片目男と職員室の謎
どうしてこうなった
「うー先輩。やっぱり帰ります?」
でた、こういうやつの特徴として挙げられる自分が言いだして自分からやめたがる。
「だから最初からそう言ってるだろうが。帰るぞ。」
「はーい。」
「ん?お前扉閉めたか?」
「いえ?私全開にしておきましたよ。」
「いや、まさかな・・・」
はい。閉まってる、よくある謎の力のやつだ。
「先輩ー?」
「どうやら本当にめんどくさいことになったようだ。」
閉まっている事を伝える。
「えぇーっ!?どうするんですか!出られないじゃないですか!」
「そこらへんの窓割って出ればいいだろ、廃校だし。」
なぜかそこにあった消火器で窓に殴りかかる。
ガン 鈍い音を立てて跳ね返されたのだった。お約束ってやつだ。
よし切り替えよう。こういうのは何かしらのイベントをこなせば勝手に開くもんだと思うし。
「さー、散策するぞー気持ち切り替えろー」
「切り替わりませんよ!なんですかそのふんわりとした言葉!」
「そんなこと言っても開かねえもんは開かねえって。」
そう言って俺は、喜羽の手をつかんで半ば強引に探索を始めるのだった。
「とは言ったものの、なーんにもありませんねえ?」
「お前は探索というものを分かっていない。もっと机一つ一つを細かく調べてだな・・・」
「でも変じゃないですか?」
「何がだ?」
「廃校のはずなのにこんなにきっちりと机並べられてて、私いまそれが一番気味悪いです。」
あまりに平然と配置されていて忘れていたが、ここは廃校なんだよな。机なんてまず全部出されるよな・・・いや深く考えるのはやめておこう。
「そのうちわかるだろ。多分。」
「えー、多分で片づけないでくださいよ。」
そんな会話をしていると、机の中を捜している俺の手に何かが触れた。
「職員室の鍵か。」
「おーっ、発見ですか何か?」
「職員室だ。行くぞ。」
さっきまで3Fの階段上がってすぐの教室にいた俺たちは、階段をおりていた。
「こーいう階段って登りと下りで階段の数がちがう。とか昔よく言ってましたよね。」
「普通にありえそうだからやめろ。」
「はっはっはー、冗談ですって。」
そんな戯言を話していると一階についた。
「さぁ、職員室は何処かな。」
「あっ、あそこですね。」
指さした方を見ると、そこには職員室と書いた看板が上から降ろされていた。よく見たやつだ。
「おいおい・・・」
なんでそんなもん掛かってるんだよ。廃校だぞこの感じまるで――
「まるで学校をやってた当時そのままって感じですよね。」
明日になれば生徒が登校してくる。そんな気がするレベルである。
「気味悪いな。」
心の底からの一言だった。
「でも、進むしかないんですよね。」
「あぁ・・・」
喜羽にどこか励まされつつ俺たちは職員室のドアに鍵を刺す。
ぞぞぞっと来る今日一番の寒気。背中をねっとりと撫でてくるというたとえが一番合いそうだ。
その寒気で震える手を押さえながら、鍵を回しドアを開ける。
「――――ッ!!?」
職員室の中は血にまみれていた。完全に乾いたのであろう赤黒い点がそこら中に広がり、その一つ一つが悪臭を放っている。
「うぇ・・・」
俺はこみあげてくる吐き気を無理やり抑えこみ、少し離れたところで吐き出した。
それから間もなく喜羽も、吐いた。目には涙を浮かべ、嗚咽を漏らした。
「先輩、私今本当に後悔してます。なんでこんなところに遊び半分な気持ちで来ちゃったんだろうって。」
「後悔してる時間があったら、少しでも進むことを考えろ。」
「それって冷たいんじゃないですか?」
「俺はそうやって生きてきた。これからもそうだ。」
辺りに沈黙が訪れた。
「落ち着くまでここにいろ。」
「先輩はもう動くんですか?」
「職員室を調べてくる。」
「あんなところに行く必要なんてないですよきっと。」
「さっきも言ったはずだ、少しでも進むことを俺はやりたい。」
俺だって、好き好んであんなところ入りたくはない。だが、あそこまで無残なことが行われた場所なら何かしら脱出のヒントがあるだろう。なかったとしてもその時はその時だ。
口にハンカチを当てながら職員室の探索を始める。
入ってみて最初にわかったことは、死体はそのままであることだった。首を斬られた者、腹に包丁が刺さったままの者、言葉にするのが難しいようなグロテスクな死に様の者など数えただけで5体はいるようだ。
そして、その死体に共通していることは右目がくりぬかれているという事だった。犯人の趣味?誰かが持ち去った?いろいろ考えだけが先走るのを抑えながら探索をつづけた。
「なんだこれ?」
血が付着し、赤黒くなっているがレンズのようだ。レンズを見ていると、喜羽の悲鳴が校内に響いた。俺はポッケにしまい込み走り出す。
悲鳴が聞こえたほうに、走っていくと男子学生のような服装をした奴が喜羽に襲い掛かっている。
助けなければ。もう体は動いている。その男の肩をつかみこちらを向かせる、そして右ストレートを頬に打ち込む。それだけで、その生徒は逃げて行ったのだった。
「先輩ー怖かったよぉぉ」
泣きじゃくる喜羽を俺はなだめた。とりあえずここは危険そうだ。元の場所に戻ろう。
「あの男、左目がなかったんですよ。それも合わさってもー怖いのなんのって。」
「左目?右目じゃなくてか?」
「?左目であってます。流石に私も左右ぐらいわかりますからもー」
「あとずっと 瞳がーとか目がーみたいなことをぼそぼそ言ってました。」
目かこれは一つの大きなキーだろう。くりぬかれていた右目とあいつのなかった左目、まだ何か足りないものがある気がする。
この考えはあっていると思う、がどうなのだろうか?
今はまだこれから出会う少女と、『目』に関する謎にたどり着いていない事を知らない。