第100話 『怪盗イタッチ』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第100話
『怪盗イタッチ』
「あれがイタッチさんの故郷……ハウラですか」
ボートに揺られ甲板に立った子猫が、遠くに見える島を見つめる。
「しけたところだな。ど田舎だ」
ボートを操縦するダッチは、片手で操縦しながら缶コーヒーを口にした。
そんなダッチの言葉に反応するように、甲板で風を浴びるイタッチは懐かしむように故郷を眺めた。
「ああ、人口も少なく、土地も狭い。だが、思い出の場所だ」
ボートを島の裏側にある岩場に隠し、イタッチ達は上陸する。
「これからどうするんだ?」
「予告状はもう出してある。実行日は明日だしな、今日は観光でもして休もうぜ」
三人は宿に荷物を置き、必要最低限のものを持って町に出た。
「ガキ、パソコンなんて持ってくる必要あったのか?」
リュックを背負い、その中にノートパソコンをしまっているアンを見て、ダッチは尋ねる。
「何かあった時、不便じゃないですか。そういうダッチさんも刀は置いてきたらいいんじゃないんですか?」
「刀は俺の魂だ」
「お菓子作りしてる時はその辺にほったらかしてるのに?」
「なんでそのことを知ってんだ!?」
ダッチも布で刀を包み、持ち歩いている。
二人とも必要最低限なものを持って出ようと言ったのだが、それなりの荷物になっている。
「それでイタッチさん、観光ってどこに行くんですか?」
「イタッチ。ここはお前の故郷なんだろ、案内しろよ」
せがむ二人にイタッチは先頭を歩いて、二人をある場所へ案内した。
「森……いや、山ですか?」
そこは木の生い茂る小さな山。島に来る時には一番目立っていた山だが、観光地というには人通りが少なく、手入れがされていない。
「ここは魔女が棲む森だ。島の人間は基本、怖がって近づかない」
「魔女……ですか。ちょっと怖いですね」
怯えるアンの頭にダッチが手を置いて安心させるように撫でる。
「ビビるんじゃねーよ。俺たちは怪盗だぜ」
イタッチは目視で山の頂上に目をやる。そして何かを確認すると、
「いや、今日はいないみたいだな」
「いない?」
「魔女……正確には魔女の教え子か。あいつがいるときは山の頂上にある小屋の煙突から煙が出るんだ。今日はどっかに出かけてるんだな」
「なんだ、居ないのかよ」
「ま、今日はそいつに用があるわけじゃないしな。こっちだ、ついてきな」
イタッチは先頭を歩き、山を登っていく。その後ろをアン、ダッチの順番でついていく。しばらく山を登り続け、半分登り終えたところでイタッチは足を止めた。
「ここだ」