火曜日 ループ 2
多田めぐるはいつものように家で朝ごはんを作っていた。頭の高速回転に関わらず、彼の手は止まらなかった。
月曜日は1回ループした。その日、中川そらという少年と会った。火曜日、今日も火曜日だが、おれにとっての3回目だ。
1回目の火曜日、この前公園で会った女の子榊ゆうなはある交差点で事故があって亡くなった。同時に、中川そらは自宅のマンションから誰かに突き落とされて死亡しました。それを知ったのは、新聞に二人のことを載ってだからだった。普段あんまり見ない新聞を手にしたのはきっと何か目に見えない力の導きだった。
2回目の火曜日、朝、中川そらにメセッジを送って、前の日の事故や事件を知らせた。そらくんの家を聞き出すおれは出勤する前に、彼のマンションの近くて彼と会った。そらくんは殺された記憶がなかったが、気をつけますと言った。そして、彼にゆうなちゃんを助けてくれと頼まれた。ゆうなちゃんを救った後ニュースでそらくんの事件を知った。そらくんはまた殺された!!
今日は3回目でよかった。今日こそちゃんと行動を取るのだ。
朝ごはんを済んでから、多田めぐるはまず係長に休暇を取った。そして、昨日で会ったその上條すすむっていう高校生にメセッジをくれた。向こうは直ぐ返信した。
どうやら、上條すすむも記憶を持って同じ日を繰り返した。協力者を得たことを多田めぐるにとって心強いのだ。これで、おれはそらくんを救うことに集中できると多田めぐるが思った。
多田めぐるは今日も早めに中川そらのマンションの付近で彼を待っていた。
中川そらは多田めぐるを見ると、分かったようで、こう問いだした。
「めぐる兄ちゃんは今日もここにいるということは、ぼく、昨日も死にましたね。」
「ガキとしては、頭いいな、おまえ。」
「って、今日はずっとそばで守るのか?」
「そのつもりですが、文句あるのか?」
「ポカーフェイスのめぐる兄ちゃんの方が不審人物に見えるよ。」
中川そらは楽しそうに笑って言った。
その日、中川そらは学校にいる時、多田めぐるはずっとその近くで待機していた。
やがて、学校が終わって、二人は一緒に最初で会った電車を乗った。
「ああ、護衛がいることは悪くないよ。ありがとう、めぐる兄ちゃん!」
中川そらは頭を下げて礼を言った。
「お陰で、初めてサッボウた。」
中川そらはポカーフェイスーで答えた中川めぐるに目を丸くして問い出した。
「へえーー全勤賞をとるタイプですか、めぐる兄ちゃんは?」
「そのつもりはないが、ただ規則通り仕事をしてるだけ。」
「へええ、真面目なポカーフェイスのキノコのめぐる兄ちゃん、はははっ。」
「なんだ、それは。」
「ああ、そうそう、めぐる兄ちゃん、この飴、憶えてる?」
中川そらは鞄の中にひとつの飴を取り出した。それは榊ゆうなから貰った飴だ、多田めぐるはすぐ気付いた。なぜなら、その飴はどうやら普通じゃないのだ。
「お前も持っていたのか?」
多田めぐるもズボンのポケットから同じ飴を出した。
「やっばり、めぐるお兄ちゃんも憶えてるね。この飴はさ、ずっと鞄の中に置いてた、昨日ぼく食べたよ、でも、いつの間にか鞄の中に戻った。何回食べても戻ってくるんだ。」
「お前、よく何回も食べたな。おれは甘いものが苦手で、捨てるのもよくないと思うが、そのまま机に置いていたが。会社にいっても、常にそばにいた。机の上とか、いまみたいに、ズボンのポケットにとか、これはループに関係があるのかな。」
「でも、ぼくのもめぐる兄ちゃんのもゆうなちゃんから貰ったでしょ。もしかしたら、ループはゆうなちゃんから始まったのか?」
「それは一理があるな。日曜日のループが一回、お前はゆうなを救った。火曜日のループはこれで二回目だ。一回目にはおれがゆうなを救ったが、お前を救うことができなかった。もし今日はゆうなとお前が無事に過ごせば、ループが終わるかもしれないな。」
上條すすむ、うまくやってくれよ。多田めぐるは心の中でこっそり祈った。
「あの男子高校生のお兄ちゃんがゆうなちゃんを救えるのかな?」
「信じるしかない。彼はループすることを認識してその場にいった。万が一失敗したら、またほかの方法を考えましょ。」
「ぼくもゆうなちゃんも死んだままでループが止まったら…」
「それはないよ。今日は絶対お前を守るから。」
中川そらは俯いて小さく震えてたのを見た多田めぐるは彼なりに精一杯の慰めの言葉をくれた。
「本当にいいのか?お前の両親に聞いて方が…」
「いいですよ。今夜もぼく一人だから。」
中川そらは多田めぐるの袖を軽く捻った。こういうときはこともらしいなっと思った多田めぐるは頷いた。
電車から降りて、多田めぐるは中川そらをマンションへ送った。そこで、両親が今夜家に戻らないということを付け、中川そらは多田めぐるに家に泊まると強請った。多田めぐるは元々マンションの近くて見張るつもりだが、中川そらの強請りに負けて、家まで上がった。
「お前、いい家に住んでるな。」
「パパとママが買ったのですから、わたしはただの住人さ。いつかおれんちを自分が買うから。」
自分のアパートと比べにならないと思った多田めぐるの感慨に、中川そらはさりげなく答えた。
こともにしてはしっかりしてるなっと多田めぐるはこころの中で褒めた。
「めぐる兄ちゃんは夜いつも何をしてるの?」
「晩飯を作って、食ったからしばるく休んで、筋トレをやる。」
「料理できるんだ。すごいー!筋トレは自宅で、ジムとかに行かないのか?」
「いや、簡単な筋トレはどこでもいけるさ。ジムに人が多くて、騒がしいし、ひとりなら、好きのようにやれる。」
「ぼく、めぐる兄ちゃんをちょっと憧れるかも。」
中川そらは目をキラキラして、多田めぐるを見つめた。
こともの考えは分からないなっと多田めぐるは思った。
その時、ドアから風に当たった音が聞こえた。
中川そらと多田めぐるは同時にドアに目を向けた。
暫くして、音が消え、静まった。
「昨日もあったのか?」
多田めぐるは聞き出すと、すぐ思い出した、中川そらは昨日自分が死んだ記憶がないことを。
「思い出した…昨日のことを…」
中川そらの震える声を聞いて、多田めぐるは振り替え彼を見つめた。真っ青な顔になった中川そらは全身を震えていた。
多田めぐるは直ぐ彼のそばに近寄った。
「だいじょうぶか?」
「昨日も…変なことを聞いた、ドアに覗いて何も見えなかった。振り返ると急に後ろから引っぱられ、体は宙に浮き、窓のどこにつられ…落とされた…」
中川そらは多田めぐるの服の裾を握りながら思い出したことを教えた。
子供にとって耐え難い怖いことだろ、多田めぐみは中川そらの頭を撫でて思った。
見えない何かがこの子を窓から突き落としたか?目に見えないのは厄介だな。
時間がそんなにないと意識して多田めぐるは一生懸命に考えだ。
その時、目の前に何か黒いものは漂っていた。蝿…じゃないな、その証拠は、黒いものは無から生じたようにだんだん大きくなって中川そらに向かって来た。
まさか、これはその見えないものの正体か?
中川そらは足を地面から離れ、少しずつ宙に浮かび始めた。
「めぐる兄ちゃん!」
どうやらその子は黒い靄を見えなかった。多田めぐるは中川そらの腕に手を伸ばし、自分の方に引っ張るつもりだったが、向こうの方が力が勝るゆえ、二人とも宙に舞い上がった。
まずいーー!多田めぐるが反抗しようが、無駄でした。
窓への距離は短くなり、やる術をなく二人はただ窓に映る自分の姿をみることしかできなかった。
こんなことになるとは…多田めぐるは恐怖と悔しさの狭間に自分の無力さを思い知った。
窓が自動的に開いた、結末はもう決めたと悟った多田めぐるは中川そらに「ごめんな、そら。」と小さく呟いた。
中川そらに届けたのかどうかの間に二人は突然地面に落ちた。多田めぐるはその衝撃と痛みを堪え、身を張って中川そらの落下を受け止めた。
彼はすぐ黒い靄の在り処を確認したが、宙に漂ってる黒い靄は円を描きながら何かと戦ってた様子だった。その飛び回ってる物は何なんですか、速くて目が追いつけなかった多田めぐるは一度目を閉じ、再び開け、そのものを見ようとした。
やっと多田めぐるの目に捉えたそのものは玩具だった。形から判断すると小さな人形に見えるが…
「めぐる兄ちゃん、あの空中に飛んでるものはキーホルダーですか?」
中川そらの問いに、もう一度その人形をよく見ると、たしか小さなチェインをついていた。
「そうだな。」多田めぐるは頷いた。
「リモート型ですか?ぼくの物じゃないよ。誰が操ってるの?それがぼくを殺そうとしたの?」
中川そらは黒い靄を見えないと多田めぐるは悟った。そのキーホルダーが現れてから、自分と中川そらが解放された。そのキーホルダーも何か不思議な力にやっとていた、もしかしたら、助けられるかもと多田めぐるは思い始めた。
それは真になった。実際、黒い靄は随分減っていた、やがて最後のも消え去ると宙に回るキーホルダーはこっちを一瞥した。
どう見ても人形だった、ただし関節が動けるような作りでした。多田めぐるは考えてる内に、それは窓の外へ向かって身を消した。
「ぼく、助かったの?」
多田めぐるの目を見つめ、中川そらは答えを求めた。
「多分もうだいじょうぶだろ。」
「よかった。ああ、めぐる兄ちゃん、肘、血が出た!」
多田めぐるは反射的に自分の左肘の辺りで痛みを感じ始めた。
「だいじょうぶ、掠っただけさ。」
「ぼくを助けるために…」
何責任を感じてるのか、子供なのに。こういうことは苦手だった多田めぐるは口を開いた。
「なら、手当てを頼めるか?」
「はい、ちょっと待っていてね!」
中川そらはすぐ立ち上がって奥の部屋へ走って行った。
「めぐる兄ちゃん、そのキーホルダーはどこから来て、またどこかへ消えたのですね。だれかあやつってるのかな?」
「分からないな。でも、それは敵意がなかったと思う。」
中川そらは多田めぐるの肘に薬を塗る時、上條すすむのメセッジが来た。
「ゆうなが助けた。」
中川そらにそれを伝えると、少年は嬉しそうに笑った。
本当に大変だった、あの人形に感謝するよ。これでループはもうこないでしょっと多田めぐるはこころの中に嘆いた。
多田めぐると中川そらは黒い靄に囚われた時、上條すすむはぎりぎりなところで榊ゆうなを助けた。
今度上條すすむは数学の授業を受けず随分早めに事故現場に待機した。ずっとそこで立っていた上條すすむに不審な目を向ける人が何人もいったが、彼は気にしなかった。
榊ゆうなを救え、彼女を家に送る途中、上條すすむも飴を貰った。自分はボクシングをやってるので、甘いものは取ることは止めたが、子供の好意を拒めず、一応受け取りました。
帰り道で、上條すすむが多田めぐるにメセッジをくれた。向こうから感謝の言葉を貰ったことで些細かな達成感を胸に広がった。
上條すすむは明日になればまた火曜日なら、何をすればいいのかを考えながら眠りに落ちた。