は初見殺しみたいなものだ」
自慢げに語るリドルグにダッチは腕を組むと、
「自慢か?」
「そう聞こえたか? ……まぁ、自慢ではあるな、あのイタッチも倒せたんだ。そりゃ〜、自慢したくなる」
「ふ、んでトリックは教えてくれねぇのか?」
「一時的な共闘だ。本来は教えてやる必要もないんだがぁ」
リドルグは拳を握ると、エレベーターの中で身体の向きを変える。
そしてダッチの方へ正面を向けると、ダッチに握った拳を突き出す。
「なんのつもりだ?」
「よぉくみな、俺の拳を……」
ダッチがリドルグの握られた拳を凝視すると、何か紫色の湯気のようなものが出ていることに気がついた。
その湯気はリドルグから発せられているようにも感じられ、不気味で見ているだけで不安にかられる。
「なんだんだそれは……」
「精神をかき乱す気迫……」
「は?」
食い気味にダッチの疑問に答えたリドルグに、ダッチは思わず口を挟んでしまった。解答にもなっていないそのリドルグの言葉。しかし、リドルグはそのまま続ける。
「人の気迫ってものは強いものであればあるほど、その気迫だけで敵を威圧したり、戦意を失わせることができる。それが気迫だ」
「あ〜、まぁよく分からんがそうなのか」
ダッチは理解できずに聞き流そうとするが、リドルグはさらに話を盛り上げようと、声のトーンを上げる。
「その気迫を俺は精神をかき乱す特殊な希薄に作り上げた。俺の気合いから発せられるエネルギーは、敵の精神を蝕み、意識を混乱させる」
「…………ほぉ……」
「理解できないのも無理はない。これは俺の作り出した特殊な技術だ。無意識に出来るものはいるかもしれんが、意識的に行えるのはこの世で俺一人!!」
リドルグはニヤリと笑う。
「この気迫を受けたイタッチは、一瞬反応が遅れて俺の拳を回避できなかった。……まぁ、もう一度やれば、この気迫ごと避けられるだろうがなぁ」
リドルグは笑みの中で思い出す。イタッチに拳を喰らわせた時のことを……。確かに術中にハマり、動きは遅れていた。だが、イタッチには避けられない速さではなかったはずだ。
あの時イタッチは、わざと攻撃を喰らったような不思議な感覚……。