3-2そんな空母で大丈夫か?
さて、此処では前に挙げた3つの要素に付いてもう少し詳しく見てみよう
日本海に於ける空母の運用は哨戒活動を前提とした場合には"いずも"クラスの空母でも大型の空母とさして遜色無い運用が可能である
これは、その効果が主に艦載機の行動半径と哨戒範囲の"密度"に依存する為である
現代戦に於いては軍事衛星等によるサポートによりその哨戒範囲はある程度限定されているとは言え、哨戒機による実地での哨戒活動は空母を中心とした機動艦隊にとっては生命線と言っても過言ではない
そして、その範囲は哨戒機の航続距離に密度は運用機数と稼働率に寄っている
ここで問題となるのは外海の様な場所に艦隊がある場合、空母を中心とする広大な円形の範囲が哨戒範囲となる事だ
ある程度索敵範囲は限定されるとは言え、大雑把にその哨戒密度は索敵半径の乗数に比例して低下してゆく
しかし日本近海で日本列島に沿った哨戒活動の場合、その負担は半減する
何故なら艦隊の背後には日本本国が有り、
そちら側の範囲は本土側に任せる事が可能だからだ
これはつまり艦隊の哨戒範囲が半減する事を意味し、極論外海で運用される空母の半分の哨戒機数で同等の哨戒密度を維持できる事を意味している
加えてその哨戒行動範囲は一部の例外を除けば日本領海内になる可能性が高く、その場合縦方向の範囲はさらに狭まるだろう
一方で如何に艦載機の搭載数が多くとも南北に細長い日本列島の全域をたった一隻の空母でカバーする事は現実的ではない
結果、艦載機が少なくとも小回りの効く小型の空母を中心とする"ポケット艦隊"を日本列島に沿う様な形で複数運用し、細長く密度の高い哨戒線を形成する事が合理的であると考えられる
又、この様な警戒拠点の分散は有事の際のリスクヘッジになるだけでなく、中国側の侵攻時に戦術を限定させる効果も見込めるだろう
現在、この様な小型空母は"いずも"を含め3隻が予定されているが、この数では本州防衛に限定したとしても警戒線の形成には些か心許ない
将来的にはもっと多くの"ポケット艦隊"により、本州から台湾近海迄の範囲をカバー出来れば理想だが、その為には防衛費や人員等の問題を解決する必要があり実現性は高く無いだろう
何方にせよ最初の一歩を踏み出さなければその後も無いので、とりあえずは"ポケット艦隊"の運用実績の積み重ねと問題点の洗い出しの為にも一歩一歩地道に進めて行くしか無いと思われる