第12話、ヤンデレ化したショタに拘束されて好き勝手される
「エインジェル?」
「そうだよ、マスター。それが」
「聖龍石を狙ってきた、強盗団の名前……」
私の呟きに、ファイが頷く。
「調べたけど、人数は十数人で、
そんなに多くない。
でも、どこからか資金が流れてて、
そのバックの組織に従う」
「じゃ、聖龍石欲しがってるのは」
「その裏の組織って事」
こわっ! そんな所に狙われてたの。
「分かったのは悪い事ばかりじゃないよ」
と、ファイは得意げに続ける。
「エインジェルは他にもいろいろ、
目立つ悪さしてきたから。
討伐したり捕まえたりすると、
神殿から星が出るんだ」
「え? 星?」
忘れてた。星。
神殿からギルドに送られる、称号。
五つ集めないと、
魔王討伐許可がおりない。
「星、欲しいよね、マスター」
「欲しい。すごく」
「それで、裏についてるのが
どこか、だけど……」
何の目的で聖龍石なんか欲しがるのか。
普通に考えれば、魔王の配下だし、
魔法石の力で世界征服を狙う団体とか、
ありうる。
「そこに関しては、詳しく知る人に
一緒に話を聞きに行こうよマスター」
ファイが悪そうな顔してる。
なるほど、一筋縄では、
教えてくれない相手って事ね。
「わかった。一緒に行く」
「でも、マスターは、僕から離れないで」
「わかったわかった」
「外も危険だから、地下道通るからね」
「はいはい」
□□□□
「地下道って、やっぱ狭い……」
「文句言わないでよ。
マスターの剣、僕が持つから」
「ありがとー、引っかかって困ってた」
「もうすぐだから」
「助かる。ほんと、頼りになる」
「もうすぐ……」
狭かった視界が少し開ける。
地下道には変わりないけど、広くて、
明るさに、目を細める。
ふう、と息をついた時だった。
後ろから羽交い絞めにされた。
「な!」
腕が掴まれて、足が浮く。
周りに、人の気配が現れる。
待ち伏せされてた? 死角に?
真っ黒の恰好。これは、
エインジェル!
ファイは? 大丈夫?
ファイは、立っていた。
無表情で、こっちを見て。
──え?
襲ってくる人たちの中で、
襲われずに、驚きもせず、助けもせず。
「まさか……ファ」
呼びかけた口をふさがれる。
膝を地面につかされて、
グッと頭を下げられた。
数人に拘束されたまま、
頭だけを上げる。
そこに立つ、ファイと目があう。
強盗団の中で、見覚えのある人物が、
ファイの隣に立った。
前に襲われた時、
聖龍石を渡せと、そう言った、
多分、中心人物。
その人が、親しげに、
ファイの肩に手を置いた。
あぁ、そうか……
と、それを見て理解する。
裏切ったのね、ファイ──
ファイに手を置いたその人が、
私を見下ろして、指示を下す。
「──やれ」
首の後ろに、大きな衝撃が走って、
視界がグルンと回った。
そのまま私は、意識が飛んだ。
□□□□
……ピチョン。
と、水滴が落ちる音がする。
……ピチョン。
あぁ、なぜだっけ、どこだっけ。
首の後ろが痛い。体が動かない。
ボーっとする頭で、目を開けた。
「起きた? マスター」
聞きなれた声で、顔を上げる。
無表情で見下ろす、ファイが見えた。
「ファイ」
薄暗くて、狭い部屋だった。
まだ地下道なんだろうか。
ジメジメしていて、空気が重い。
私は座ったまま、後ろで両手を縛られ、
それがどこかと繋がれてるのか、
動けなかった。
そんな私を、ファイは見下ろす。
「気分はどう? マスター」
「首が、ズキズキ痛い」
「それは悪かった。これでも止めたんだ。
マスターには、なるだけ、
怪我させないで、ってさ」
そりゃ、どうも。
ははっ、と乾いた笑いを返す。
ファイが近づいて来て、
私の顔を覗き込む。
嗅ぎなれた、ファイの匂いがする。
「聖龍石を出して、マスター」
「なに?」
「聖龍石。荷物には無かったから、
マスターが持ってるでしょ。出して」
「そんなに、欲しかったの? 聖龍石」
裏切って、私を売るほどに?
「欲しかったよ。でも、もう良いんだ。
それは、彼らに渡す」
え?
目の前のファイの顔を見つめる。
その意図を読み取りたくて。
「取引したんだ。聖龍石を渡す代わりに
あなたは、僕はもらう」
へ? ん? なに?
「聖龍石が欲しかったんじゃないの?」
「欲しかったよ。すっごく。
でも、もう良いんだ。
もっと欲しいものが、出来たから」
ふっとファイが笑って、
私の顔に触れる。
「あなたを。
もうこれ以上、魔王には渡さない。
なにも奪わせない。
あなたは!」
ファイが私の顔を持ち上げる。
「あなたは、僕がもらう。
あなたは、僕のモノだ」
そう言い放つファイの顔を見て、
あぁ、まったく、揃いも揃って
人を物扱いするんだから、と
息を吐く。
「そっか、欲しかったの」
「そうだよ。僕も、魔王みたいに、
あなたの全てが欲しいんだ。
心も、身体も、全部、好きに、
僕の好きにしたいんだ」
「そのために、いっぱい考えたんだね」
手に入れるにはどうしたらいいか、
考え、悩んだ結果が。
強盗団の手を借り、売り渡す。
それは、
「頑張ったね。えらいえらい」
笑って口にすると、
ファイの顔から、笑みが消えた。
「バカにしてる? まだ子供扱いする?」
「違うよ、すごいな、って関心してる」
欲しいと思う事は、生きる為に大切だ。
その為に、今の自分に何が出来るか、
考え、実行した事は、素晴らしい。
純粋にそう思ったんだけど、
どうやら怒ったようで。
「すぐに、子供には、
見えないようにしてあげる」
クッと顔を持ち上げられ、
その私の口に、
ファイの口が押し付けられる。
「ん……」
軽く抵抗してみるけど、
ファイはそれを許さない。
私の後頭部を押さえて、
逃げる事も反らす事も許さず、
私の唇を好きなだけ貪って、
ようやく満足して離された時には、
ファイは、ずいぶん男の顔をしていた。
私は濡れた息を吸い込みながら、
湧き上がる感情に
名前を付けられないでいた。
「どう? ちょっとは、僕のこと
そういう風に見えてきた?」
「そうね……うん」
「でも、まだだから。まだ、たりない。
もっと僕を感じてよ」
頬を撫でた両手が、下に降りていく。
首筋を通ってシャツの襟に手がかかる。
「へ? え?」
初めて、私の口から動揺が漏れた。
「僕が、何もしないと思ってた?
大間違いだから」
ファイは、私のシャツの襟を、
勢いよく引っ張った。
「うっ……」
二つボタンが飛んで、胸元が覗いた。
鎖骨と、胸の谷間が、そこから見えた。
なっ……
無理矢理、服を開かれた事で、
否応なく心臓が跳ね上がる。
羞恥と反射で、荒くなる呼吸を
ファイにバレたくなくて、顔を反らす。
そんな私の見て、
ファイは満足そうに。
「顔、赤いよ。マスター……」
と、首筋に口つけながら言ってくる。
もう……本当、どこで覚えたんですか。
「ねぇ、マスター。
僕を好きって言ってよ」
「なに?」
「ほら、言ってみて。言ってくれたら、
『優しく』してあげるよ」
と、私の鎖骨の辺りを撫でる。
「マスターが痛い思いをするか、
気持ちよくなるか、全部、僕次第だよ。
ご機嫌とってみせてよ、ほら」
と、鎖骨から下に手を伸ばす。
何を、言っているのか、この子は。
「ねぇ、ファイ、私は──」
私は、
「初めから、ずっと。あなたが大好きよ」
笑って言った私に、
ファイの顔が固まった。
「そういう事じゃない!」
「求めた通りの答えだけど」
「違う! 全然違う!」
「ねぇ、ファイ」
「なに? なに言っても止めないよ」
「……いいよ。好きにして」
あなたの好きにして良い。
それは、あなたが得た報酬だ。
「でも、1つ教えてあげるよ。
なんで、人を裏切っちゃいけないか」
「は? なにそれ説教?」
「そんなんじゃないよ。でも、」
盗みは仕方ないかもしれない、
でも、仲間を裏切っちゃいけない。
それは、
「仲間を裏切る、悪い子はね、いつか、
もっと悪い大人に、裏切られるの」
「……え?」
首を傾げたファイに、袋がかぶさった。
「な!」
いつの間にか、周りに数人の男がいて、
ファイに頭から袋をかぶせていた。
それはすっぽりと
ファイの身体すべてを包んだ。
「ちょ! 離して! なんで!」
暴れるが、袋に包まれたファイは
軽々と持ち上げられる。
「ほら、ね」
石を、渡したら、私を貰える?
そういう取引をした?
そんなの、守られる訳ないじゃない。
彼らは、どっちも欲しいに
決まってる。
「どういうこと? なんで!」
ファイに、いつの間にか立っていた、
中心人物が答える。
「あなたの仕事は終わりって事ですよ」
「は?」
そして、低い声で周りに指示をだす。
「──連れてけ。
──始末して良い。
──死体はあがらないように」
「い……」
ファイの動揺が、私にまで聞こえた。
そのまま連れて行かれるのを、
縛られてる私に、止める方法はない。
そうして、部屋には、
私と、指示を出した男の二人になる。
「さぁ。これからは大人の時間ですぜ」
そう言って、男は私を見下ろした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「聖龍石を出してくだせえ」
「嫌だ、って言ったら?」
「沢山の男を呼んで、みんなで無理矢理、
あなたの服を剥ぎ取りやす」
「いっ!」
「そして、みんなで、
あなたの体のいたる所を調べます。
全員が満足するまで、ねぇ」
次回も、お楽しみに!




