第11話、オネエ系美形男子に優しくされました
「また僕に黙って外に出たら、
怒るからね!」
「分かってる。分かってる。
だから、気をつけて行ってきて」
「まさか、神殿にあるギルドルームに、
魔王は来ないと思うけど」
「うん。大丈夫だから、ね」
「絶対出ないでよ、絶対だからね!」
そう念を押しやっとファイは出かけた。
か、過保護に拍車がかかった……。
最近は特に、外を歩く時も、戦闘中も。
私の心配ばかりしてる。
まぁ、あんな事があったんだから、
仕方ない。
魔王にされた事を思い出して、
叫びだしたくなる。
本当トラウマになってないと良いけど。
塞ぎ込んだりしないかと、心配したが、
思いの外いつもどおりで、ほっとする。
私が魔王に好き勝手にされるのは、
それを選んだので仕方ないが、
ファイはそうではない。
本来無関係なんだ。
好んで近くにいてくれるだけで。
心臓が、チリと痛む。
「ま、今日は言われた通り部屋で──」
トントンとノックの音がした。
ん? 誰かきた?
まさか魔王様じゃないだろうけど……
扉を開けると、
「はぁーい、元気?」
「え? メイラさん!」
キラキラした格好の超絶美形の男の人。
メイラが笑顔でいた。
「来てくれたんですか!
どうぞ入ってください」
「も〜、踊りに来なくなったから、
こっちから来ちゃった」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「あなたの人気、すごいのよ。
また出ないのかって、よく聞かれる」
「すみません、ちょっと踊れなくなって」
もう二度と、ステージに立つなと、
魔王様に言われましたからには。
「ふぅん……」
と、メイラさんは私の顔を見て。
「男?」
「え?」
「男に止められたんでしょ」
「は、はい……」
その通りですよ。
「新人が辞める時は、大抵
男が怒った時か、いびられてる時」
後者だったら、
どうする気だったんだろう。
「良い男なの? その人」
「まぁ、間違いなく良い男では、
あると思います」
「でも、性格は悪いんだ」
「悪いという点においては、
世界一と言って良いと思います」
なんせ魔王ですからね。
「それでも、好きなのね」
「──へ?」
「うん? 好きなんでしょ?」
「いや、えっと、あの……」
「何動揺してんの? なんで顔赤いのよ」
「いや、好きとか嫌いとか、
そういう問題ではなく、断じてなく」
「なんでよ。大問題でしょ。
ほぼ全てでしょ」
「そ、そうですけど。そうなんですけど」
「好きじゃないの?」
「そういう、訳でも……無く」
「良い男なんでしょ?」
「それはもう、間違いなく」
「じゃ、早いところ『好き』って、
認めちゃって、相手に伝えないと
捨てられるんじゃないの?」
「え?」
「なんで、想像もしてなかった、
って顔してんのよ」
「だ、だって……」
「捨てられたら、悲しいんでしょ?」
「まぁ……それは」
「じゃあ、好きなんじゃないの?」
「いや……いや、そう単純では……」
なんせ魔王で、なんせ聖龍勇者で。
なんせ所有物で。
「なに? アリアンの皇帝陛下にでも、
恋してんの?」
「……似たような、モンです」
「あぁ、もう! ウジウジしてないで!
いくわよ!」
「え? どこに」
「決まってるでしょ! デートよ」
……へ?
□□□□
ふぉおおおおおおおおおおおお〜
こ、これは、都会で流行ってるという!
「パンケーキよ! クリームモリモリ!」
「た、た、食べて良いんでしょうか!」
「もちろんよ! どんどん食べて!」
「いただきます!」
それはもう、遠慮なく。
目の前に広がるパンケーキの群れを、
ハグハグと口詰め込んだ。
おいしい! 幸せ! クリーム溺れる!
素晴らしい! これはもう悪魔的!
「そんなに美味しい?」
「それはもう! でも良いんですか?」
「いいのよ。これはお礼」
「お礼?」
「あなたが踊ったあの日ね。
劇場の売上、過去最高で」
「そうだったんですか」
「たまたま、神殿の人が見に来ててね。
お店の拡張許可が出たのよ」
「すごいじゃないですか!」
「あんたのおかげよ。
次来たとき、お礼しようと思ってて」
でも、来なかったから、
わざわざ、会いにきてくれたのか。
「だから、どんどん食べて。
おかわりしていいわ」
「めっちゃ嬉しいです! 幸せ!」
「そんなに?」
「私、田舎で育って、
こういう都会っぽいスイーツ憧れてて」
「デートしたりしないの?
その世界一性格悪い男と」
「で……デート?」
クレア様と?
「だから、なんで考えもしなかった、
って顔してんの」
「いや、だって……」
「いつもどこで会ってんのよ」
「……いきなり、現れます。急に」
「はぁ? 悪魔にでも好かれてんの?」
「似たような、モンです。
ジュース飲んでいいですか?」
「どうぞどうぞ、好きなだけ」
「ありがとうございます!」
「もう……あんた、クリームついてる」
「へ? どこです?」
「もう、ほぉら」
私の顔からクリームを取って、
それを、ペロリと舐める。
親指を、唇にあてるその仕草が
あんまり格好良くて。
思えば魔王様に負けず劣らず美形で。
「ふふっ、あんた可愛いわね」
そんなふうに、
不意打ちで笑われましたら。
「なんで、顔が真っ赤なのかしら?」
「いや……その」
「ねぇ、その性格悪い男と、あたし
どっちが綺麗?」
「そ、それはもう!」
それはもう?
「……ど、どちらも超絶美形です」
「ふふっ、光栄ね」
「でも、メイラさんの方が優しいです」
「優しく無いんだ、その男」
「もうめちゃくちゃです。酷いんです」
「優しくされたいのね」
や──
メイラがふんわりと笑っていた。
その綺麗な顔で。
「優しく愛されたいのね、あなた」
ドクンと心臓が音をたてる。
優しく……
そうだ、わたしはただ──
ボロと涙がこぼれた。
「ちょっと、なんで泣いてるのよ」
私は、ただ……
ただ愛されたくて。
「……ただ、愛されたい、だけなのに……」
誰かに、愛されて、幸せになって。
それだけを願ってるのに。
「別に全然愛されてない訳じゃ
ないんでしょ。その男に」
コクと、泣きながら、頷く。
「でも、欲しい物とは違うのね」
そうだ。求められるものも。
ぶつけられるそれも。
理想とは程遠い。
──お前は、俺のモノだからな。
魔王様はそういうだけだ。
私は、あなたのモノです。
そこの後悔はないけど。
「もっと欲しいの?」
もっと?
そうだ、もっとだ。
もっと欲しい。
好きだと言われたい。
愛してると聞きたい。
優しく触れられたい。
求められるものに溺れたい。
そんな相手が、欲しいだけなのに。
どうして、あなたはそうではないのか。
「よしよし、辛かったわね」
「ふぇえええ~……」
「ほらほら、泣いていいから、ね」
メイラが優しく抱きしめてくれる。
よしよしと頭を撫でてくれて、
心が休まる。
こんなに優しくされるのは久しぶりで、
涙がボロボロこぼれてくる。
「あんた我慢しすぎよ。
もっと欲しい物を欲張りなさい」
もっと欲しいもの……
「欲しい物は欲しいって言っていいのよ
それは生きる為に必要でしょ」
その声は優しくて、心にしみわたる。
優しくて、暖かい。
「メ、メイラさんが
相手だったら良かったのに」
「あら、嬉しい事、言うわね。
でもダメよ」
「なんでですか?」
「そんな事しても、あんたはその男を
忘れられないから」
忘れられない……
「愛されたいと、泣くほどの相手、
あたしじゃ、書き換わんないわよ」
ふふっと笑って、また私の頭を撫でる。
それが暖かくて、しみわたる。
「でも、捨てられたら、いらっしゃい
また話聞いてあげる」
「はい……はい!」
「ふふっ……あなた本当、可愛いわね
キスしていいかしら?」
「へ?」
「冗談よ。顔赤くしないの。
その性格悪い男が、また怒るでしょ」
にっこり、笑いかけられて、
思わず私も笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「あなたは、僕がもらう。
あなたは、僕のモノだ」
「すぐに、子供には、
見えないようにしてあげる」
「僕なら、マスターに何もしないと
思ってる? 大間違いだから」
「ねぇ、マスター。
僕を好きって言ってよ」
次回も、お楽しみに!
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