第147話 『再会』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第147話
『再会』
「何してる……COLORS」
土手の上からCOLORSを見下ろす動物の影。それは二足歩行で立つヒョウの姿。小柄だがスタイルはよく、立つ姿は美しい。
「パンテールの……ヒョウ」
土手にいるヒョウを見て、拳を止めたリドルグは口にした。
「ほぉ、私のことを知っているか。いや、当然か。COLORS、お前達ほどの情報能力があればな」
ヒョウが現れたことで、リドルグは拳を戻し、イタッチにトドメを刺すのをやめる。その様子にヒョウは尻尾を左右に振る。
「私に遠慮しなくて良いよ。私もソイツに借りはあるが、アンタらほど信念を持って、戦おうとしてるわけじゃない」
ヒョウはそう言うが、リドルグはイタッチ達から一歩下がる。
「いや、やめておく……」
リドルグが下がり、ヒョウに伝えると後ろにいたンコイとルーパが焦り出す。
「リドルグ、なんのつもりだ!!」
「奴もパンテールであーる。なんなら今同時に捕まえた方が……」
リドルグは振り返り二人の顔を見る。すると、悔しそうに葉を食いしばりながら、
「今は戦うべきではない……」
そう言って二人の方を叩くと、リドルグはンコイとルーパを連れて、どこかへと姿を消した。
薄暗い空間。シャワーの音が聞こえてくる。
「…………くっ、ここは……」
目を覚ましたダッチは、周囲を見渡す。そこは見慣れない古びたアパート。そこでイタッチと共に寝かされていた。
身体中には包帯が巻かれており、治療が施されている。痛みはあるが動けないほどではない。
「俺達を誰かが治療したのか…………ガキ……か?」
あの場にいなかった人物で、助けてくれる人といえば、アンが思い浮かぶ。しかし、アンに助けてもらったとしたらおかしい。
アンがどうやって二人を運んだのか。さらにここはダッチの住むアパートやイタッチの経営する喫茶店ではない。アンならば、このどちらかで治療をするはず……。
ダッチは痛む身体を動かし、壁を伝いながらシャワーの音の方へと向かう。
……敵? という可能性もあるか。しかし、一体誰がここへ移動させて、治療をしたのか。
ダッチは警戒しながら進み、浴室の扉の前までたどり着いた。
「武器はない……敵なら…………」
ダッチは拳を握りめて、接近戦を覚悟する。近づいて固めて殴り倒す。
シャワーの音が止まったのを合図に、ダッチは扉を勢いよく開けた。
「貴様、何者だ!!」
ダッチが叫びながら中に入る。すると、
「………………」
そこにいたのは男。裸で筋肉の鎧で包まれた黒豚がタオルで身体を拭いていた。
「お前は黒豚!?」
黒豚は恥ずかしそうにタオルで上半身を隠す。
「下を隠せ、下を!! って、なぜ貴様がここに!?」
ダッチは黒豚を警戒して戦闘体制になる。
この黒豚は前に会ったことがある。列車のお宝を手に入れようとした時に襲撃してきたパンテールの副リーダーだ。
「………………」
ダッチの質問に答えることはない。しかし、ダッチの言う事を聞いて、下半身をタオルで隠す。
「答える気はないか……なら、無理矢理でも話させてやる!!」
ダッチは拳を握りしめて黒豚に殴りかかる。しかし、黒豚の筋肉は弾丸すら弾き返す。
拳を簡単に受け止められて、そのままリビングまで投げ飛ばされた。
「ぐっ!? この野郎……」
ダッチは立ち上がって反撃しようとするが、黒豚はダッチが立ち上がる前にダッチの上に跨る。
「てめー!! 裸で乗ってくるんじゃねー!!」
ダッチは必死に抵抗する。乗り掛かる黒豚の顔を殴ったり、引っ掻いたりするが、全く効果はない。
「なんのつもりなんだぁ!!」
「………………」
必死の抵抗をする中、玄関の扉が開く。薄暗い部屋に光が灯る。
「帰ったぞ」
「ダッチさん、イタッチさん、そろそろ起きまし…………」
玄関が開いて現れたのは、見覚えのあるヒョウの女性と、アンの姿。
「だ、ダッチさん……」
ダッチと黒豚の状態を見たアンはその場で固まり、買い物してきたのか買い物袋を落とす。
ヒョウは顔を赤くしながらも、顎に手を当てて興味深そうに見つめてくる。
「お、おい、ガキ!? こ、これは……」
言い訳しようとダッチが声を出そうとした時。部屋の奥から寝ていたイタッチが起き上がる。
そして片目を閉じてうとうとした表情で皆の方を見た。
「……ダッチお前、そういうのがタイプだったか」
「違ぁぁぁぁっう!?」