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ループ  作者: Sugarei
9/9

水曜日 ループ 3

多田めぐるは目を覚めた。昨日は自分が死んだ記憶が鮮明に再現しました。気分悪くなった。ベッドへんの小さなテブールの上に乗せたグラスは空ぽうだったのを見て、今日もループと確認した。だって、昨日は寝ぬ前に半分の水を残したから。

約束の時間より20分早く集合場所へ来て見ると、上條すすむと戸倉ゆきみはすでにあそこにいた。

「昨日のこと憶えてるのか?」

戸倉ゆきみに向かって、多田めぐるは真っ直ぐに聞き出した。

戸倉ゆきみは小さく頷いた。

「あ、そらくんだ!」

上條すすむはマンションから出た中川そらに手を大きく振って名前をよんだ。

「ぼくを呼んでるの?」

中川そらは三人の側に走って来て、大きな目を瞬いて聞いた。

「昨日、ゆうなちゃんと無事だったね。」

「ゆうなちゃんって、誰ですか?」

中川そらの無邪気な目を見てると嘘ではないことははっきりでした。今度は上條すすむは驚いた。

「ああ、ごめんね、人違いだ。」

戸倉ゆきみは微笑んで優しく言った。

上條すすむはまた何が言おうとしたが、多田めぐるに止められた。

中川そらの後ろ姿が視界から消えると上條すすむは疑問を口にした。

「どういうこと?そらくんはゆうなちゃんを憶えてないのか?多田さん、どうしておれを止めたの?」

「あの子はおれたちのこともすっかり忘れたから。」

「それはそらくんはもうこのループから外れたと言うことかもしれない。」

「ゆうなの無事を確認できれば…」

「ゆうなちゃんの住所を知ってるよ。この前そらくんと一緒に送ったことがあるんだ。いるかどうか分からないが、確かめに行こう。」

戸倉ゆきみを先頭に、多田めぐると上條すすむも榊ゆうなの家へ進めた。

「ここ、あの公園に近いな。」

上條すすむは嫌な事を思い出したように呟いた。

「なるほど、だからゆうなはあの公園で遊んでた。」

多田めぐるは言ってるうちに赤いボールがぐるぐる回って彼の足元で止めた。

遠くに一人の女の子が走ってきた、榊ゆうなだった。

多田めぐるはボールを拾い上げ榊ゆうなに差し出しだ。

榊ゆうなは両手で受け止めると、頭を下げて、「お兄ちゃん、ありがとう!」と言った。

「そうか、ループから抜けると記憶が消すんだ…ちょっと寂しいな。」

上條すすむはコーヒー屋のテブールにへばり付いて呟いた。

「このループからどうやって抜けるのかまだ検討が必要だ。」

「そうですね。これでわたしたち3人だけの問題になった。そらくんとゆうなちゃんが日常に戻ってよかった。」

「いやいや、よくないよ。一緒に不思議を体験した仲間だろ?」

上條すすむはいきなり腰をびっしりと座り直った。

「漫画とか読みすぎ!まあ、いいじゃないか。そのあつさを後でちゃんと働いてもらうぞ。」

戸倉ゆきみは片目をつむって見せた。そして言い続けた。

「上條くんは昨日自分の無惨な死に方を憶えてないよね。」

「うん。そんなに惨めなのか?…ってなんで戸倉さんは憶えてるのよ?」

「戸倉だけじゃない、おれも覚えてる。」

多田めぐるの発言に上條すすむは頭を抱えた。

「ああーー、昨日、お二人はおれに隠れで何がしたのね!仲間外すなよ!戸倉さんは昨日『実験』とか『人道違反』とか言いました、それね!」

「なんだ、ただの熱血少年と思ったが、頭の回転が悪くないね。」

「戸倉、真面目な話しに戻ろう。」

多田めぐるは溜息一つ漏れって止めに入った。

「はい、ごめんなさい。ここにいる唯一の社会人の言う通りにしよう。上條くん、昨日言った実験は既に多田さんとの協力で証明済みだ。」

「だから二人とも昨日の最後の記憶があるんだ。どんな実験でしたか?」

「殺される前に死ぬって言うこと。」

戸倉ゆきみはあっさりと答えた。

「自ら死ぬというのか?自殺!?」

「声、大きいよ。」

「あ、ごめん…」

「それはそれで納得できるが、なんでおれは戸倉に殺されなければならなかった?」

多田めぐるは真っ直ぐに戸倉ゆきみを見つめて言った。

「刺す前にちゃんと謝りましたが、自殺と他人によって死ぬの二つの選択が取るとどうになるのか試したかった。」

「やる時は迷わず動いたな、あの黒い靄に操られたのかと思った。刺すのに、心臓を少し外れた、お陰で、あんたの自決を見届けた。」

いまいち話の意味を完全に理解してない上條すすむはポカーフェイスで言い出した多田めぐるにじっと見つめた。

「てきにわたしの不器用さに怒ってると思いますが、そっちか?大丈夫、本人のままです。痛かったでしたね、分かりますよ、最後は自分を刺したから。いい殺人と自殺の体験だった。お陰で、今まで自分を囚われた悩みは全部ばっかと思った。」

「それはなにより。これで記憶が保存されたから、もう文句は言わない。今日はどうする?」

この時、上條すすむは次元壁を感じた。目の前の二人は本当に現実の人間なのか、もしかして自分が漫画の中に入ったではないのかさえも考え始めた。

「おれはできることがあるのかな?」

考えことを素直に声で表現されたことを自覚しなかった上條すすむの肩に戸倉ゆきみは手を乗せた。

「今日は上條くんにしか出来ないことはあります。」

戸倉ゆきみの説明を聞いて、上條すすむは先の興奮を一気に飛ばされ肩を落とした。

「それはスリじゃないか?」

「まあ、非常時期だから、その人形はどうしても必要です。本当にわたしたちを救うちからが宿ってるのなら、ご主人の側に戻れると思います。前回多田さんとそらくんを救ったように。それに、上條くんはボクシングをやってるでしょ、その動態視力と腕を活用すれば難しくないはずです。」

「戸倉さんこそ小説とか読みすぎだよ。おれはそれ程達人じゃないから。」

上條すすむは苦笑して嘆いた。

「多田さんじゃ駄目ですか?」

「無理です。多田さんは自分が気づかないうちに身の回りに黒いオウラを撒いた。普通の人は距離を置くと思いますが、近づくことさえも難しいじゃないかな?」

多田めぐるは俯いて何も言わなかった。

「いいや、多田さんはいい人です。」

「その点について、わたしも賛成です。昨日、わたしに殺されたのに、説明したら、あっさりと許してくれたから。」

「もういいです、おれのことは置いておいて、そろそろあの人形が現れる時間だろ。」

真剣な顔になった三人の間に空気まで緊張感を染まっていた。

その人形の持ち主は二回のループに違う行動をとった。今度は三人全員外で待機することにした。

一回目のループのルートを戸倉ゆきみの守備範囲、二回目のループであの人乗せた車の位置で上條すすむに任せ、多田めぐるは少し離れたどこで見張っていた。

これで準備万端と言っても過言ではないが、肝心な目標はなかなか現れなかった。

はあーー、準備が整えた人にチャンスをくれるじゃないのか?今日は最後のループかもしれない。昨日多田さんにあんな酷いことをした、今日みんな助けたらちゃんと謝るつもりなのに…戸倉ゆきみは悔しくて唇を噛んだ。

ほかのふたりに目をやると、上條すすむはこぶしを握りしめて緊張そうに待機している。多田めぐるはその離れたどこでちゃんと見張ってる。あの二人はまだ諦めていなかったっと戸倉ゆきみは分かった。

目を閉じ深呼吸一つ、再び目を開け戸倉ゆきみは人形が手にいられなかった場合の対策に移るとする時、何かが足に当たってると感じた。

諦めて寸前にそれを直ぐ側に来ていた。戸倉ゆきみは驚愕からまた抜け出せてないが、反射的に手を伸ばしそれを拾い上げた。

多田めぐると上條すすむに声をかけようとすると、当人たちはいつの間にか戸倉ゆきみの側に駆け寄った。

「これだ!」

多田めぐるはの声からしょうしょう興奮を聞こえた。

三人は直ぐそこのコーヒー屋に戻った。

「なんか気持ち良さそうに見えるな。」

上條すすむは肘で頭を支え、積水をついた地面に汚れた人形をハンカチで抜いてる戸倉ゆきみの手に乗せたそれをじっと見つめて呟いた。

「そうですか?多田さんは命を救われたと言ったので、わたしは期待過ぎるのかもしれない、喋れると思いました。手触りも普通の人形と同じ、関節のどこ結構動ける、いいつくりです。肌色は少し焼けついたが、持ち主に大切にされたことは推測できます。」

「本当にこいつ頼りになるのかな?」

戸倉ゆきみの手から人形を取って疑う上條すすむは突然それを宙に投げ出した。多田めぐるは両手を差し出していいタイミングでそれを受け止めた。

「わたしたちの秘密兵器を粗末に扱うなよ。」

「いやいや、そいつ先おれを睨んでた。」

「上條くんはその人形くんを疑ったから。わたしとして、昨日の手も足も出なかった上條くんより人形くんの方が期待してるよ。」

「えーーそんな…」

「途方に暮れたそらとおれを救ったことを感謝する。」

二人のやりとりに介入しなかった多田めぐるは人形の頭を撫でて言った。

「あのさ、もし今日無事に過ごせて、明日も木曜日になったら、おれたちもお互いの記憶をなくすのか?」

上條すすむは小さい声で聞いた。

「えっと、二回も殺された記憶を残して欲しいの?」

戸倉ゆきみは上條すすむを見つめて聞き返した。

「おれはほとんど憶えてないから…」

「都合いいどこで記憶をなくしないでよ。多田さんはどうです?」

「三回の中二回も憶えてなくて。一回は戸倉に殺され、しかも死ぬ前その自殺まで見させた。忘れようとも忘れないよ。」

「わたしも殺人と自殺を一遍に体験したことを忘れたくないのです。なんかいい思い出とはほど離れるね。でも、もし二人はよかったら、憶えてるなら、明日の夜またここで会いましょう。これでいいかな?」

戸倉ゆきみは真摯な笑顔を見せた。

「戸倉さん!」

「別にいいだろ。」

ちらっと手の中の人形を笑えたように見えた多田めぐるは唇の角を少し上げた。

大きな桜樹の前に立つ三人。

「すすむ、枝に囚われてもあんまり荒らない方がいい、さもないと、昨日のように一番目の被害者になる。」

「おれは一番に殺されたのか?」

「昨日はそうだった。わたしも憶えています。」

上條すすむはショックを受ける前に見えないちからを動き出した。

「来るぞ!すすむの正面に向けた!」

とっさにボクシングの体勢を取る上條すすむは目に取れ難いジャブで真正面を向けた。何も触れなかったが、何か切り裂いたのは感じた。

「昨日より随分ましだな!」

多田めぐるの褒めに上條すすむは素直に喜んだ。

「多田さん、持ってけ!」

声が終える前に人形が飛んで来た。戸倉ゆきみは桜樹の枝に縛れる前に人形を多田めぐるに目掛けで投げた。

「戸倉!」

「戸倉さん!」

「大丈夫、信じる。近づかないで!」

黒い靄が増幅し続けた。上條すすむは多田めぐるの協力で何回もその拳で払いたが、やがて枝に捉えた。

「ごめんな、多田さん、あんまり役に立たなくて。」

「いいえ、十分です。よくやった!」

多田めぐるは戸倉ゆきみと上條すすむの状況を確認した。二人は今だただ縛れらたまま傷などなかった。どうやらその黒い靄は三人とも捕獲してから行刑するのだ。

どんどん増幅する黒い靄は三つに分け始めた。その中の一つは多田めぐるに向けて襲って来た。

その時、彼の手の中の人形が動き出した。あの日のように人形は黒い靄はと競りあった。でもその戦い振りは戸倉ゆきみと上條すすむからは人形は宙に舞い上がって乱舞しているしか見えなかった。

やがて、最後の黒い靄も消え、人形は宙に浮いたまま、多田めぐるたちを一瞥して何処かへ飛んで行った。

いつの間にか身体の自由を取り戻した戸倉ゆきみと上條すすむは多田めぐるの側に歩いて来た。

「信じられない、あの人形、すっけっな!」

「まだ礼を言ってない、今度会ったら、ちゃんと言うよ、人形くん。」

三人は公園の出口で別れ、それぞれ違う方向へ向かって歩き出した。

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