第一話
赤や金色、極彩色の錦を纏った竜田姫が江戸の街に別れを告げる頃、寒風と煌めく粉雪を従えた冬将軍が足早に北からその姿を現す。
白く変わる吐息、『冷えますね』そんな言葉が人々の口から頻繁に生まれる季節となった。
あちこちで冬支度に終われる人の姿が目立ち始める今日この頃、八丁堀に居を構える北町奉行所与力組頭、桐野 数馬の邸宅でも、二人の使用人が毎日忙しく動き回っている……はずだった。
しかしどうだろう、独楽鼠の如く料理に掃除にと働いているのは、動かぬ左腕を三角巾で吊った志狼のみ、その妻である海華の姿はどこにもない。
けして怠けている訳でも、ましてや亭主に愛想を尽かし出て行った訳でもない。
普段は煩いくらいに活発な海華だが、今は離れに敷かれた布団へ青い顔をして横たわっているのだ。
「おい、入るぞ。―― 具合はどうだ? 何か食えるか?」
屋敷内の掃除を追え、冷たい水で真っ赤に染まった手を腰から下げた手拭いで拭きながら、志狼はゆっくりと部屋の障子を開ける。
彼の呼び掛けに答えるよう、ノロノロと緩慢な動作で布団から身を起こした海華は、艶のない、生気の抜けてしまった顔を志狼へと向けた。
「手間掛けさせてごめんなさい……。 大丈夫なんだけど、まだ気持ちが悪くて。――何も食べたくないの」
「なにが大丈夫だ。お前、一昨日の夜から何も食ってないだろ? …… やっぱり医者に診てもらえ」
敷かれっぱなしの布団の横に胡座をかき、諭すように言う志狼へ、海華は気のない返事を返す。
彼女が体調に異変を感じたのは、もう一月ほど前からだ。
どうも身体が怠く微熱が続く。
次第に食欲もなくなり、一昨日ついに夕食を食べてすぐ激しく嘔吐したのだ。
それからは飯の匂いを嗅いだだけでも吐き気に襲われ、ほとんど何も食べられない。
最初は風邪でも引いたのだろうと軽く考えていたのだが、どうもいつもの風邪とは様子が違う。
「悪い病だったら大事だぜ? 旦那様も心配なさってた、もしお前さえ良ければ今からでも……」
「うん……。行きたいんだけど、何だか目眩がするの。途中で倒れても困るし……」
「そうか、それなら明日にするか。とにかく、今日一日ゆっくり休め」
そう言い残し、腰を上げようとした志狼の袖口を横から延びた海華の手が軽く掴む。
その場に引き留められる形となり、志狼は不思議そうな面持ちで彼女へと振り向いた。
「どうした? なにか欲しい物でもあるのか?」
「うぅん、そうじゃなくて……。あたしの事、心配してくれるのって旦那様だけ?」
突拍子もない質問に志狼はその場に固まり目を瞬かせる。
そんな彼の様子に、海華はわずかに眉を潜めて見せた。
「志狼さんは? あたしの事、心配してくれないの?」
不服そうに頬を膨らます海華を見下ろし、一瞬きょとんとした顔を見せた志狼だったが、すぐに呆れたような溜め息をつき、バリバリと頭を掻く。
「何を馬鹿な事言ってんだ。俺はお前の亭主だぜ? 心配してるに決まってんだろ。おかしな事考えてねぇで、しっかり休めよ?」
「うん、わかった」
どこかつっけんどんにも聞こえる志狼の台詞だが、海華は嬉しそうに顔を綻ばせ、再び布団へ横たわる。
「夕飯は食えるだろう? 何が食いたい?」
「えっと……大根を炊いたのがいいな」
『わかった』と短い返事と小さな微笑みを残し、志狼は部屋を後にする。
部屋に置かれた一つの火鉢、真っ赤に燃える炭が、パチパチと微かな火の粉を飛び散らせる。
次第に遠ざかっていく足音を聞きながら、海華は静かに瞼を閉じた。
「志狼、海華の具合はどうだ?」
飴色に炊かれた大根に箸を入れ、桐野が静かに訪ねる。
『まだ本調子ではないようです』そう答え、湯気の立つ味噌汁茶碗を膳へ置いた志狼の視線は無意識のうちに障子へと向けられた。
その日の夜、夕餉の席についたのは、この屋敷の主である桐野と志狼の二人のみだ。
桐野の前で嘔吐しては申し訳ないと、海華は一人離れで食事をすると言って譲らなかったからだ。
今日のおかずは海華が食べたいと言っていた 大根の煮付け、さすがにそれでは足らぬゆえ、魚を焼いて和え物の小鉢を付けた。
香のものは、昼間に出しておいた茄子の漬け物だ。
粥を炊き、出来るだけ食べやすい物を揃えて離れへ運んだが、はたして海華は食べられているだろうか?
ただそれだけを案じる志狼の食は全くと言っていいほど進まず、もう湯気も立たなくなった味噌汁は口も付けられていない。
「これ以上酷くならぬうち、早めに医者へ連れて行くのだぞ?」
「はい、実は明日にでも……」
『小石川に連れて行こうと思います』
その台詞が志狼の唇から生まれようとした、その瞬間だった。 ガチャン! と瀬戸物が割れる甲高い耳障りな音と共に手荒く障子が叩き開けられる響きが谺す。
「何だ!?」
「離れの方から……まさか、海華っ!」
只ならぬ気配に表情を強張らせ、慌てて離れへと走る二人。
廊下を踏み鳴らす地響きにも似た音が、星屑瞬く夜空へ上る。
桐野の先を行く志狼が自室に通じる襖を力一杯開け放った志狼の目の前に広がっていたのは、無惨に引っくり返った茶碗やお膳、そして半分ほど開けられたままの障子だった。
敷きっぱなしの布団の近くにぶちまけられた 粥、きれいに引っくり返った中鉢の下からは、透明な大根の煮汁が畳へ染み出している。
壁際まで飛んだ箸、それを持っていただろう海華の姿はどこにもなかった。
「海華……? 海華はどこだ!?」
惨憺たる部屋の有り様を見て、桐野も顔色を変える。
その叫びに答える余裕すらない志狼は、血相を変えたまま開け放たれた障子の向こう、暗い夜が口を開ける外へと飛び出した。
「海華……! おい……! おい海華っ! 海華どうしたっ!」
悲鳴に近い叫びを張り上げ、志狼は裸足のまま縁側から飛び降りる。
縁側から少しばかり離れた場所、ちょうど裏庭との境目に、猫のように背中を丸めた海華が踞っていたのだ。
飛び付くように側へ駆け寄り、その身体を抱き起こせば、海華は目に一杯涙を溜め苦しげにえずいていた。
口許を覆う手はワナワナ震え、顔色は紙のように真っ白だ。
何があったのかも言うことができず、ただ咳き込み震える海華を、後ろから駆け寄ってきた桐野が志狼の腕から受け取り、軽々と抱き上げる。
泥と胃液で汚れた海華の手が、力なく垂れた。
「志狼、医者を呼べ。木戸はまだ閉まってはおらぬ。早く医者を呼んでこいっ!」
いつもの桐野とは明らかに違う、ひどく狼狽し、そして焦りを隠せないまま『医者を呼べ』と叫ぶ彼に圧倒されながらも、志狼はその場から脱兎の如くに駆け出す。
虚ろな光を宿す海華の瞳から、玉の涙が一粒桐野の着流しへと転がり落ちた。
この世の黒を凝縮したような漆黒の夜空に金粉にも似た星屑が煌めく。
木戸が閉まるにはまだ早い、小石川まで息を切らせ、走りには走ってようやく辿り着いた志狼から海華が倒れたとの一報を受けたのは、この療養所の医師である清蘭の妻、お藤だった。
一体何事があったのか、そう問い掛ける間も無く青い顔をした志狼から海華の容態を聞いた清蘭は、これはただ事ではないと思ったのであろう、直ぐ様妻であるお藤を伴いま桐野宅へと駆け付ける。
三人が屋敷へ着くと、海華は桐野によって汚れた離れではなく母屋にある客間へ布団を敷いて寝かされており、顔色は未だ悪いものの、意識もはっきりしているようだ。
とにかく診察をしなければ何もわからない、桐野と志狼は部屋から出され、清蘭とお藤が障子の向こうへ消えてから、もうかなりの時が過ぎていた。
何か悪い病なのか、海華はこれからどうなるのか……。
不安だけが廊下で待つ二人の心で成長し、胃袋がキリキリ痛み出す。
刹那が永遠にも感じるほどの長い長い時間が過ぎた頃、障子に一つの影が浮かび上がり、すぐに紙一枚隔てた向こうから胡麻塩の髪を結い束ねた清蘭とお藤が揃って姿を表した。
「先生……! 海華は? あいつの具合はどうなんですか?」
桐野よりも早く、志狼は白衣を身に纏う清蘭へと詰め寄る。
真剣そのもの、その中にも一抹の不安を混ぜた表情を見せる志狼と、深刻そうに顔をしかめる桐野を交互に見遣った後、清蘭はお藤と顔を見合わせた。
「海華さんは大丈夫、命には別状ありません。ただ……今回だけは、私の手には負えないようです」
『手には負えない』その言葉が鼓膜を打った刹那、志狼は棍棒で頭を強か殴られたような衝撃を受け、その後ろに立つ桐野は返す言葉を失い唇を噛み締める。
今にも卒倒しそうな志狼を前にして、清蘭は平然と話しを続けた。
「突然の事でしたね、さぞ驚かれたでしょう。申し訳ありませんが、治療法はありません。出せるお薬も限られています。後は時間が解決して……おや? 桐野様大丈夫ですか?」
頭を抱え、柱に寄りかかる桐野を気遣う清蘭。
そんな彼の横でお藤はなぜか苦笑いを浮かべる。
しかし、絶望のどん底に叩き落とされた二人はそれに気付く余裕など持ち合わせていなかった。
「これからどうするか、それは海華さんとよくご相談されて下さい。お藤、お前も相談に乗ってあげなさい。海華さんもお前なら話しやすいだろうからね」
『はい』そう控えめな声で答え、小さく頷いたお藤は、がっくり肩を落とす志狼と桐野へ向かい、この場に満ちる陰惨な雰囲気にはそぐわない花が綻ぶような笑顔を見せた。
「勿論ですわ。でも、これから海華さんに必要なのは、医者ではなくて産婆でしょうね」
薄く紅を塗った唇からでた台詞に、桐野は伏せていた顔を跳ね上げ、志狼は張り裂けんばかりに目を見開き、唇を戦慄かせる。
「さん、ば……? 」
「はい。お腹が大きくなるまで確かな事は言えませんけれど、海華さんの話からすれば……」
『おめでとうございます』そう言いながら頭を下げるお藤。
怒濤のごとき急展開の連続に、もう志狼は頭が回らず、お藤の言っている事すら理解できない。
茫然とした様子でその場に立ち尽くす志狼。
『子ができたのだ!』喜びに顔を紅潮させ、そう叫んだ桐野が志狼の肩を力一杯叩く。
ドン!と、骨を震わせ身体を突き抜ける衝撃。
痺れる思考の中で、じわりと熱い何かが志狼の胸一杯に広がった。
『しばらくは安静に、少しずつでも食事は摂らせるようにして下さい』 そう言い残し、更に吐き気止めの薬を置いて清蘭とお藤は帰路についた。
二人を表門まで見送った志狼は、ふぅ、と小さな溜め息をつき、ぼんやりと夜空を見上げる。
『子ができたのだ』桐野の言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡った。
―― 海華の腹に子供がいる。 ――
急にそう言われても、未だ実感がわかないのが正直なところだ。
自分の子であることは間違いない。
身に覚えがないとも言わない。
十月十日もすれば、この屋敷に新しい家族が増える。
こんな自分が、父親になってもいいのか? 数々の人を殺めたこの手で、生まれてくる無垢な命を抱いてもいいのか?
人の親になることが許されるのだろうか……?
『嬉しい』より先に『不安』が先立つのはなぜだろう?
どんな顔をして海華に会えばよいのか。
どんな言葉をかければいいのか、志狼には全くわからなかった。
「志狼! 志狼! 何をしている?」
不意に背後から飛んだ桐野の声に、宙をさ迷っていた意識が急速に覚醒する。
慌てて踵を返してみれば、自分を不思議そうに眺めている桐野と視線がかち合った。
「どうしたのだ? そのようなところで」
「申し訳ありません、少し、考え事を……」
しどろもどろになりながら頭を下げる志狼に無言のまま何度か頷いた後、二、三歩こちらへ近付いてきた桐野は、先程より優しく志狼の肩をポンと叩く。
「志狼、よかったな。これほどめでたいことはない」
「はい……」
「海華も、勿論お前もこれからが一番大事な時だ。―― さ、早く海華のところへ行ってやれ」
軽く背中を押され、照れ臭そうな笑みを浮かべて会釈した志狼は、そのまま海華がいる客間へと向かう。
未だ整理のつかぬ気持ち。
足の裏から伝わる廊下の冷たさが、じわりと全身を侵食していった。
客間の障子の前で一度足を止め、無意識に息を整えて、静かにそこを引き開ける。
行灯一つが照らし出す室内、真っ赤に爆ぜる火鉢の炭、鮮やかな夕日の色が網膜に焼き付く。
来客用の少々高級な布団の上に身を起こした海華が、青白い顔をこちらへ向けた。
「…… 具合、どうだ?」
「うん、もう大丈夫」
穏やかな笑顔を見せる彼女の傍に腰を下ろした志狼だが、真っ正面からその顔を見ることができない。 気恥ずかしさと戸惑いが、今の彼を支配しているのだ。
「迷惑掛けてごめんなさい。旦那様、怒ってなかった?」
「怒ってなんかいない。逆に、喜んでた」
どこかぶっきらぼうにも聞こえる台詞にも海華は口許を綻ばせ、掛布の上に出していた手をきゅっと握る。
そして、その澄んだ瞳が志狼を映し出した。
「先生から、お話し聞いたんでしょう?」
静かに響く彼女の声に、志狼は無言で頷く。
「志狼さん……。産んでも、いい?」
じっとこちらを見詰める海華の唇が紡ぎ出した問い掛けに、志狼の視界がグラリと揺らぐ。
勢いよく跳ね上げた顔。
この部屋に来て始めて真正面から見た海華の顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいた。
「どう、して……そんな事聞くんだ?」
口内で縺れる舌を何とか動かす志狼の声が、ひどく震える。
『だって』そう小さく呟いて、海華は指の関節が白く変わるほど強く手を握りしめた。
「だって……志狼さん、全然嬉しそうじゃないんだもの……。子供が嫌いなら、そう言って? あたし……」
だんだんと尻すぼみになる台詞。
顔を俯かせ、それっきり口を閉ざしてしまう海華の手を取り、その身体を強く引き寄せれば彼女はなんの抵抗もなく志狼の胸へ納まった。
「違うんだ、そうじゃねぇ! 嬉しくない訳じゃねぇ、ただ……戸惑ったんだ。いきなり、だったから……お前に、何て言ったらいいのか、わからなかったんだ」
右手で強く抱き締められ、互いの肌から伝わる熱が一つに溶けていく。
やんわりと抱擁を解いた海華は、潤んだ瞳で志狼を見詰めた。
「なら、産んでもいいのね? 」
「当たり前だ。元気な子を産んでくれ。ところで……」
少しばかり間を置いて、志狼はどこか困ったようにこめかみを掻く。
「子供、男か? 女か? 名前も考えねぇといけねぇし、着物やら何やらの用意も……」
色々と準備が必要だ、そう真剣に悩む志狼を目の前に、海華は呆気に取られた様子でポカンと口を開けた。
が、すぐにプッ! と小さく噴き出し、笑いを堪えるように両手で口を覆ってしまう。
「志狼さん、それは……産まれてみないとわからないわ」
「あ、そうか……」
はっ、と我に返り、照れ臭そうに頭を掻く志狼を前に、海華は目尻に涙を浮かべて笑い転げる。
「そっ……そんなに笑うことねぇじゃねぇか」
「だって、志狼さんがそんなこと言うなんて思わなかったから、おかしくって……」
アハハハッ! と朗らかな笑い声をあげる海華をまるで照れ隠しのように今一度強く抱き締めた志狼は、その小さな耳朶へ唇を寄せた。
「俺、頑張るからな。お前と子供に不自由な生活なんざ、絶対にさせねぇ。今までよりももっと、頑張るからな」
「ありがとう……。あたしも頑張る。これからは、志狼さんや、旦那様やお腹の赤ちゃんが、毎日楽しく生活できるように、頑張るわ。 先ずは、元気な赤ちゃん産むわね」
志狼の肩口に額を寄せて、そう口にする海華は今幸せの絶頂だ。
ふわふわと暖かな気持ちに包まれる二人の中に、もう迷いはない。
「朱王さんや修一郎様にも知らせないとな」
「そうね。修一郎様、きっと大騒ぎよ。兄様は……どんな顔するかしらね?」
驚くか、喜ぶか、戸惑うか……。
いずれにしても、腹が大きくなる前に知らせなければならない。
「明日、飯の支度の時に話してみようと思っていたが、それでいいか? お前が自分で話してぇなら、俺は黙っておくぜ?」
「ううん、志狼さんが話して。あたし、なんだか気恥ずかしくって」
『わかった』そう小さく答えて海華の背中を軽く叩き身を離す志狼。
その日、彼は桐野の許可を得て特別に客間へ布団を敷き、海華と枕を並べたのだ。
翌日、太陽も東へ傾きかけた頃、右手に四角い風呂敷包みを下げた志狼が長い影法師を引き連れて、中西長屋の長屋門を潜り抜ける。
義兄である朱王の元へ、いつも通り夕餉のおかずを運んできた彼だが、その足取りはいつもより軽い。
無意識に鼻唄まで唄いつつ部屋へ向かう彼の視界に、この長屋の住人であるでっぷり太った中年女が、自らの分厚い半纏の中に赤ん坊を包みあやす姿が飛び込んでくる。
大きな胸に抱かれ、眠たげに欠伸を連発する小さな小さな赤ん坊を目にした志狼の頬が微かに緩む。
近いうち、自分もあのような光景を毎日目にすることだろう。
志狼の姿を見て、笑顔で軽く会釈した女だったが、土煙を巻き上げ吹き抜ける寒風から赤ん坊を守るように、部屋へと引っ込んでしまう。
これからますます寒さは増す。
海華の布団も、綿を継ぎ足す必要があるだろう。
そんな事を思いながら部屋の戸口へ手を掛けた志狼、『邪魔するぜ』そう中へいるだろう朱王へ向かい声を掛けた彼に、返る返事はない。
薄暗い室内に響く、木を削る微かな響きと鼻をつく顔料の臭い。
作業机があるだろう場所で蠢く黒い影へ向かい、志狼はもう一度、『邪魔するぜ』と声を掛けた。




