不労所得
これだけの大行列だと言うことは、勇者になる為の倍率は相当高いと言うことを意味していた。その様子に呆気に取られたアオイは、自分が本当に勇者になれるのか、少しばかし不安になっていた。
あまりに挙動が不審だったアオイへ、前に並んでいたお姉さんが心配になったのか、声を掛ける。
「大丈夫?」
「私、こんなに勇者志望の人がいるとは思わなくて」
すると、お姉さんは少々驚いた表情を見せる。
「あら、あなた勇者志望なの?」
「はい!」
アオイは、元気良くそう返事する。
「それなら、大丈夫だと思うわよ」
お姉さんは微笑みながらアオイにそう言う。
「どうしてですか?」
「だって、この行列には本気で勇者になろうとしている人なんていないもの」
その回答に、アオイは首を傾げた。
「どうしてですか?」
「あら、知らないで並んでいたの? 今日、国王様が勇者になるって言った人には、勇者としての生活を保護する為の給付金を出すって言ったのよ。だから、上辺だけでも勇者になりますって言って、その給付金を貰おうって腹なわけ」
お姉さんの懇切丁寧な説明を聞いても、アオイには良く分からなかった。
「要するに、働かなくてもお金が貰えるのよ」
「おおーッ!」
その説明なら、アオイにも理解が出来た。