タロットだとかペルソナだとか
大宮駅からソニックシティ方面に出て右手側にDOMショッピングセンターというのがある。そこの地下に、フードコート直結の螺旋階段を下った所に日高屋があって、大宮に行くとなんとなくそこで食事をとるのが定番と化している。
「楽だしなあ」
楽。例えば大宮ルミネの中とかで食事なんてとろうもんなら大変な混雑に合う。勝算もないのにとにかく突っ込めみたいな精神。そういうの無いから私。それから日高屋の名誉のために言っておくが、もちろん日高屋だってガチの昼時は混むよ。でも日高屋は少し時間をずらしていけば大丈夫。昼前か昼過ぎに行けば、まあ大丈夫。それがいい。それがいい所だ。ありがたい。拝むくらいありがたい。彼の地で私が頼むのは大体いつも、野菜たっぷりタンメン。たまに違うのも頼んだりするけど、でも結局最後は野菜たっぷりタンメンに落ち着く。野菜たっぷりタンメンに帰結する。
またそのフードコートの側にある入り口から入るとすぐにダイエーがある。入り口入ってちょっとしたコーナーを右に曲がり、フードコートを抜け、百円ショップも抜けると、ダイエー。ダイエー食料品コーナー。私がたまに大宮のネットカフェに行く時はここでコーヒーとかパンとかを買っていく。完全に数時間外に出ない準備というか。ネットカフェを御籠堂みたいに利用する際にとてもありがたい存在。ダイエー。ここにあるっていうのが最高。
「夏ホラーの何か、もう少しガチ系のやつ何か」
だから、その日も夏ホラーの事を考えるために御籠堂を利用しようと思った。もう少し何か、夏ホラーの何か、怖い系のやつを書きたくて。
日高屋でタンメンを食べダイエーに買い出し。いつもの流れ。そう思ってフードコート側のドアを開けると、そこにいつもと違う光景があった。
「占いだ」
そこにいつの間にやら、それぞれがパーティーションで区切られていた小スペースが何個か出来ていた。
でもまあ、私には関係ない事だなと思いつつ通り過ぎようとしたら、
「あ!」
と、声がして、ついそっちを見てしまった。つい。ほんとつい。占い小スペースの中の人と目が合った。がっぷり四つで目が合った。
するとその人がすっと立ち上がりそこから出てきて、え?何?って思ってる私の手をがっと掴み、そのまま自分のスペースの中に引き込んで来ようとしたので、それはもう、うあああ!ってなった。お金とられるって思った。3000円とか5000円とか。そういう額。それまずい。それは明日の朝までの御籠堂のお金と、あとこれからダイエーでコーヒーとか買うお金だから。何だったら明日の朝のご飯台も含まれている。
だから、それはもう抵抗した。やめろおお!ってなった。
「待ちなさい。あんた、凄い事になるよ」
占い小スペースから出てきた人はそんなことを言って私を説き伏せようとしてきたが、無い無い。そんな訳ねえんだよ。凄いとか。私に凄い事なんて起きねえんだよ。凄い事起きないからこうやってお話とか書けるんだよ。馬鹿野郎。
そうしてしばらく私の腕を使った綱引きみたいになっていたが、
「夏ホラーに関わる!」
と、言われてそれに気を取られて、気持ちが切れ結局そのままずるずると私は占い小スペースに引き込まれてしまった。
ああ、御籠堂金が。
占い小スペースの内部に連れ込み私を椅子に座らせると、その占い師の人は私に有無も言わさずタロットカードをやり始めた。
「知らねえ」
タロットカードとか知らねえ。ペルソナのゲームでしか知らねえよ私。あとタロット山荘殺人事件しか知らねえけど。だってこんなオシャンティなものを私が知ってたら気持ち悪いでしょう?そういうの知らないままに過ごしてたんだけど私。聖書とかもそうだしさ、あと心理学とかも知らねえよ。深淵を覗くとなんたらかんたらとか、ああいうのも知らないままに過ごしてたんだけど私。知って他人とかにどや顔で話したくないから。そういう気持ち悪い自分になりたくないんですけど。
「出た。ほら見なさい」
しかしそんなの関係なく、占い師の人はタロットカードをやり終えたのかこちらを凝視し、うなだれる私の眼前に駅と書かれたカードを見せてきた。
「何ですか?」
「駅」
それが何よ?
「このカードが出たという事は、あなたの人生にもうすぐとてつもない変化が起きるという事よ」
なんで?なんでそういう事になるんですか?
「駅。これは変化の表れ。環境が変わる。状況が変わる。自分の意志とは関係なくがらっと変わる。そういう暗示なの」
へえ・・・何?桃鉄で言う所のぶっとびカードみたいな事?
「その上で困難に立ち向かい、それを乗り越えられたらあなたの望むものが手に入る。そういうカードなの」
はあ・・・FGOみたいな事ですか?望みっすか・・・steamでペルソナ4だけじゃなくて、3と5も出してほしいんですけど。あと、それぞれのダンスのゲームも出してもらって。それから夏ホラー用になんか怖い話を思いついてほしいんですけど。
「大丈夫。困難を乗り越えたら必ずあなたの願いは叶う。夏ホラーに関しても今は何も思いついてないかもしれないけど、これで一発です」
はあ・・・そうっすか。一発ですか。リーチ一発ですか?
「ただし、困難を乗り越えさえしたらね」
その後、既定の料金をしっかり払って手持ちの金が無くなり、御籠堂に行くこともかなわなくなったので帰ることになった。
あのばばあ。
何が変化だこの野郎。
そんな不穏なことを考えながら、埼京線のホームに向かうエスカレーターに乗ってたら後ろから押された。
うわ!
と思ったときにはもうすでにエスカレーターを転げ落ちており、前に居たJKの集団と絡まり合ってて、塊魂みたいになってて、そのままうまい事埼京線のホームに降りるもう一つの階段の方にまで進んでおり、
嘘だろおい。
と思ったときには意識が飛んでた。
目を覚ますと、異世界だった。
あと、自分の容姿がエスカレーターで前に居たJKの人と入れ替わってた。
それからあとなんだ、前世の記憶があって、精霊になってて、話を聞くと自分は婚約破棄されたことがあるらしくて、自分だけの唯一無二のスキルがあって、不老不死で、剣になれたりもして、転生ボーナスもあって、破滅エンド回避の方法もわかってて、あとなんだ、薬学もあって、神様にお願いも出来て、サバイバル技術もあって、あとなんだろ?魔法の技術もあって、プログラムも出来て、そもそものステータスも高くて、そういう感じ。
「盛りすぎい!」
盛りすぎだろ。
なろう系のランキングの1位から30位みたいな感じじゃねえか。
ただ、とにかくこれでこの世界なんとかしたらいいんですか?これが困難ですか?これを何とかしたらあれなんですか?願いが叶うんですか?steamでペル3と5が出てくれるんですか?
じゃあ、やる。
頑張る私。
あとさ、私は夏ホラーの話が欲しいって言ったのよ。なんで転生したんだよ。あと、考えてみたらタロットカードに駅とかねえよ。なんだよあれ。
何だよあの婆。
あの婆が実はラスボスとかだったらマジ殺す。
そんな事を考えていたら目の前にお化けが出た。倒したらレベルが99になった。