第155話 『サソリとパンテール』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第155話
『サソリとパンテール』
「なぜ、フクロウ警部とゴリラ警部?」
円状のテーブル。そのテーブルを囲うようにスーツ姿の動物達が座っている。カーテンは閉じられ、扉には厳重なロックがかけられている。
「COLORSはイタッチ達の対処に失敗したようだ。恐らくはサソリを救出に向かうでしょう。なのでこちらも手札を揃えた」
「あの二人を人質に?」
「はい。サソリの持つ書類は我々にとっては不都合になる。ならば、その書類を手放すしかない状況を作り上げよう…………」
サソリを救出して病棟から脱出したイタッチ達は、パンテールのアジトに集合してメンバー全員が集まっていた。
集合したのはイタッチ、ダッチ、アンのイタッチ組と、ヒョウ、黒豚を含めたパンテールの二十四名。そしてサソリだ。
三十人以外人間を同じ部屋に入れることはできず、アジトの見張を除き数名は別の部屋で待機している。
「それでサソリ。お前が手に入れたのはなんなんだ? この書類だけじゃないんだろ?」
ちゃぶ台を中央にイタッチは目の前にいるサソリに尋ねる。サソリは胡座の姿勢を崩して、身体の向きを変える。イタッチ達の顔を見ないように背を向けると、
「それが全部だ」
そう答えた。ちゃぶ台の上には五人の警官の名前が記載された書類が並べられている。ヒョウはこれが上層部の情報だと言っていた。しかし、
「このタヌキ共がこれだけの問題で済んでるとは思えない。もっと大きな問題を抱えているはずだ」
イタッチはちゃぶ台に手を置いて乗り上げるように問い詰める。一瞬サソリが何か言おうとして口から音を出したが、すぐに口を閉じてしまった。
「喋らない。いや、喋れないか……。パンテール、コイツらを巻き込むのがそんなに怖いか?」
ちゃぶ台から手を離し、イタッチは元の姿勢で座る。そして落ち着いた口調で淡々と口を開く。
「…………」
「そうだな〜。前にもお前は一人で背負い込んだことがあったな」
背を向けているサソリにイタッチは目を細める。
周りにいるダッチやヒョウはイタッチの行動について行くことができず、ただ見守っている状態だ。
「爆弾を抱えビルから飛び降りた。お前は勇敢なヒーローだ。だがな、お前が一人で頑張ろうとしているのを、コイツらは支えようとしてくれてるんだ。せめて、頼ってやれよ、一人じゃ寂しいだろ」
「…………」
イタッチの言葉に、ヒョウと黒豚が立ち上がる。
「サソリ、私達はあんたに救われた。気まぐれだったのは分かってる、でも、せめて礼だけはさせてくれ、あんたの力になりたいんだ!!」
喋れない黒豚も全力で首を縦に振る。
「………………」
さらに扉の前で話を聞いていたパンテールの下っ端も、扉を開けて
「そうだ、手伝わせてくれ!!」
「俺達もやってやりたいんだ!! あんたと一緒に!!」
次々とサソリに呼びかける。イタッチが話している最中から、身体を震わせて貧乏ゆすりをしていたサソリは、腕についたハサミで顔のあたりを擦る。
背を向けているため何をしているかはわからない。しかし、擦り終えるとまだ背を向けた状態だが、掠れた声で叫んだ。
「面倒な奴らだぁ、……分かったよ、巻き込んでやらぁ、恨むんじゃねーぞ!!」