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クエストクリア

前回のあらすじ

外部調査ということでバレット・マルクスに同行したリュウとアルテマだったが、森の中で迷子となってしまう。迷子の原因で喧嘩する二人にゴブリン達が襲いかかり、なす術もなかったリュウだったが、その時アルテマがスキルを発動し、なんとか形勢逆転した。状況が読めないリュウに対し、「見てろ」とアルテマが言った次の瞬間、リュウには想像もできなかったことが起こる。

 「鳩が豆鉄砲を食ったよう」という表現は、今の僕の状態のことを言うのだろう。目の前の光景に脳が付いていかなかった。だって、アルテマが尋常でない速さでゴブリンたちを切り刻んだのだから(しかもそれは婉曲的なもので、実際には風によって見ることすらできない)。

 倒れているゴブリンたちの頭上からはライフゲージが消失し、その姿も消えるとともに僕の眼前には「Battle Win !」という文字と獲得経験値、ゴールドの表示が現れる。

 少し遠くにいるアルテマは、ゆっくりと体勢を戻すと、そのまま静かに剣を鞘に納めた。そして振り向くと同時にこう言った。


「な!?神速斬りできたろ!すごくね!?」


 楽しそうだ。そして嬉しそうだ。そんな様子を見ていると僕も楽しくなってくるよ。


「じゃなくて!」


 落ち着け。まずはリザルトをちゃんと見よう。


『 Battle Win !

   Exp:801

   Gold:89   』


なるほど、遭遇したゴブリンのレベルは23が二体と21、22が一体ずつだから、計算はしないとしてもそれなりの数値かな。ゲームの頃から変わってないみたいで良かった。

 さて、質問の時間だ。


「さっきの、何?」


「いやだから神速斬りだって」


「それがどういうことかわからないんだけど」


「ふむ……。じゃあ少し長い話になるから、まぁそこの木にでも座ってくれよ」


 その木さえもよくわからないんだけど、説明してくれることを願って座ることにした。アルテマも隣に座ると、腕を組んでことのいきさつを話し始める。


「えっと、さっきゴブを三体を相手してた時なんだけど……」


―――――


「せい!」


 カアン!


「くっ……!」


 これでもダメか!

 三体を同時に相手し、そのうち隙のできた個体に向けて力一杯剣を振るも、相手の持つ金属製の盾によって防がれてしまう。


「シギャアアァァ!」


「今度はこっちか!」


 ゴブリンのチームワークは伊達じゃないな。一体に集中してるとすぐやられそうだ。それに、盾を使ってどうにか防げるけど、思った以上にゴブリンって力あるんだな。

 剣と盾の攻防が繰り返され、なかなかダメージを与えられない。その上相手は三体、どうあがいてもあちらが有利だ。


「くっそおお、戦闘ってもっとカッコいいものだと思ってたのに!」


 スキルとかどうやったら打てるんだよ、これじゃあ遊びとかわりないじゃん!

 そんなことを考えつつも現状に対して打つ手もなく、少しずつ追い詰められていく。

 くそう、ゲームだったら範囲スキルでワンキルなのに!

 剣を振っても振っても本体に当たることはなく、ただ盾に当たった金属音が響く。その音が少しずつ焦りを生み出し、その焦りが敗北を予感させる。


「ああ、もうこうなったら!」


 スキルが打てないならせめて、それっぽく攻撃してみればどうにかなるだろ!という謎理論がふと頭によぎる。よく考えてみればそれは狂気以外のなにものでもないが、その時のアルテマには謎の自信があった。

 たしか、剣を構えて少し間をおいて……。そしてそれを右、左、前と連続で、振る!

 アルテマがスキルの真似をして剣を構えると、その剣先に青い光が集中し、光を纏ったそれは常人のものを超えた「神速」となって、彼を襲う三体のゴブリンに向けて振るわれた。そして次の瞬間


 ザザザアアアアン!!!


 と、ゴブリンらの後ろにあった一本の木が、根と幹を切断されて倒れた。


―――――


「というわけさ」


 アルテマの長いといいながらも想像していたよりは短かった話を聞き終え、自分が今座っている木に触れる。恐らく直径50センチメートルはあるかな。


「ふむ……」


 なるほど、大体の流れはつかめた。でも、人の身体能力を考えると


「それ、アリなの?」


「アリなんじゃない?ゲームだし」


 そうかーゲームだからかー。ゲームならしょうがないなー。


「なわけないじゃん……」


 アルテマもサラっと返すけど今すごいことになってるの分かってないよなあ……。

 ゴブリン倒すのはわかるんだけど直径50センチメートルある木を斬り倒すとかもう木こり要らないじゃん。プレイヤー化け物じゃん。そんなの喰らったらひとたまりもないじゃん。

 そもそも真似してスキルが発動できるってどういう原理でそうなるんだ……。

 

「付いていけない……」


「まあまあそんな深く考えなくていいじゃん。倒せたんだし」


「そうだけど……」


 うーん、でもアルテマの言う通りか。確かにイレギュラーではあるけどなんとか倒せたわけだし。というか結局僕はなにもしてないし……。

 呪文、打ち方を調べなきゃダメだな。戦闘時くらいコマンドで打てるだろと思った僕がバカだった。まさかそのコマンドすら出ないとは……。


「おーい!リュウ坊!」


 先程の出来事に頭を悩ませていると、遠くに人影が二人見える。よく見ると、つい先程まで一緒にいた二人だ。


「あ、バレットさんとマルクスさん!」


 そう、バレットさんとマルクスさんがついに迎えに来てくれました。




 バレットさんたちに、ゴブリンたちとの戦闘での出来事を話した。どうやら二人はあれから一度も戦闘にはならなかったようで、興味津々に聞いている。


「とまあ、こんな感じです」


「ほえー、そんなことがあったのかー!」


 バレットさんの目がキラキラしてる。それもスキルの話をしてから。バレットさんもこういうの好きなのかな?


「私たちは無事納品対象を入手できました」


 目を輝かせているバレットさんを余所に、マルクスさんがシアン色の植物を差し出してきた。クエストのターゲットである潮風草だ。


「すみません、本当は合流してからにしようと思っていたのですが、あまりに遅かったので、先に入手して探しに行こうと決めたのです。」


 マルクスさん曰く、二人なら大丈夫だろうから先に目標を達成しようと決めて、森の奥で潮風草を回収した直後、近くで大きな音がしたため、もしかしたらということで来てみたら僕たちだったということだ。なんだか本当に行き当たりばったりだなあ……。


「こちらこそすみません……」


 アルテマを連れ戻してきますと言っておきながら結局二人揃って迷子だし……。本当に申し訳ない。


「まあでも無事合流できたし、帰りますか!」


「あいさ!」


 バレットさんの言葉にアルテマが大きな返事をする。この後は何事もなく、無事にポートベルクへと引き返した。




 集会所に行ってクエストの報告を済ませてから、僕たち四人は早めの夕食をとることにした。今回の戦闘を経て、今後の予定と、戦闘スタイルを考えようというバレットさんの提案だ。

 集会所は酒場とクエストを受注する受付、そして冒険に使う回復用ポーションやダンジョンから脱出したり、街へと転移したりするためのアイテムを売っているよろず屋の三つが一つの建物内にあり、旅の準備をする際はここに寄れば十分である設備が整っている。これは基本的に大陸の中でも主要な都市しかなく、それ以外の村や街には受付しか存在しない。そのため、遠出をするときは前もって主要都市でアイテムを買い込んだりすることもある。


 酒場に着くと、テーブルはプレイヤーで一杯だった。なんとか一つ、空いていたテーブルに座ると、早速バレットさんがメニュー表を開いた。時刻は午後六時半、クエストに行ったこともあり、お腹がペコペコだ。


「さて、今日はあたしが奢るから、好きなもの頼んで良いよ。あ、あたしは酒とあとこれで」


「マスター、酒はさすがにやめた方が」


「まあまあいいじゃん、祝いなんだから」


 マルクスさんは半ば諦めたように「もう好きにしてください」というと、自分の料理を選び始めた。隣ではアルテマが既に決めきっている。僕はどうしようかな……。

 各々注文し、ウェイターがテーブルを去るとバレットさんが早くも本題に入った。


「さて、今後の予定なんだけどね。しばらく近場でそれぞれ戦闘に慣れてきたら、まずは討伐クエスト、その後に、時期を見てストーリークエストの攻略を始めようと思うんだ。だからまずは、討伐クエストに挑戦するための準備。主に位置取りとか、リュウ坊が今回苦しめられた魔法の詠唱についてとか。皆が戦えるように、入念にやらないと」


「スキルの練習とかも必要っすよね。体勢崩してても出せるようにとか」


「そりゃもう訓練だね。でもアルっちの言う通り、そういったものもやらないといけないかもだねー」


 バレットさんの話を聞いていると早くも料理が来た。バレットさんはこの街の特産品のひとつである果実を使った果実酒、マルクスさんと僕はウーロン茶(のような何か)、アルテマはこれまた特産品である果実を使ったジュースを持って、初クエストと初討伐の成功の祝杯をあげた。


 ―――魔法。コマンドがない今、どうすれば使えるのかが分からない。多分詠唱しなきゃいけないんだろうけど、その詠唱する内容が分からない。どこかの本棚に関連した書物ってないのかな……。

 料理を食べながら、バレットさんの言っていた今後のことについて考える。特に個人として一番問題なのはやはり魔法、これがなければ後衛職は話にならない。


 バレットさんなら、何かわかるかな。


「バレットさん、魔法の詠唱についての本ってこの街にありましたっけ?」


「え~?まほ~?あたしゃみこなんだからわかるわけにゃいでしよ~」


「!?」


!?


「そんにゃことより聞いて~?このあいだね~?」


「始まりましたか……」


 マルクスさんが顔に手を当てた。

 え、何が?という顔の僕とアルテマを無視してバレットさんが熱弁し出し始める。


「仲の良いフレンドの子が、あ~その子学生なんだけど~、『好きな人に告るのが怖いー!』って相談してきたから『んなもん当たって砕けろー!』って言い返してやったのよ~。そしたら丸がね~」


「マスター、それくらいにして……」


「にゃによ~!人が話してるときは口挟むなって会社でいつも教えてるでしょー!」


「だからそうではなくてですね……」


 もういいですよ、とマルクスさんが止めるのをやめたのを良いことに、バレットさんの饒舌は更に加速する。


「すみません、酒が入るといつもこうで……」


 マルクスさんがバレットさんに代わりにお詫びする。

 以前聞いたことがあるのだが、なんでもバレットさんとマルクスさんは会社の先輩後輩らしく、先輩の誘いは喜んではいと言え!というもはや強制連行的な感じで、よくバレットさんの愚痴を聞かされているのだという。

 勿論実際に見たのは初めてだが、社会人の愚痴ってこんな感じなのか……。そしてこれをいつも聞いているマルクスさん、お疲れさまです。


「ゲーム内の酒って酔うんですね」


 アルテマがジュースを飲みながら意外そうに言う。

 バレットさんの話も完全に脱線したところで、先程は聞けなかったマルクスさんたちの話を聞いていると、聞き覚えのある声が僕の名前を呼んだ。


「いた、リュウー!」


「ん……?あ、」


 なんだと思って振り向くと、そこにはアリスが両手を振っている姿が。隣にはレンもいる。


「良かったーここにいて。やっぱり酒場だったでしょ?」


「いや言ったの俺だし」


 なにか少しもめているようだが、それはいつものことなので放置で良いだろう。それより、


「わざわざ来てくれたのはありがたいんだけど、手を振って大声で叫ぶのはやめてくれない?さすがに恥ずかしい」


 酒場には人がたくさんいるんだ。それだけはやめてほしかった……。


「あ、そっか。ごめん」


 お二人は食事は済ませましたか?とマルクスさんが聞くと二人はまだと答えたので、空いていた椅子に二人も座って食事をとることにした。


「ありがとうございますって、わあ!バレットさん!?」


「むにゃむにゃ……」


「これは寝てますね、だから止めておけと……」


 アリスの隣でバレットさんが既に眠っている。少し前から静かになったと思ったら、寝ていたからか……。


 二人も注文を済ませたところで、僕は食事を続けながらアリスに聞く。


「でもよく僕の居場所が分かったね」


「ふっふーん、すごいでしょ!」


「こいつ、フレンド一覧のお前の欄に『ポートベルク』ってあったのを見て『帰ってきてるよ!』って一目散に宿を出ていきやがって。場所までは出てこないからどこだろうって聞いてくるから、時間だし酒場にでもいるんじゃないの?って俺が言ったんだが」


「うっうるさい!見つかったんだからいいじゃない!」


 アリスがテーブルをドンッと叩くと、バレットさんがビクッとして顔をあげた。が、すぐにまた寝てしまった。横をみるとアリスが少し安心した顔をしている。


「いや、だって、あんなことを聞いたら、ね……?」


 ん……?あんなこと?


「あーそうだ、飯がてら、外の様子とか教えてくれよ、こっちも得た情報がいくつかあるんだ」



 食事が粗方終わる頃に、外部調査の結果報告も終わった。当然ながら反応は……


「スキルを実際に打てるのか!うわーいいなー俺も行けば良かったー」


 うん、知ってた。バレットさんと同じ反応するだろうなと思ってた。一方のアリスは「魔法職なのに杖で殴ったの?バカなの?」って言ってくるし。魔法打てないんだよ仕方ないじゃない。


「で、アリスさんたちが得た情報というのは?」


「あ、はい。えっとですね……。今日、マルクスさんたちのように外に出た人が何パーティもいたんですが……」


 その後アリスの放った言葉に、バレットさんを除く三人が衝撃を受ける。


「その人たちが言うには、死んだプレイヤーが復活しなかったそうなんです」

本当はもう少し書きたかったのですが字数と根気的に無理だったので今回はここまでです。そしてテンプレのような終わり方なのは言わないでください。

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