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endless Drama  作者:
1/1

迷宮の始まり

「ヒギィッ....!?」

呻き声が建物内のコンクリートに染み渡ってこだまする。

冷たい空気のくせに湿度が異様に高い。死を予感させるような気味の悪い空気に、足下に唾を吐き捨てる。

「悪いな、これも金の為なんだ。許してやってくれ」

感情を消していく。感情、そんなものに頼っていたらきっとこの仕事は出来ない。

脚に力を籠める。歩き出した俺の顔つきはどんなものだったのだろうか。

「もう.....しないから.....命だけは.....!!!!」

全く呆れた。

こうだから人間はなによりも気色悪い。

ゴロゴロ表情を変えて、怒り、泣き、笑い、喜ぶ。

いつからか、こんないらない能力を携えて進化してきたのだろう。

まあ俺もその人間なのだが。

「済まないな、もう手遅れだ」


そろそろ終えてしまおう。

長引けば、俺もやりにくくなる。


そっと左手を前に出して、握る______

人間にとってはなんでもない事でも、俺なた地を揺らすことだって出来てしまう。


豪炎が舞う。

湿気がなくなり、むせ返る乾き。

相手はもう、死んでいるようにも見えた。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


相手の腕が根元から焼ききれ、ぼとぼとと落ちれば、内臓を焼いたような発酵させたような悪臭がし、目と鼻が痛む。


_____死んだ。


消えた炎と肉片から生まれた粕が空間を包んだ。

もうここには俺1人であった。


「......帰るか」


こういう特殊な《仕事》は、ある程度のメンタルの強さが求められる。

俺は感情を消して、こうやって淡々とこなしているが、傍から見れば、非道の極みである。それは俺も重々承知している。


いつからこうなってしまった?もう記憶すらない、遠い昔の話になってしまいそうだ。

現に俺には5年から前の記憶がない。5年前から俺はこの《仕事》をしていた。親も居なかった。


そして、既に魔術も使えていた。


帰路に着いて、俺は生きているのかと自らに訊ねた。

応えの代わりに心臓の鼓動がそれを教えてくれる。


こんな事をしている俺は、果たしてこの世界に必要なのか。

戦闘時には無感情なものの、普段は普通の人間と変わらない。それが酷く俺を痛めつける。


もう、死んでしまいたい_____


また一つ、心に黒い塵が溜まった。



2


「昨日はいい働きだったわね、ユーキ」

白衣姿の巨乳美人が振り返りウインクを投げかける。

「辞めろミリア.....今俺は眠いんだ、話し掛けないでくれ」

「あら?申しわけないけど、それは無理ね。こっちにも事情があるの」

書類をベラベラ捲りながらコーヒーをすする彼女は、結構本気で大変そうだ。


「て言うか、イフリート使うのは良いんだけど、あんな豪炎じゃなくて良いのよ、巻き付けるくらいで良いのに」

「次から気をつける」

「もう....」

こう言っていても、ミリアは本当は優しい。ずっと《仕事》に携わってきた俺からすれば唯一の心の支えだ。

「.....って、活動報告意外にも用事はあるのよ。だからわざわざ研究室に呼んだの」

意外にもミリアは、大学の准教授だったりする。そして大学の生徒同志達と、この大学内の研究室で細胞やらなんやらの研究をしているというから、この巨乳のビッチそうな女性も侮れないという事だ。

「で、何だ。他の用事って」

大た次の指令があるとしても、それはたいていミリアじゃなく、もっと上の奴から連絡が入ったりするのだが。

「それがね....」

と言って、モニターを俺に見せる。

「知ってるでしょ。連続ビル火災事件」

一昨日のニュースの画像、昨日の新聞の一面の画像、そして今日のトップニュース。

「ああ、知ってる」

「なら話は早いわね。実はこの事件、魔術関連の事件かも知れないのよ」


そうなのか、と俺は帰ろうとする。

「待って!!何で逃げるのよ!!!!」

「別にそんなつもりは無いが」


絶対に俺に何か面倒くさい事を頼む気だろう.....

なんとなく予感した。

「貴方しか居ないのよ!!!!」


....まあ内容によっては承諾しない事もない。

「えっと、では、発表しましょうか」

ミリアはこほんと咳払いをした。

「貴方には、E島の連続火災事件について調査してもらいます。尚、それに当たってユーキにはE島に在住してもらうわ」


....

「拒否する」

「あら駄目よ、もう引越し手続き済ませちゃったんだもの」


こいつは何なんだ.....壊滅的に嫌いになりそうだ....


「そして!」

まだあるのか、この巨乳ビッチ。

「貴方16歳でしょ?だから指令以外プータローって訳にもいかないのよね」

「ミリア一体何____」

「なのでついでに、引っ越す住居近辺の学校に通わせます」

「____」

口があんぐり開いて、俺は唖然とした。


怒りをすぎれば呆れの感情が襲ってきた。


「.....もう勝手にしろ」

元々事を荒立てる事は好きではない。それに、学校に通えったって、サボってしまえばいい話だ。

今回の指令には全く必要のない行為だしな。


「やったー!ありがとう!!」

後で報酬をがっぽり頂こうと企みつつ、俺は何も疑問に思わず研究室を後にした。


詳しい事は向こうがやってくれる。


本当にそれだけだった。

俺は馬鹿だ。


この時点で陥れられているという事実も知らずに______


螺旋の迷宮へ


俺を誘う


________。

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