無くしものはブローチですか?~ほのかな平和と戦争の物語~
いつも通りの学校。
いつも通りの日課。
すべてが平凡に過ぎていく6月12日。
この日も私はいつも通りに終わっていくだろう。
そう思っていた昼休み。
右前頭部にこつんという衝撃が走った。
クルトか。
「よっゲオルグ!何校庭見てボケっとしてんだよ。」
「ちょっと考え事。」
そしてこれもいつも通りの会話。
「知ってるか?最近の学校のうわさ。」
これはいつもとはちょっと違う話かな?
「なんだそれ?」
「最近、初等部で無くしものが相次いでいるらしいぜ。ケータイやら、腕時計やら。1日1個ずつ無くし物が出ているんだとよ。」
初等部か。俺がいるこの学校は、エーデルシュタイン國際学院というドイツにある全寮制の学校だ。
初等部、中等部、高等部、が併設されている小中高大一貫教育制度を実施している学校だ。
周りは緑に囲まれていて、初等部の実習授業としてよく利用されている。
そして俺が今いるのが中等部3年であり、もうすぐ高校レベルに入ることとなる。
そして、今回の事件が起こったのが、俺が今いる中等部棟の南側に位置する初等部棟である。
「ゲオルグも気にならないか?」
「あぁ、すごく気になる。」
「なら放課後、初等部3-1に行く予定があるから一緒に行くか?」
「いいけど、3-1に何の用事だ?」
通常、他の学部の生徒が他の棟に入ることは許されていない。
「3-1のモニカ先生に教材を取りに行くんだ。ついでに初等部の学年主任でもあるし、中等部一の秀才でもある俺と無くし物について話したいとのことだって。」
秀才はともかく、無くし物についての話は俺も同行させてもらいたいな。
謎解きは俺得意だからなちょうど良いだろう。
そういって、5、6時間目は終了して3-1へと向かった。
軽くノックをして、クルトとともに入った。
扉を開けると、机に座って日誌か何かを書いている女性がいた。
「クルト君いらっしゃい。そちらの子は?」
そういって俺のほうを見て首をかしげる。
若い女の先生のようで、とても優しそうに見える。
「初めまして、私は、クルト君の同級生のゲオルト・ランセルです。」
「こちらこそ初めまして。初等部3年学年主任兼初等部3-1の教師の、モニカ・ハンスです。よろしくね。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って彼女は立ち上がり、教室の後ろに向かった。
「クルト君、これが荷物よ。」
そう言って段ボール箱を持ってきてクルトの横に置いた。
中身は数学で使うだろう、ホワイトボード用のコンパス、三角定規が入っていた。
「先生ありがとうございます。」
「いえいえ~。それじゃあ、そこの机に座って無くし物について話をしましょうか。」
そう言って、先生の机の前にある机に俺たちは座った。
「まず何から話し始めようかねぇ・・・。じゃあ最初に、無くし物のあった所に共通点があることから話始めましょうか。」
「共通点があるんですか?」
「えぇ、全部廊下にあるロッカーの中だったのよ。」
基本的に、教科書などの荷物はロッカーに入れて活動をする。
アメリカ系の学校なので、アメリカの学校と似ている部分が多くある。
そしてクルトが質問をする。
「なるほど、でもロッカーには鍵が掛かっていますよね?それらのロッカーは最初から開いていたんですか?」
「被害に遭った生徒は、鍵はしっかりかけていたと言っているわ。」
盗難防止として、ロッカーには鍵が取り付けてある。
鍵を持っているのは、そのロッカーを利用する生徒と、教職員のみとされている。
続いて、俺が質問をする。
「鍵穴にこじ開けた跡などはありましたか?」
「いいえ全く無かったわ。」
そのまま俺が質問をする。
「ではほかに変わった部分は何かありましたか?」
「特にはなかったわ。」
手掛かりは、ロッカーのみ。
「クルト、何かわかったか?」
クルトは頭を抱えて考え込んでいる。
「いや、まったくだ。一回そのロッカーを調べてみるか。先生、案内してください。」
「いいわよ。ついてきてね。」
そのまま教室を後にして廊下に出て直ぐの所にあるロッカーへ案内してもらった。
「このロッカーよ。」
「随分と古い型ですね。」
そこにあったのは、所々が錆びついているロッカーだった。
「えぇ、そろそろ新しい型に変えるつもりなの。」
そのまま他の被害に遭ったロッカーを調べてみたところ次のことが分かった。
・大半が旧型のロッカーで、ひとつだけ新型。
・鍵穴に異常はない。
・どれも致命的な外傷はない。
・故障は見当たらない。
それだけを調べ終えると寮へ帰った。
モニカ先生からは、「何かわかったら報告頂戴ね~。」とのことだった。
その後寮に帰り、夕食をして俺の部屋でクルトと色々インターネットや本などを使って調べた。
だが、これといった情報は出てこなかった。
次の日、中等部の資料室から無くなっていた万年筆が見つかった。
そして、そのまた次の日には携帯電話が、また次の日には、靴下の片方が見つかった。
無くしものについては一部は知っていたが、靴下の片方とは地味につらいものを・・・。
靴下の片方が見つかった日の昼休み、会議室を先生から借りて色々と推理していた。
今日は特別に知り合いの天文学部部長のナターリエ・アイゼンシュタットを連れてきた。
「じゃあ、私が気付いたことなんだけどね、スクリーン使える?」
そうして、スクリーンをすぐに用意をした。
そうしてスクリーンに映し出されたのは初等部の航空写真だった。
そのスクリーンには7つの点が印されている。
「この点は?」
「この点は無くし物があった現場。そしてこの点が北斗七星に見えて・・・。」
「確かに!!上空から現場を見てみるなんて思いもつかなかった!!」
そのスクリーンに映し出されている航空写真に記されている点は北斗七星の様だった。
多少のずれはあるが、ロッカーの位置関係などからそうなっているのだろう。
そうして次の画像になって、今度は校舎を校庭から撮った写真だった。
「最初に疑ったのはこれなんだけど、校舎は三階建てになっていて、一階で一つの無くし物、二階で一つの無くし物、三階で五つの無くし物となるでしょ。それ、光年で分けられていると思うの。北斗七星のドゥーペが一階のこれ、アルカイドが二階のこれ、それから三階の、メラク、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザールがこれらとなるわ。・・・って~初心者には無理か~・・・。」
科学分野の勉強もしているが、そんな深くまでやることはまずない。
「ごめん・・・。とにかく、星座に関係があるということだな?」
「たぶんそうだと思うわ。このまま調査を進めていけば犯人も、動機も、全てがわかると思うわ。」
ナターリエは素晴らしい戦力になること間違いなしだと今確信した。
「それから次に、中等部で次々と無くし物が見つかっているけど、これはオリオン座だと思うの。でも確信は持てないわ。三つが非常に近くで並んでいるということからオリオン座だと仮に判断したけど、他にも三つくらい並んでいる星座もないことはないの。」
北斗七星はよく知られているはずだから、急にマイナーな星座になることはないと考えられる。
ありえないと100%は言い切ることはできないが、可能性としては低いだろう。
その後先生に協力を呼び掛けて、犯人を生け捕りにすることにした。
機材の提供として、科学研究部から夜行生物観測用の暗視カメラとセンサーを借りた。
先生の中には反対する人も数人いたが、出来るだけの人員を集め、万全の態勢で臨む。
夜までに、作戦を練って機材を設置したりなどをした。
犯人が来るまでは、職員室に二人、犯人が来るであろうロッカーの前の教室に二人ずつ、玄関前に三人の先生を配置。
俺とクルトは、放送室でカメラの監視やセンサーの反応を観察していた。
一応モニカ先生とナターリエも放送室に来てもらっている。
あともう一名放送室にいる者がいる。
「フッ、流石は諸君、我を呼ぶとは良き頭脳をしておる。フッフッフ、我に掛かれば盗人一人捕まえるのは容易いわ・・・っ!」
このかなり痛い中二病の人物は機材を提供してくれた科学研究部の部長、ウータ・リッケンだ。
しかも、男ならまだしも女であることから、とても痛く感じてしまう。
「初めまして、ウータさん。初等部三年の学年主任のモニカです。宜しくね。今日は機材の提供ありがとう。」
「へあっ!?えっ、ああ、はい、そんな大層なことは・・・。人として当然のことそしただけですよ。」
目上の人に対しては、普通の口調になるのか。
隣でクルトは、口を必死に抑えて笑いをこらえている。
実はクルトは笑いのツボが非常に浅い。
俺が昔変顔をクルトに見せたら、腹を抱えて大笑いしたくらいだった。
本人も自覚があり、どうすれば治るのかとても悩んでいるらしい。
放送室に窓はないので光が漏れる心配もないし、防音なので中で談笑やトランプなどをやってすごしていた。
そうして1時間が過ぎたころには太陽は西に沈んで闇が訪れた。
そんなことを考えていた矢先にブザーがなった。
そのブザーは玄関に設置してあるセンサーからだった。
「っ!?誰か来たのか?」
急いで先生方に侵入者が来たということを伝えその場にとどまるように連絡をした。
「カメラには何か映っているか?」
「特に何もないな。」
クルトがカメラの映像を確認している。
センサーの故障とは考えにくい。
「一応放送室の電気も消そう。」
ウータがカチッと室内灯を消した。
「ありがとう。それじゃすべてのカメラを観察するんだ。」
そうしてまもなくして、全てのポイントにいる先生から一斉に連絡が来た。
「こちらAポイント。人影を確認した。」
「Bポイント付近に人の気配がします。」
「Dポイントの正面会談から足音がする。応答願う。」
「Cポイントの近くから足音がします。」
そうして全てのポイントから連絡が来た。
返答は足音がする、人の気配がするといったことだった。」
「えっ!?ちょっとどういうこと!?何で一斉に全ポイントから人影だの足音だのの情報が来るわけ?」
ウータも素に戻っている。
「カメラには何か映っているか?」
全てのカメラを確認してみるが、一切何の影も形もない。
「ちょ・・・この学校ってホラー系の学校なの?」
「おいっ!こんなときにそんなこと言うなよ!」
「みんな静かに!」
俺がそういって放送室は静寂に包み込まれた。
全ポイントでセンサーが反応した。
カメラには相変わらず何にも映らない。
放送室の中はブザーの音が反響し続ける。
「全ポイントにいる先生へ聞きますが、人影は見えますか?」
そうして帰ってきた返答は見えないということのみだった。
そうして最後の作戦に出ることにした。
「職員室にいる先生。制御版で全ライトをつけてください。」
「了解。」
「ほかの先生方は一人はライトが付いたら一斉にロッカーを調べてください。もう一人は、生徒昇降口までダッシュできてください。全出入り口にいる先生方はそのまま待機してください。」
『了解!』
そうして全教室のライトが点灯した。
カメラに映し出されたのはロッカー前の教室から出てくる先生方のみだった。
「全ての出入り口付近にいる先生方は出入り口を封鎖してください。」
ものの一秒で全ての出入り口は封鎖された。
今度は校内放送を使って呼びかけを行った。
「先生方は一旦その場で待機してください。侵入者はおとなしく生徒昇降口に投降しなさい。」
そのまま俺たちも廊下に出たが一切人はいなかった。
校庭の奥にある寮からは明かりがついている中等部を不思議そうに見ている多くの生徒がいる。
そう見ているとDポイントから一つの連絡が入った。
「こ、こちらDポイント。人体模型の心臓が見つかりました。」
その後、全出入り口に人がくることはなく、作戦は失敗に終わった。
次の日、ナターリエや他のメンバーが集まって会議室で話し合いを進めていた。
「まず早速なんだけど、昨日のあの現象は何だ?」
まぁ、これが出ることは誰もが予測していただろう。
「後々全ての機材を調べたけど、どこにも以上はなかったわ。」
科学研究部部長のウータは昨日徹夜で機材を調べていたらしいが、以上はまったくなかったらしい。
「機材の不具合じゃないなら昨日の映像やセンサーの反応は正確だった、と。」
「ゲオルグ、なら昨日のあの現象は心霊現象とか超常現象とかいいたいのか?」
「俺もそうは思えないし、そうとも思いたくない。ただ、何の根拠もなく決め付けるわけにはいかない。現場調査もさっきの休み時間にしてみたが、何の以上もなかった。どうとも根拠も何にもない。」
現場調査で調べてみた成果は全くなかった。
「どうするか?今夜もやってみるか?」
「具体的な策ができたらな。」
クルトはこのようなことに対しての計画性は全くない。
勉強以外の計画性は欠けていて、人として社会に出てやっていけるのか心配だ。
「フッフッフ、我の出番のようだな。そなた等に特別な力を分け・・・。」
ウータの中二病が発動したかと思ったら、ドアが開いて見知らぬ女の子が入ってきた。
「あっあの!ブローチを無くした者です。・・・っ、どうか私も仲間に入れてくれませんか!?」
俺は優しい笑顔を浮かべてその見知らぬ少女に話しかけた。
「もちろん良いですよ。廊下は寒いでしょう、ささ、中に入ってください。」
俺は彼女をエスコートして席に着かせた。
「君名前は?」
ぶっきらぼうに、クルトが聞く。
レディーにはもうちょっと優しくと心の中で突っ込んだ。
「あっ、はい。初等部五年のレーア・シュロートと申します。不束者ですがよろしくお願いします。」
「ウータよ。よろしくね~。」
「ナターリエよ。」
「俺はゲオルグ。よろしく。」
「俺はクルトだよ。」
一旦自己紹介が終わったところで会議が始まるかと思ったら、そうはいかなかった。
「ゲオルグ~何だよさっきの妙に丁寧な接待は~お前は執事か何かかよ~。」
クルトは笑って俺をつついてくる。
「別に良いだろ。早く会議を始めてこのこのためにも盗まれたものを回収するぞ。」
「そうだね~。」
ウータがそういって俺を見た。
その口元は端が少し上がっていて、少しニヤついている。
「あ~もうっ!とりあえず、何故レーアさんはこちらに?」
「えっと、私の無くしたブローチを探すとともに犯人確保に協力したいと思いまして。」
今行き詰っているこのチームに新たな協力者が来てくれるのは大変うれしい。
会議はそのまま続いたが、新たな画期的な案は出ないまま機能と同じ作戦で行くことにした。
そして夜。
前夜と変わらない雰囲気を漂わせている。
前夜と変わらないブザーの音がまた鳴り響く。
ここでレーアさんが「私ちょっと見て来ますっ!」と言って出て行ってしまった。
「ちょっと!外に出たら危ないよ!」
俺たちも止めようとはしたものの時すでに遅し。
レーアが出てからしばらくして、レーアのトランシーバーから全てのトランシーバーに連絡が入った。
だがそこから聴こえてくるのはレーアの声とは思えない男の低い声だった。
「・・・お嬢さん・・・俺が見えるのかい?・・・」
トランシーバーを聞いている側からもわかるくらいひんやりとした異様な空気を感じてしまう。
「・・・えぇ、あなたが犯人ですか?」
「そうだ。・・・俺はアロイス・・・。」
その名前を聞いて俺たちは背筋が凍るような思いをした。
なぜならその人物はこの学校の創設者であり、40年前に亡くなっているからだ。
その時は良き創設者として活躍していたが、脳腫瘍で死亡した。
56歳だったという。
講堂にはその創設者の肖像画が張られている。
トランシーバーからはさらに声が聞こえてくる。
「そういえば君の名を聞いていなかったな。」
「私はレーアです。・・・あなたの孫娘です。」
俺はこんなドラマチックな出会いが本当にあるのかと驚いた。
「あぁ、レーア・・・。会いたかった・・・。本当に会いたかった・・・。」
幽霊と人間の心が繋がった瞬間だった。
善霊には心があるのだろうかそんなことはどうでもいい。
「あって早々なんですが、物を盗んだのはあなたですか?」
「あぁ、そうだ。」
「なぜそのような事を?」
レーアの言葉からにじみ出てくる怒りが感じられる。
「すまないが、それは教えられない・・・。盗んだものは職員室の隠し扉の奥にある。すべて返してあげてよいぞ・・・。そして全てを明かせ」
そういうアロイスはなぜかとても寂しげな雰囲気をまとった言葉を最後に言葉が途切れた。
そして最後の意味はいったいなんだったのだろう。
「皆さん聞いていましたよね。祖父、アロイスはもう消えました。皆さん職員室に集まって下さい。」
そう言ってトランシーバーからは音が聞こえなくなった。
「それじゃあ、職員室に行きましょうか。」
モニカ先生がそう言って職員室まで先導してくれた。
職員室に入ると明かりはついていて、レーアが一人立っていた。
「レーア!なんでさっきはいきなり出て行ったんだ!!」
口を最初に開いたのはクルトだった。
その口調からは痛いくらい怒りが噴き出していた。
「真っ暗な校舎の中で何かがあったらどうするつもりだったんだ!侵入者の正体はアロイス氏だったが、もしほかにも侵入者がいたら危なかったんだぞ!この地域も決して治安がいいというわけではないんだ!身勝手な行動は慎め!」
普段のクルトとは比べ物にならない感じがする。
レーアの表情からは今は全く何も読み取れない。
まるで漆黒の闇がレーアの周りにあるようだ。
「ごめんなさい。でも、私にはそれ以外に方法がなかったの。」
クルトは大きなため息をついた。
「ほかの人にも一言断ってから行くようにな。」
クルトもそう言って怒るのはやめた。
「フッフッフ、我が千里眼を駆使し、ヒッデンドア(隠し扉)を探して見せようぞ!」
ウータがそう言ってこの場の雰囲気が和んだ。
クルトがウータの方に行った後、レーアの方に俺は行った。
「クルトはああいっているけどあまり気にしないでね。中身はいいやつだからな。これからは気を付けるようにね。」
俺はレーアにそう言ってウータの方に向かった。
レーアは何かを言いたげに口を開いたが言葉にはならなかった。
「でもどうやって探すの?職員室に隠し扉があるなんて聞いたことがないわよ?」
確かに学校のうわさの大半は知っているナターリエがいうのだから、そういう話はたぶんないのだろう。
「あの、実はこれ祖父からもらったんですが、役に立つでしょうか?」
レーアが差し出してきた紙にはいろいろなことが描かれていた。
大量の球形が規則的に並んでいたり、間取り図のようになっていたりだ。
「これは、職員室の間取りか?机の配置とかがめちゃくちゃだけど・・・。モニカ先生は何か知っていますか?」
モニカ先生は何かを考えている。
「う~ん・・・。何かで見たことがある気がするのよこの配置・・・。何かしら?」
「今は無理に思い出さなくてもいいですから、他に何かありますか?」
そしたらウータがビシッと手を挙げた。
「フ~ッハッハッハ~!我は分かったぞ!!この正六角形などの枠は分子を現しているぞ!これは・・・水酸化ナトリウムだ!!だが一か所ここが間違えているな!愚かな!フ~ッハッハッハ~!!」
そうしてウータが指示した部分は俺にはよく分からないが、異なっているらしい。
「・・・おっと、素人には分からないだろうから、正しい図を用意してやろうか。」
そういって、ウータは廊下に飛び出してどこかへと向かっていった。
ウータの姿は廊下の闇に消えていった。
そうしてすぐに戻ってきたウータの手にはA4サイズのプリントが握られていた。
「これが正しい図だ。どうだ!恐れ入ったか!?」
「うん、恐れ入ったよー。」
俺は棒読みで返した。
「あっ!ゲオルグ!ひどいぞ!!」
ほほを膨らませてウータは俺をにらんできた。
「いいから謎解き進めるぞ。」
ぶーとつまらなそうにいったウータは仕方なさそうにプリントを眺めていた。
「さっきウータさんが気づいた水酸化ナトリウムの誤った図の部分と、間取り図をあわせてみると・・・。」
そういってレーアがひとつのポイントに向かった。
「たぶんここですよね?」
軽くレーアがレーアの足元をとんとんと踵で蹴った。
・・・コンコン・・・
レーアが蹴ったらとても軽い音が返ってきた。
「?・・・もしかしてそこのした空洞になっているんじゃないか?」
そうクルトが言って、レーアが床に手を置いて調べている。
「あれ?この木の板、取っ手になってる?」
そういって、レーアのそばに言ったクルトが一枚の木の板の片方を押し込むと、もう片方がくいっと上がり、隠された取っ手が出てきた。
取っ手をクルトが引っ張ると、ギギギと木が軋む音がして地下空間が姿を現した。
『おお~!』
この場にいた全員が驚きの声を上げた。
中には埃にまみれた石造りの階段がずっと下までつながっていた。
奥のほうは漆黒の闇に覆われていた。
その階段の一番上のところに無くし物はあった。
一旦、無くし物は見つかって一段落した。
・・・だが、新たな謎が増えたな・・・。
「とりあえず、今日はもう遅いから皆さんもう帰りましょうか。」
そうモニカ先生が締めて今日はみんな帰ることになった。
翌日、俺はクルトと一緒に登校していた。
寮から学校まで昨日の話をしていた。
「持ち物が見つかったのは良かったけど、謎の地下空間が見つかっちゃったな。」
「見つかっちゃったってなんだよ。でもまた厄介なことが増えたな。」
昨日はその地下に行くことはできなかったので、今日の放課後に行ってみようと思う。
もちろん先生方の許可が必要だが、モニカ先生が何とかしてくれるだろう。
今では心強い仲間なのだから。
そうして、数学、体育、物理、世界史、国語(ドイツ語の勉強)、美術の授業が終わって放課後になった。
今日の体育はいつもよりハードでもうへとへとだ。
だが、地下空間の調査が楽しみだ。
そういうことを考えると、体育の疲れがどこかへ飛んで行ってしまう。
「ゲオルグ、職員室行くぞ。」
「ちょっとクルト待ってくれ!支度するから。」
「分かったよ~。」
そうして支度が終わってクルトと一緒に職員室に向かった。
職員室に入ると職員が昨日見つけた地下へと向かう階段の近くに集まっていた。
他にもレーアやウータ、ナターリエも集まっていた。
「さてと、全員集まったわね。」
モニカ先生がそう口を開いた。
メンバーは計10名。
ナターリエは傍にある机の上に置いてある箱から懐中電灯と、方位磁針を取り出した。
「部活動の道具なんだけど、特別に借りて来ました。使ってください。」
「ありがと~。」
そう言って全員がそれらを借りた。
「それじゃ開けるよ。」
俺がそう言って開けたら、昨日と変わらずそこには漆黒の闇に覆われた階段があった。
「じゃあ、行きますか。」
「ゲオルグ先にどうぞ。」
そう言ってウータが俺を階段の方に押してきた。
どっちにしろ入ることになるし、最初でも最後でもそうでなくても俺は構わない。
俺は了承して階段に入っていった。
足元に明りを向けてみるが、木製の階段の板があるだけだった。
歩くだけで軋む音は不協和音をこの空間に響かせている。
まだ先は見えない。
ゆっくりと階段を下りていくとやっと地下一階フロアに着いた。
辺りは黴臭く、暫く手入れがされていないとすぐに分かった。
空気は澱んでいて体にじめじめと纏わりつくような空気がそこにあった。
何故か分からないが、一秒でも早くこの空間から出ていきたいと脳から脊椎、末梢神経まで体の隅々まで警告が響き渡っている気がする。
「なんか嫌な空気だな・・・。」
「あぁ、すぐにでもこの空間を出たいと思う。」
クルトもそんなことを言っている。
「レーアさんは何か感じる?」
先日もレーアの祖父であるアロイス氏を見つけたので、何かを感じているかもしれない。
「今のところ、空気が気持ち悪いという感じがしますが、それ以外に特にありません。」
「そう、ならどんどん進んでいこうか。」
俺はそういって進んでいった。
周りは木造の感じで、特に気になるようなものはなかった。
突き当りまで来ると、壁に何かが張り付けられていた。
【竣工1937年11月1日 ・・・】
最後の方にも何かが書き記されていたようだが、すり減っているようで解読はできなかった。
「今は20〷年だから、80年以上前に造られたのか!?」
そんなに古くからあるらしい。
「でも学校が作られたのは1960年代だったわよね?私もこの学校に赴任してきたのは最近だけど、改築されたことも一度もないって聞いているわよ?」
「それ以上前からあったってことだろ、学校ができるな。でもなんでそんなものが未だに地下にあるんだ?」
その石板のそばを俺は探索していた。
そうしていたら石板の近くから、何らかのスイッチらしきものが見つかった。
「ここにスイッチがあるんだけど、押してもいい?」
「えっちょっと見せて~。」
そう言ってウータが俺の背中に飛び乗った。
「おい!降りろ重い!」
そう言って勢いをなくして床に降りたウータはスイッチをまじまじと見ていた。
なんだか嫌な予感がする。
「ポチっとなー!!」
そう言ってスイッチを勢いよく押した。
「こらー!!もっと考えろ!」
スイッチを押したら、明りが一部点いた。
「お~明るくなったな~。」
クルトは暢気に明るくなった地下空間を見渡している。
「ひっ・・・。いやあぁぁぁぁぁ!!!」
突然聴こえてきたのは、ナターリエの絶叫だった。
「ナターリエどうした!?」
急いでナターリエのところに行った。
「むっむっ虫が・・・。」
「なんだ、虫か・・・。びっくりさせないでくれ・・・。」
そう言って俺はナターリエの近くにいた蜘蛛を追い払った。
「す、すみません~・・・。虫だけは苦手なんです・・・。」
俺は苦笑いを浮かべて尻餅をついたナターリエを起こした。
「ありがとうございます~。」
「みなさ~ん、奥に扉がありますよ~。」
モニカ先生が指さした先には威圧感があるドアがあった。
「フッフッフ、あれはあの世とこの世をつなぐドアだな・・・。」
「ウータ、もう中二病はいいから・・・。」
「そっそんな~・・・。」
シュンと縮こまったウータの方が中二病のウータよりずっとかわいらしい。
そうしてドアノブに手をかけて中に入った。
「しっ失礼しま~す。」
緊張して声が上ずってしまった。
扉の奥にはそこそこ広い書斎の様な部屋があった。
壁中に本棚があって、奥に机があった。
部屋中に無数の本が散乱していて、手入れが全くされていないということを改めて感じた。
俺は部屋に入ってすぐのところに落ちていた本を手に取った。
数ページめくってみたが、特に役に立つ情報は記されていなかった。
「う~ん。この部屋はいったいなんだ?」
クルトも頭を抱えている。
俺は床に散乱している本を踏まないように気を付けながら机に向かった。
机の右上の引き出しを開いてみると一枚の煤けた一枚の写真らしきものが出てきた。
「これは・・・。クルト、ちょっといいか?」
「うん?どれどれ・・・、えっ・・・。」
俺たちは唖然としてしまった。
その写真には、アロイス氏の家族らしき人たちが写った写真だった。
そこにはそこそこ年老いたアロイス氏とその息子の夫婦らしき人たちが写っていた。
だが、その写真の裏側に驚愕の事実が書き記されていた。
「1920年・・・?」
計算が全く合わない。
アロイス氏の孫娘であるレーアは子供のまま今この場にいるのだ。
アロイス氏と一緒に写っている人は夫婦だと裏面に記されている。
もう少し後にレーアが生まれていたとしても、計算上今では年老いた老婆か、もう亡くなっていてもおかしくはない。
「レーア、君は何歳なんだ?」
俺は恐る恐るレーアに尋ねた。
だがレーアは口を開かずに俯いてしまった。そしてだんだんと顔も青白くなっていった。
「何があったのか教えてくれ。」
クルトはそうレーアに質問したが、やはり返答はなかった。
「あなたたち、どういうことなの?」
「皆さん、これを見て下さい。」
俺はみんながいるドア付近に戻った。
皆にこの写真の表と裏を見せた。
皆の動きが固まった。
「これは、どういう事なんだ?」
俯いたままレーアが話し始めた。
「・・・私は、いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいいやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
けたたましい絶叫を後にしてレーアは姿を消した。
「なんだったんだ・・・?」
「・・・とりあえず探索を進めますか?」
クルトは冷静沈着なんだな。
俺はもう嫌だと感じてしまった。
これ以上探索を進めて何があるのだろうか。
「まぁ、レーアの謎も知りたいからね。私は行きたいわ。」
ウータは進んでいきたいらしい。
「とりあえず行きましょう。時間がありません。」
俺も謎を解き明かしたい。
この先に何の恐怖があるかも知らないが、知らずに放っておくより知った方がよっぽどましだ。
探索を進めて何があるかは知らない。
だが、何もなくても真相はそこにあるのは間違いない。
そうして全員は探索を進めた。
本の内容を全員でチェックを進めてみると、隠し扉の地図が出てきた。
その地図を部屋の真ん中にあった長机の上に置いてみんなで確認した。
みんなはすぐに理解して、その扉の場所はこの部屋を出て右斜め前にあるらしい。
すぐに部屋を出てその扉があるだろう部分を手探りで探したら、埋め込み式の取っ手があった。
その取っ手を引っ張ると、床が軋む音とともに隠し扉が開いた。
中は埃っぽく、薄暗かった。
床には一枚の手紙と思われる封筒が落ちていた。
俺はその封筒を取り、中身を確認した。
「ゲオルグ、それにはいったい何が書かれているんだ?」
うしろにいたクルトがのぞき込んでくるように俺に尋ねてくる。
「う~ん、暗くてよく見えないからさっきの書斎の明かりを使おう。」
そう言って、この部屋を去り先ほどの書斎に戻って確認することにした。
書斎に戻ってきた俺はその封筒の中に入っていた数枚の紙を長机の上に置き、みんなにわかるように音読をすることにした。
「では、読みます。1937年11月2日。このエーデルシュタイン國際学院を教育の場として設立をする。しかし、名目上は学校ということになっているが、実際は独裁政権に対抗する勢力の様々な計画をするレジスタンスの行動拠点として学校地下に地下2階に秘密基地を建設する。建設会社もレジスタンスの行動を支援するということで私と建設会社側で合意した。情報が外部に漏れることがないように、学生も学校として最低限の人数に絞ることとする。学校教育は理数系の進学校を目指す学校とする。この国の自由を取り戻すために我々は尽力することとする。・・・え~っと、他の書類には、誓約書、合意書などがありますね。」
他の書類は特に必要は無さそうなので、読まずに封筒にしまった。
しまった封筒はモニカ先生に預けた。
「それでは、他の書類は後々先生の方で確認しておくわね。」
「はい、よろしくお願いします。」
そのまま、みんなで地下から地上へ戻った。
地下の薄暗い景色とは真逆な明るい日の差す職員室へと戻ってきた。
俺は暗いところより明るいところが好きだ。
なぜなら、暗い気持ちが明るい光で光合成をするかのようにすべてが晴れ渡っていく。
そんな感じがするからだ。
後日、レーアを探したがどこにもいなかった。
レーアの自宅にも連絡したが、通じなかった。
レーアの自宅をレーアの担任が訪ねたらしいが、そこには一軒の荒廃した家が一軒あったという。
「レーアはどこに行ったんだろうな?」
「さあな。」
最初の俺たちのように教室の窓辺でそんな雑談をしていた。
雑談というわけでもないが、そんなことのように感じた。
他人事のように。
「ゲオルグ君、クルト君、至急職員室まで来てください。」
そんなことが放送スピーカーから聞こえてきた。
俺はクルトの顔を見た。
そんなクルトも俺と同じことを考えているようだ。
「失礼します。ゲオルグ・ランセルと・・・。」
「待っていたわよあなたたち!!」
俺が職員室に入るときの挨拶をしていると挨拶の途中で誰かが割って入ってきた。
しっかり挨拶をさせてくれ。
「あぁ、モニカ先生ですか。どうかしましたか?」
「ちょっと!ゲオルグ君なんか扱いが雑になってきてない!?」
扱いを雑にしたわけではないのだが、ちょっとぶっきらぼうになってしまった。
さっきのこともあるので気乗りが微妙に悪い。
「いえ、そんなことはありませんよ。それよりレーアのことですか?何かわかったんですか!?」
「それよりって・・・。まぁいいわ。そうよ、レーアのロッカーの中から一枚のプリントが見つかったのよ。ブローチの包装紙が入っていたのよ。かなり古くて破けてるけどこれよ。」
モニカ先生が差し出してくれたのは、茶色く変色していてところどころが破れている花柄が基調とされている包装紙だった。
古くなっているが当時としてはそこそこ高級なものだったのだろうと感じる。
「このブローチは?」
「無いのよ。地下室も探したんだけどどこにもね。」
「でも前に地下空間を見つけたときに、階段の一番上のところにブローチも一緒にありましたよね。」
「でもどこかに消えてしまったわ。」
しばらくの沈黙が場を包んだ。
「どうする?」
「どうしよう・・・。」
クルトも何も思いついていないらしい。
「そういえば、隠し通路を探すときに使った地図あったよね。」
なぜそれが出てくる?
「あぁ、あったな。」
「それに書かれていた情報が多すぎる気がしたんだよ。無駄にな。」
「ん?あっ、あああああああ!!!それだああああああああ!!」
そういえばそうだった!!
情報が多すぎる!!
つまり、余った情報はほかの謎を解くカギにあるということだ。
それがいまだ!!
「クルト!ナイス!!」
そして、モニカ先生に預けていた地図をもらい長机の上で眺めていた。
ウータとナターリエなども集めて話し合いを始めた。
「これって前も言っていたけど机の配置とかだよね?」
ウータは中二病が治ったようだ。
「この配置どっかで見たことがあるんだけどわからないね~。」
ナターリエはもうあきらめモードの様子を漂わせている。
「もうちょっと考えてろよ。」
「ねぇ、ここに文字がない?」
「ん?」
ウータが指さしたところには、何かが書かれている。
「文化学習室?」
そこには、薄く小さく文化学習室と書かれていた。
だが、文化学習室なんてこの学校にはない。
「文化学習室が一つのキーワードなのかな?」
「それはないでしょ。」
ナターリエはそう聞いてきたが俺はキーワードを出すパーツとしか思えない。
「文化学習といえば、文化を学習する部屋みたいな感じでしょ?」
「そうだね。」
「じゃあ、文化を学習するための資料がいるでしょ?」
「そうだね。」
「なら資料室じゃない!?」
「そうかもね。」
正しいとはあまり思えないが他に当てもないので話に乗ることにした。
資料室はこの学校の一階の端にある部屋だ。
普段使用する人がいないのであまり学校内でも知られていない。
机の配置を図のようにすると何かが起こるのだろう。
みんなで資料室に移動して机の配置を変えた。
最後の一つを運び終えるとガチャンという音とともに床の一部が開いた。
そこには埃に埋もれた緑色のブローチがあった。
それは前に見たレーアのブローチとよく似ていて、ところどころが錆びついている年代を感じさせるブローチだった。
俺が下に降りて拾い上げると、ブローチの裏側にボタンがあった。
押してみるとカチッという音とともにブローチの中が露わになった。
中にはレーアの祖父であるアロイス氏、レーア、レーアの親であろう二人の男女が移った白黒の写真があった。
写真に写っているレーアはとても幸せそうな顔をしていた。
同じく地下には誇りに埋もれて気づかなかったが一枚のプリントがあった。
穴が開いているが何が書いてあるかは分かった。
「ゲオルグ~何が書いてあるんだ~?」
ウータがのぞき込むようにして俺の持っているプリントを見てくる。
「はいはい読みますよ。我々は秘密警察に見つかってしまった。レーアは秘密警察に囚われてしまった。だがここであきらめるわけにはいかない。レーアにはすまないことをしてしまった。せめてもの償いを私はしなければならない。レーアはベルリンの収容所に囚われてしまった。本当はあってはいけないものなのだが、独裁政権は異常に強大なものだった。そんなものまでも捻じ曲げてしまった。そうしていつの間にかガス室に送り込まれてレーアは亡くなってしまった。戦争は終わりこの国は分断されてしまった。4つにな。その後ソ連側の民主共和国側、米英仏側の連邦共和国側に分断されてしまった。レーアの遺体さえも引き取ることもできずに終わってしまった。だから私は、醜い戦争を起こさないような平和主義な学校をもう一度改めて設立する。前のカモフラージュのようなものと違って、次世代に平和を残していくような教育をするのだ。・・・以上です。」
場は静まり返った。
「そういうことだったのか。この事件自体、この手紙を見てもらいたかったための事件だったのか。」
「この進学校と化してしまったこの学校に本当の平和を求めたのか。」
「だが、もう今は平和だよ。」
「そうは言えないだろ。難民受け入れによってドイツ国内の治安は悪くなっているだろ?この今だからアロイス氏やレーアは俺たちにこのメッセージをくれたんだよ。」
そういって俺たちは机を元に戻して職員室に戻った。
「このことを全校生徒に話しますか?」
「いや、不要でしょう。それより戦争と平和について考える総合的な学習を企画するのがいいと思いますよ。先代の校長アロイス氏がそう望んでいるようですからね。」
俺はクルトと一緒に校長室で話をする。
「そうですね。君たちの言う通りですね。」
「戦争について研究をしている人が大学のサークルに居ましたよね?その人を呼びましょうよ。」
クルトがそう提言すると校長先生は笑顔でその内容を受け入れた。
「そのようにしましょう。今だからこそ考えるのが大切でしょう。そういえばブローチはどうしましたか?」
「モニカ先生が色々調べてくれて、一つのお墓が見つかりました。そのお墓の前にお供えしておきました。」
校長先生は笑顔でそうですかまた行ってあげてくださいねと俺たちに伝えてくれた。
それに対して俺たちは元気にハイと答えた。
俺たちの世界はまだまだ平和とは言えない。
だが、改善できる。
平和は一人じゃ作り上げることができない。
希望する人が集えばできることなのだ。
それを思ってこれから講堂にて行われるあるものに出席をした。
いつものtetutakaです。
この物語をお読みくださりありがとうございます。
初めての短編小説です。
まぁ、賞に出したい出したい!という気持ちが強く、作ったという次第でございます。
ミステリー系は初めて書いたのでとっても出来上がりがどうか心配です。
感想を書いてもらえると私としてもうれしく、執筆意欲が上がります。
ある意味感想が食事で、体の中でエネルギーに変換されて小説ができていくといっても過言ではないでしょう。
感想が来たら嬉しすぎて叫んでいるかもしれません。
では、この辺で失礼します!
また次の機会があったらよろしくお願いします!