勇者になった?
「次の方、どうぞ」
兵士によって、装飾の施された扉が開かれる。
その先へと進んで行くと、豪勢な椅子に腰掛けた老人が見える。恐らくこの人が国王様なのだろうと、アオイは理解した。
初めての面接と言うこともあってか、アオイは緊張していた。コンビニで言うところの店長と面接をしているのではなく、そのコンビニを束ねている社長といきなり面接している様なものであり、バイトの面接と言うより就職活動の最終面接の様相をしていた。
「では、君には勇者になる覚悟はあるかね?」
国王は、その言葉を意味深長に述べた。勇者になると言うことの、責任や重圧、それら全部をひっくるめた上での勇者としての覚悟を問われている様に、アオイには感じらていた。
しかし、勇者になる為に此処へ来たアオイは首を横に振るはずも無かった。
「はいっ!」
大声で、自分の覚悟の旨を全て込めた返事をした。
「ならば良かろう、勇者給付金を手に装備を整え、魔王退治へと向かうが良い」
国王がそう述べると、家臣から麻袋に入れられた金貨と勇者免許状を渡され、次の面接者が来るからとそのまま追い返された。
「これで、私勇者になったの?」
アオイは不安そうに首を傾げる。まあいいかと、麻袋の中を覗くと、金色に輝く貨幣がぎっしりと詰められていた。
「おお、これが働かないお金。もう一回、並んじゃおうかな……」
アオイは、列の最後尾の方を見遣ると、看板が遥か彼方に見え、それを確認すると、さすがにもう一度並ぶ気にはなれなかった。
「やっぱ、やめよう……」
そして、そのままその場を後にした