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逃げた魚  作者: 岩長昨夜
本章
2/6

よろしくお願いいたします。

コルネイユ王国のターコイズ国王の一粒種カーマイン王太子は、王宮内のサロンの一室にて、彼の婚約者であるローズ=マルブランシュ大公令嬢が、スカーレット=アポリネール宮中伯令嬢とウィスタリア=デカルト将軍令嬢の二人の令嬢とが談笑している中へ、ノックもせずドアを勢いよく開けて入ってきた。

金髪碧眼の童話の中の王子様そのままの姿をしたカーマインは、普段の、柔らかな表情を怒りに歪め、眉を吊り上げている。


3人は闖入者に、顔をドアに向けたまま、それぞれカップを持ったまま固まっていたが、ローズは、いち早く状況を理解し、カップをソーサーに戻すと、ソファから立ち上がり、


「これはカーマイン殿下。ご機嫌麗しゅうございます」


と、カーマインに向かって優雅なカーテシーを披露した。

ローズの行動に、スカーレットとウィスタリアも我に返り、ローズに倣ってカーテシーを行う。

3人の慇懃な礼を受け、カーマインは、更に顔を茹で上げる。頭を下げる3人を前に、カーマインは、ローズ一人を睨みつけ


「ローズ。其方は一体何をした!」


と、叫んだ。

イヤリングをシャラリと揺らし、ローズは顔をあげる。


「「何をした」とは、一体、何の事でございましょう?」


折れそうな程に細い首をかしげ、小さくふっくらとした桃色の唇から紡がれた声は、鶯の鳴き声を思わせた。王太子と同じく金髪碧眼だが、彼よりも明るいゴールデンブロンドライトの髪をしている。

知らぬ男なら、その姿を見ただけで、跪き、愛を請おうとするかもしれない。しかし、カーマインは最早、彼女を魔女だと認識していた。


「アイビーとバーミリオンが、そちらのお二方に婚約破棄された。其方が何かしたに違いない」


眉を吊り上げたまま、自分の親友に起こった事を、ローズにぶつける。

カーマインは、つい先ほど、アイビー=クララック伯爵令息とバーミリオン=ラロシュ子爵令息から、彼等の婚約破棄の話を聞いたばかりだった。

アイビーはスカーレットと結婚する事で、宮中伯の推薦を受けて、財務のポストにつけただろうし、バーミリオンも将軍の娘婿として、王太子の親衛隊長となる予定だった。

もちろん、カーマインが国王となれば、彼等は、王の信頼する財務府員、及び士官として、その先の出世コースには乗れるだろうが、国王はまだ若く、カーマインが国王となるのは、余程の事が無い限り、後20年は先だろう。

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