第157話 『理想は何か?』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第157話
『理想は何か?』
ちゃぶ台に並べられた書類を見て、ダッチは思わず声が漏れる。
「信四神会……」
信四神会。それはウンランという四神の息子を名乗る人物が立ち上げた組織だ。ダッチの四神と対立する形で現れ、現在は二つの組織で勢力争いが起きている状況だ。
玄武と白虎の試験を合格したダッチが正式に後継へと選ばれたはずなのだが、それをウンランは認めておらず、信四神会は勢力を拡大させている。
「コイツらとも繋がってやがったのか……」
「四神のダッチ。この信四神会ってのを知ってるのか?」
パンテールはダッチの反応に気づき、睨むように尋ねる。
「知ってるも何も揉めてる最中だ。……警察と繋がってるとはな」
ダッチは腕を組んでウンランの顔を思い出す。四神の会議に出れば、よく名前の出てくる彼ら。そんな彼らの名前をここでも聞くことになるとは。
ダッチが難しそうな顔をする中、サソリはちゃぶ台に置いた書類をハサミで叩く。すると、書類は叩いた衝撃で浮かび上がる。
「んでだ。俺はこの書類を手に入れた。そしてこの書類をどうするかって話だが」
サソリは部屋の隅で縄で拘束されているフローに目線を向けた。サソリの目線の動きを追って、この場にいる全員が同じようにフローを見る。皆の目線が集まり、フローは首だけを動かしてそっぽを向いた。
「なんだ。俺は全て喋ったからな!! これ以上何も話せることはないぞ!!」
「ああ、お前達の依頼人が警察上層部でこの書類を消すついでに、俺やイタッチ達に襲撃を仕掛けてきた。それくらいだろうな」
COLORSを雇ったのは警察上層部の五人。彼らがサソリの手に入れた書類のことに気づき、COLORSにサソリの始末を依頼した。
その際にイタッチの討伐も依頼した。ここ最近イタッチの手に入れていたお宝は、サソリの手に入れていたお宝と同じで特殊な品だったからだ。
サソリは立ち上がると、フローの前に立つ。前に立つと目線だけを落として、見下ろす姿勢でフローのことを睨む。睨まれたフローはドキッと身体を震わせた。
「俺が泥棒として活動してきた理由。お前達なら気づいているはずだろ……」
「……確かに俺達COLORSは正義を愛する傭兵団。……き、気づいては……いたが……………」
サソリに続いてイタッチも立ち上がり、サソリの後ろからフローを見下ろす。
「お前達COLORSが守るのは、この口の秩序か? それとも自分の地位にしがみつく権力者か?」
「…………それは………………っ」
フローは歯を食いしばり答えずにいると、フローの胸元から聞き覚えのある男の声が響き渡った。
『ごほほほぉ、イタァァァッチ!!!! 面白いことを聞いてくるなぁ!!』
その声が部屋中に響くと、フローは焦った様子であたふたし始める。
「リドルグ様!? なぜ喋るのですか!! せっかく没収されずに盗聴するチャンスだったのに!!」
『フローよぉ、それは違うなぁ。コイツらは気づいてて、お前から没収しなかったんだよ』
流れてきたのはCOLORSのリーダーであるリドルグの声。リドルグは陽気に話を続ける。
『イタッチよぉ、俺達、COLORSの理想はそこにはねぇなァ。理想はよォ、この世界、みんなの笑顔を守ること。それこそが俺達の理想だからな』
それを聞き、ちゃぶ台に置かれたコップを手に取ってお茶を飲んでいたヒョウが、リドルグの話を聞いて頬を上げる。
「変わらないな、リドルグ……」
『パンテールのヒョウか。ということは黒豚もそこか……。前に会った時は言えなかったからな、…………一応言っとくぞ、久しぶりだな』
「ふっ、お前達がパンテールを抜けてからもう14年か。こんな形で再開することになるとはな」
通話越しに会話を続ける二人。このまま昔話をしたそうな流れだったが、リドルグは流れを変える。
『まぁ積もる話もあるが、それは今度にしよう。……最近、イタッチとサソリが盗んだお宝について話を聞こうか』
陽気な話し声からリドルグは少しトーンが下がり、声が落ち着く。ここからが本題ということだろう。
『ここ最近の怪盗による盗みは、偽物だと気づいての行動だと信じていいんだな』
リドルグの質問にイタッチとサソリは同時に答えた。
「「ああ、その通りだ」」