第159話 『同期』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第159話
『同期』
無線の先から聞き慣れた暑苦しい声が流れる。その声を聞いたサソリはピクリと肩を震わせた。
しかし、サソリは言葉を出すことはない。そんなサソリとは違い、その声にいち早く反応したのはちゃぶ台の前で座っているダッチとアンだった。
「フクロウ警部か」
「あの方がなぜ、COLORSと一緒に!?」
ダッチは冷静にフクロウ警部であることを見抜き、その隣ではアンは驚いてパソコンの画面から目を移して、無線のあるフローの方へ顔を向ける。
イタッチは無線から聞こえてきた声に対して、頬を上げて返答する。
「俺を逮捕する……か。元気そうなのは何よりだが、本当は俺よりも喋りたい相手がいるんじゃないのか?」
サソリはビクッと身体を震わせた後、腕を組んでイタッチに背を向ける。無言のサソリの行動を知っているのか、
『いない!! 警察を抜けてから一度も連絡をしなかった同期なんて知らん!!』
無線の奥から『そーだそーだ』と煽るゴリラ警部の声を聞こえてくる。
フクロウ警部もゴリラ警部、そしてサソリは同期である。同じ時代に警官になり、新人時代を過ごした仲間であった。
しかし、月光での事件がきっかけでサソリは姿を消し、フクロウ警部とゴリラ警部も関わりが減っていた。本人達は言葉を交わし、その胸の内にある想いをぶつけたいだろう。だが、それを押し殺すために、ああしてフクロウ警部は“逮捕する”と叫んだのだ。
イタッチはサソリ達が喋らないのを理解すると、
「フクロウ警部。よくまぁ無事だったな。アンの情報網から捕まったと聞いていたが……」
『上層部も必死なんだ。サソ…………イタッチ、お前達の動向から俺も探りを入れれてな。それで捕まったんだろうな、まぁ、コイツらに救われたが』
コイツらとはCOLORSのことだろう。彼らなら警戒されることなく、捕まったフクロウ警部達を救出に迎える。
本来は捕まえて、フクロウ警部を逮捕したことを報道して動揺を狙う作戦だろうが、報道準備が整う前にCOLORSが行動を起こした。この調子だと報道や他の部分にもCOLORSは根回しをしていて、フクロウ警部達の冤罪での逮捕は消えるだろう。
話を聞いていたヒョウはちゃぶ台に腕を乗せる。そして座ってて疲れてきたのか、身体をちゃぶ台に倒して横になる形で尋ねる。
「それでその警部さんが何の役に立つんだ? 書類を渡して訴えさせるのか?」
そのヒョウの疑問に無線の先からリドルグが返答する。
『いいや、それは無理だな。コイツらと上層部じゃ地位が違う。だからもっと上の力がいる』