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第17話、ヤンデレ魔王にベッドで手錠で拘束されて愛されました

「本当に付いて行かなくて大丈夫?」


「大丈夫よ。だってもう、襲ってくる

 強盗団、いないじゃない」


「でも気をつけてね、マスター」


「分かってる、分かってる。じゃ、

 行ってくるね」


 ファイに手を振って、ルームを出る。


 さぁ、皇帝陛下とディナーだ!


 あぁ、素敵な王子様に愛されるんだと

 夢見てたけど、まさか本当に

 皇帝と食事する事になろうとは。


 まさか2人って事はないだろうけど、

 チャンスで有ることは間違いない。


 昼間のドレスそのままの格好だけど、

 メイクは夜用し直したし。


 さぁ! 夢の玉の輿を!

 めくるめく幸せを! この手に!


 そんな事を考えながら、

 道の端、へいの横を歩いていたら。


 ドン! と目の前を腕が横切って、

 大きな音がした。


 へ?


 誰かが、へいに手を付いて、

 私の歩みを止めた。


 恐る恐る見上げる。

 サラと紫の髪が、私の頬を撫でた。


「そんな浮かれて、楽しそうに

 どこ行くんだ? ユリア」


「ま、魔王様!」


「ずいぶんとおしゃれしてるな。

 俺が見たことないメイクだ」


 魔王──クレアが手を伸ばして、

 私の顎の辺りを撫でる。


 ドクンと心臓がなるけど、

 今そんな場合じゃなかった。


「ま、魔王様。

 あ、会えたのは、嬉しいんですが、

 今日は予定が、ありまして」


「予定?」


「そう、予定が。だから……」


「男か?」


「ひゃっ?」


「他の男の所に、行こうとしてんのか?

 そんなオシャレして、嬉しそうに?」


「いや、あの……」


「それを、俺が許すと思ったか?」


 な、な、それはどういう……


「こういうのは、したくなかったんだ。

 本当だ。でも仕方ない、お前が悪い」


 クレアの手が、私の額を掴む。

 ジワと何か、嫌な気がする。


「──強制睡眠ブランチロック


 これは! 昏睡魔法?

 

 頭が強制的に真っ白になっていく。

 体から力が抜けて、

 倒れる私をクレアが抱きかかえる。


 あぁ、今わかった。この性格は多分


 ヤンデレだ。


 薄れる意識の中そんな事を考えていた。



  □□□□



 ん……


 ボーとする頭で目を覚ました。

 ここどこだっけ、なんで寝てたんだけ。

 どこかに寝ている。ベッドに


「起きたか? ユリア」


「ぎゃ! 魔王様!」


 目の前のその顔に驚いて、

 体を動かそうとした時、

 ガシャンと、頭の上で音がした。


 へ?


 見ると、両手に手錠がはまっていて

 それが、ベッドの柵に繋がれていた。


「こ、これは何ですか?」


「見た通りだ。お前をベッドに寝かせて

 両手に手錠をつけ、頭の上で固定した」


「な! なんでこんな!」


「そうしないと、お前が他の男の所に

 行くからだ」


 え? アリアン皇帝陛下に

 ディナーに誘われたから?


「あの、魔王様」


「クレア、と呼べ。と言ったよな」


「ク、クレア様! あの、やめて下さい」


「何を?」


「これ、外して下さい」


「外したら行くんだろ?」


「行きませんから、もう行きませんから」


「あんなに行く気だったのに?」


 クレアはベッドに腰掛けて、

 ニヤニヤしながら、私の首筋を撫でる。


「いっ……」


「お前が他の男の為にしたオシャレ、

 俺が全部、もらうからな」


 指先が首の中心に触れる。

 その指がツーっと、下に下がっていく。

 胸の間をなぞって、お腹まで真っ直ぐ。

 ゾクんと鳥肌が立つ。


 快感でも不快でもない

 刺激にまみれていく。


「最近、この辺に肉が付いてきたな」


「な! お腹ぷにぷにするのやめて!」


「俺がお前にどう触ろうと、俺の勝手だ」


「そんな所に肉はついてません!」


「……ほう?」


「無言でぷにぷにし続けないで!」


「二の腕、つまんでみようか?」


「やめて! それは絶対やめて!」


「……やめて?」


「や、やめて下さい……」


「もっと」


「お、おやめ下さい」


「もっと」


「おやめ下さい、クレア様!」


「もっとだ」


「おやめ下さい、クレア様、

 キスして下さい」


 ピクと、クレアの手が止まった。


「……キスして、下さい」


 ゆっくりと、私の顔に近づいて、

 その手で頭を撫でる。


「いい子だ」


 それがあんまり優しげな笑顔で、

 されてる事を忘れそうになる。


「そんなに言うなら、してやろう」


 いちいちずるい、本当……


 顔を優しく撫でられてから、

 ゆっくりキスされていくのを、

 何も出来ずに受け入れる。


 私も手を伸ばしたいのに、

 私も触れたいのに、その一切を

 今日は許してくれない。


「お前は今日も可愛いな」

 そう、吐息に濡れる私の口を撫でる。

 

「もっと……」

 撫でられる唇から、漏れ出た。


「なに?」


「もっと下さい」


「まだ足りない?」


「足りないですよ。全然です」


 もっと……もっと欲しいんだ。

 愛されたいんだ、あなたに。

 足りない、全然足りない。


「もっと……欲しいんです」


 ベッドで拘束されてなお、

 懇願する私を見下ろし、


 魔王はふうんと考えるように呟く、


 無言で、ギシとベッドに乗り上がり、

 私の上に、のし上がる。


 無表情で、私を見下ろしてから、

 首のあたりに、顔をうずめた。


「お前、最初のアレ、本当か?」


「最初? なに?」


「今日、最初に会った時、お前が言った」


「え? なんか言いましたっけ?」


「『俺に会えて嬉しい』って」


 あぁ、言ったっけ

『お会い出来たのは嬉しいんですが』

 って


「本当か?」


「へ? 何言ってるんです?

 当然じゃないですか」


 そりゃ、会えたら嬉しいに決まってて……


「魔王に会って嬉しいとか言う奴は

 お前くらいだ」


 へ? なんか嬉しそう?


 クレアが顔を上げる。

 ふんわりと笑って、私を見下ろす。


「俺も、お前と会えて嬉しい」


 お、お、お、お、お……

 いきなりそれは反則です!


 ぶわっと赤くなった私を見て、

 満足そうに頬に口付けて。


「時間だ」

 と、呟いた。


「へ? い、嫌です」


「言ったろ、こっちに長くは居られない」


「まだ、まだ足りません」


「だから言ったろ、お前がこっちに来い

 待っててやる。来たら好きなだけやる」


「……絶対ですよ」


「あぁ、待ってるからな」


 そう言って、私の頭に手を乗せる。

 また。昏睡魔法がかかる。

 ぼんやりしていく頭の中、

 耳元で聞こえる

「お前は、俺のだからな」


 意識が消えた。



  □□□□



「マスター……起きて。マスター!」


「へ?」

 ファイに起こされた。


「え? ファイ? なんで?」


「なんでって、朝になっても

 なかなか起きないから、

 迎えに来いって。宿屋の主人が……」


 え? 朝? あぁ、そうか。もう……

 手首をさする。そこにもう手錠はない。


「皇帝陛下とディナーに行ったのに

 なんでこんな所で寝てるの?」


「あ、結局すっぽかしちゃった!」


「え? 皇帝との約束すっぽかしたの?」


 玉の輿が……王子様との幸せが……


「あーあ。もう星もらえないかもね」


「え! 早く5つ集めたいのに!」

 集めなきゃ、魔王様の所に行けない。


「マスターそんなに、星、

 欲しがってたっけ? なにかあった?」


「なんでも無い。

 星はあるにこした事はないでしょ」


「まぁ、じゃあ、次の街に行こうよ

 星の数は継続するし、いくつかの街で

 5つまで集めればいいじゃん」


「あぁ、それ良い!」

 違う街、行きたい。

「ファイ、ついて来てくれる?」


「なに言ってるのさ。

 僕はマスターとずっと一緒にいるよ」


 私は嬉しくて、ファイに抱きついた。


「ありがとー、ファイ大好き!」


「もー、いつか本当に

 好きにさせてみせるからね」


「え?」


「じゃあ、行くよ。準備しなきゃ」


「うん。楽しみ! 新しい街!

 新しい冒険!」


 不安はある。

 魔王様の所にたどり着いたとして、

 はたして愛されるのか。

 それが、求めるものか。


 でも、行ってみないとわからないし、

 私はそれが欲しい。

 欲しくて欲しくてたまらない。


 だから、全力で進もう。

 待っていてくれる限り、全力で。


「幸せは、自分の手で掴む!」


「マスター、どうしたの?

 なに叫んでるの?」


「ううん、なんでもない。早く行こ」


 私は笑って、

 先を歩くファイの元に駆け寄った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『婚活に敗れ勇者になったら5人格の魔王に溺愛されました』  《完結》



 最後までお読み下さり

 ありがとうございます。


 ご感想いただけると、嬉しいです。


 次回作も、お楽しみに!

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