第103話 『美術館へ』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第103話
『美術館へ』
日が暮れて、美術館の前に多くのパトカーが停車する。
「警部、準備は万全です。後はイタッチの登場を待つだけです」
「よし、トンボ巡査。美術館内部の警備は任せたぞ」
「はい!」
美術館の扉を開けて、トンボ巡査は一人で中に入っていく。その様子を見ていたネコ刑事はフクロウ警部に尋ねた。
「なぜ、トンボ巡査だけ中に? イタッチが来た時、一人じゃ厳しいんじゃ……」
「それはトンボ巡査の実力を知らないからそう思うだけだ。逆に我々が彼の近くにいたら邪魔になってしまう。だから、他のものは外で警備をする」
「トンボ巡査の実力……?」
美術館から数軒離れた建物の屋上で、パトカーの動向をイタッチとダッチは見守っていた。
「なんだ、フクロウ警部のやつ、中に入らないのか?」
「さっき警官の一人だけを配備してたな……」
イタッチは警官の状況を把握すると、無線をアンにつなげる。
「アン。さっき中に入った警官が誰だかわかるか?」
「はい、調べてあります」
事前に調べていたアンは、検索しておいた情報を読み上げる。
「トンボ巡査ですね。フクロウ警部の後輩に当たるようです、…………この経歴は!?」
「なんだ?」
「彼、マグロ巡査に剣道で勝った記録があります。それにフクロウ警部にも……」
「ほぉ、あの二人をか。だが、それだけじゃないだろ……?」
「イタッチさん、もしかして知ってるんじゃ?」
「…………」
「はい。彼はこの島に最近異動になったんですけど、それは彼が問題を起こしたからです。本部で活動していた時、暴力団にたった一人で攻め込んで制圧した。その事件で生き残った犯人は彼のことをこう言っていたようです、嵐が来たと」
「トンボ巡査か。これはなかなか面白そうなやつが、待ち受けてるみたいだな」
イタッチは無線を終えると、折り紙を折ってグライダーを作る。その様子を見ていたダッチは質問をした。
「おい、今回はそれで潜入するのか?」
「いいや、コイツは囮だ。本体は別に用意する」
もうすぐ予告の時刻。フクロウ警部が空をふと見上げると、上空を何かが飛んでいることに気づいた。
「あれは……イタッチ!!」
「イタッチですか!? 現れたんですか!!」
「空だ!! あれを撃ち落とせ!!」
警官達はあらゆる手段を使って、空を飛んでいるグライダーを撃ち通そうとする。
「クソ、あの高さ。拳銃じゃ届かない!!」
「ネコ刑事。君はここに残ってくれ」
「フクロウ警部はどこに?」
「空を飛ぶあれを捕まえてくる!!」
フクロウ警部はそう言うと、近くにあったビルに向かって走り出した。