アオイ召喚
「では、この電話番号はこちらの世界外からの通話となりますので、こちらの世界へと召喚する為の手続きを行いたいと思います。私に続けて、呪文を唱えて下さい」
ロールプレイングゲームが好きなアオイにとって、ただの復活の呪文程度にしか考えていなかった。そもそも、そんな呪文を言うこと自体が可笑しいと言うことにまで、頭が回っていなかった。
「はい、分かりました」
「では、ぁwせdrftgyふじこlp」
アオイは、ポカンとしていた。
聞き慣れない言葉の羅列が右耳から左耳へと受け流されて行ったからだ。
「あの、もう一回良いですか?」
「すいません、聞き取りにくかったですか? では、もう一度言いますね」
アオイは、その声に耳を澄ます。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「くぁすぇdfrtgひゅjきおlp」
もう一度、聞いても良く分からなかったアオイは、流石にまた聞き直すのは失礼かと思い、雰囲気でいい加減に言ってみると、体が忽ち光に包まれ――そして、次の瞬間そこは見知らぬ世界で、謎の大行列に並んでいた。
「じゃあ、この看板をお願いします」
「えっ、あっ、はい。分かりました」
前の人から渡されたその看板には、勇者最後尾と一言書かれている。少しばかしの沈黙の後、アオイはこの行列の正体に気が付いた。
「これ、全員勇者志望~っ!?」
その声は、天高く響き渡った。