第151話 『サソリ』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第151話
『サソリ』
病院に侵入したイタッチ達は、サソリのいる病室を目指して走っていた。
「アンの調べではこの先に警備がいる。警戒しろ」
イタッチは先頭を進みながら、後ろをついてくるダッチとヒョウに伝える。
深夜に来たとはいえ、警備体制は厳重だ。そう簡単には目的地には辿り着けない。
廊下の先で警備員が見張っている。イタッチ達は警備員に気づくと、足を止めて壁に背を向けて隠れた。
「どうする? あの警備員を倒して進むか?」
ヒョウは懐から小型のナイフを取り出してそんなことを言い出す。
「やるならやれるぜ」
ダッチもヒョウと同じでやる気満々だ。しかし、そんな二人をイタッチは止める。
「無理に戦う必要はない。ここは遠回りだが別のルートで行くぞ」
猪のような思考の二人を沈めて、別のルートをアンに確認させる。無線の先でパソコンを操作していたアンは、新たなルートを発見した。
「一つ前の角で右に曲がってください。そこから新しいルートで案内します」
「頼んだぜ。アン」
「はい!!」
無線の先からアンの嬉しそうな声が聞こえてくる。頼りにされているのが嬉しいようで、その先のナビも自信に溢れている。
アンのナビを使い、戦闘を避けながら進むことができ、警備員に見つからずに目的の病室前までたどり着いた。
「ここまで辿り着いた。この部屋の中にサソリがいるはずだな」
イタッチが扉を開ける。すると、病室のベッドで身体を起こしているサソリが、こちらを睨んできた。
「起きていたのか」
イタッチがサソリに話しかけると、サソリはニヤリと笑う。
「そろそろ来る頃だと分かってたからな。お前達は泥棒だ。感謝はしないぞ」
「もうお前も警察を辞めて、俺達と同じ同業者だろ」
サソリは答えずに身体をズラして、ベッドから足を出す。そして脱出のために立ち上がった。
「泥棒と協力はしたくない……が、今回はそれで手を打ってやる」
「ボロボロのやつがよく言うよ」
サソリはまだ傷が癒えていないのか。立ち上がったはいいが、今にも倒れそうなほどフラフラだ。
サソリを心配してヒョウは素早く駆け寄ると、肩を貸した。
「サソリ……ここは私が…………」
そう言ってヒョウがサソリを支えようとしたが、サソリはヒョウを突き放す。
「お前達も……だ、パンテール。協力はするまが、契約だ。……それ以上、俺に構うな」
そう言って無理にでも一人で歩き出す。ヒョウは寂しそうにサソリを見つめるが、サソリはヒョウのことを振り返ることなく廊下へと進む。
「脱出するのだろ。早くしろ、奴らが来るぞ」