空っぽのお城
「じゃあ、私は勇者になれる可能性があるんですね!」
「大丈夫よ、きっと。だって――」
お姉さんは、アオイを抱きしめる。
「こんなに可愛いんだから」
アオイは、お姉さんの豊満な体で息が出来なくなり、溺れそうになった。
「うわっ。く、苦しいです」
「あらあら、ごめんなさい」
うふふ、とお姉さんは笑みを溢す。
「きっと、可愛いは世界を救うわ。頑張ってね」
最後にお姉さんはウインクを一つ飛ばし、列に向き直った。
それから、待つこと五時間。
後方を振り返って見ると、アオイがこちらの世界に召喚されてから手にしていた看板は、既に遥か彼方まで渡っていた。その光景は、時間がどれだけ立ったのかを物語っていた。
しかし、順番も時間と共に進み、城の城門が目の前に来るまでになっていた。
「では、次の方。中へお入りください」
「はい!」
門兵の声で、城門をくぐる。
「これが、お城かあ」
アオイは、周囲を見渡す。確かに、城内は広々としているが、ロールプレイングゲームに出て来るような、そんな城に相応しい装飾や家具は一切見当たらず、伽藍堂としていた。
「なんか、思ってたのと違う」
そこには、何も無いがあった。