第121話 『時空の裂け目』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第121話
『時空の裂け目』
何もない真っ黒な空間。そこにイタッチは全裸で立ち尽くしていた。いつからここにいたのか、分からない。だが、さっき来たような、ずっと居たような不思議な感覚。
「よぉ、イタチちゃん久しぶり〜」
背後から声が聞こえ、イタッチが振り返るとそこには鈴をつけたキツネいた。
「あんたは…………」
「久しぶりに会った親友に対して、その反応はどうかなぁ〜。オレは寂しかったんだぜ」
「……久しぶり。元気にしてたか」
イタッチが言い直すと、キツネは嬉しそうに近づいてくる。そして鼻を近づけると、イタッチの匂いを嗅ぎ始める。
「ああ、元気にしてたとも。いつになったらオレの授けた目標を達成するのか、ずっと待ってな」
「それはすまないな。待たせて」
申し訳なさそうにしてるイタッチに、キツネは両肩を掴むと左右に揺らす。
「良いんだよ。オレがやらせた役目だ」
揺らし終えると、キツネはイタッチから手を離し、少し距離を取る。そんなキツネにイタッチは質問をした。
「しかし、ここはどこなんだ? 俺は確かレオーネに……」
「ここはオレの世界みたいなものだ。お前はレオーネの爆発でやられたからな。オレが魂をここに呼び寄せた」
「ってことは俺は……」
「爆発でバラバラさ。だが、彼らは未来の人間だ。時期に自由の歪みが修正されて、世界は元の形に戻るだろう」
キツネは暗い世界の地べたに座り込む。イタッチはそんなキツネに近づき、正面に立つと、
「なら、なんで俺を呼んだ? どうせ戻されるんだったら呼ぶ必要はないだろ?」
「オレは寂しいって言ったろぉ〜。せっかく神器を渡したんだから、こんなことでやられるなよぉ〜」
「…………」
「まぁ、呼んだ理由としてはまだあるけどな。あの未来人、かなり危険なことをやるつもりだ。これ以上好き勝手にさせると、世界に影響が出る。だから、オレはその忠告をしたい」
「危険なことだと……」
「絶対に阻止するんだ。奴らはこの時代を変え、未来を積ませるつもりだ」
キツネがそこまで言い終わると、イタッチは何かに引っ張られるような強い衝撃を感じた。
意識が持っていかれそうな力。肉体的なものではない精神を直接引っ張られている。
「時間のようだな。身体に魂が戻ったら、仲間と協力して未来人達を倒せ、そして必ず、あの娘を元の時代に返すんだ」
意識が遠のく。キツネの顔が歪んで見えていき、イタッチは力が入らずに倒れた。
「っは!!」
イタッチは目覚めると、そこはレオーネ達と戦っていた交差点だった。
戦闘で破壊されていたはずの建物も全てが元に戻り、何事もなかったかのようになっている。
「戻ったってことか」