与えられる答え
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あれから、一週間が経った。
高校デビュー初日にあんな始まり方だっただけに今後どうなるかと思っていたが、アレ以降は順風満帆、気心しれた友人も出来、勉強にも慣れてきていた。
そんな中の、仲の良い奴らとの昼休みのことだ。
中でも最も仲が良い城阪が、軽い話題提供のような感じで、呟いた。
「そいえば、宇都宮美淩って2年生知ってるか?」
暫し考え込み、記憶を辿る。
勿論、俺は入学式の件があったから、あの日の彼女の謎の行動を思い出すことになる。
すでに痛みは引いているのに、叩かれた頬が未だ感覚を覚えている。
それに、この一週間、彼女の謎行動が気になって仕方なかったりもする。
色々理不尽だったこともあるけど、最後に涙声だったことが、何よりも気がかりだ。
俺は、あの時彼女を助けるべきだったのだろうか―
助けようとしたのは、自身のエゴではないのか―
そんな、マイナスにはなろうともプラスにはならない思考が、悶々と残っているのだ。
現に、今もそっちの思考に持っていかれ、反応ができないでいた。
一方、他の奴らはというと、簡単に答えに辿りついたのか、全員計ったかのように同じ回答をした。
『入学式の日、学校にワンピース着て着てた人??』
あぁ、そうか…どうやら既に彼女はそういう風に認識されているらしい。
もっとも、俺も大した差はなく、そこに『良く分からん奴』がくっつくだけなので、「ああ、そんな人いたなぁ」と同調する。
なんというか、全員彼女に対するイメージがおぼろげにしかない感じだ。
それに気を良くしたのか、城阪は自慢げに話を続ける。
「まあ、それもそうだけど、あの日、なんか一悶着あったらしいじゃん?」
「そういや、そんなのもあったっけ」
「ちなみに、俺の独自入手情報では、その場にレンタがいたって話もあるが……まあ、それは置いといて、何でアレ起きたか知ってるか?」
言われてみると、俺自身関わりはしたものの詳しい事情はしらない。
全員顔を見合わせていると、城坂は鞄から一冊の週刊誌を取り出し、とある記事を指差す。
そこには、一際大きな字で『宇都宮財閥会長の孫、婚約者決めはファーストキスで!?』と書いてあり、宇都宮美凌の写真がデカデカと掲載されていた。
「あのワンピースの先輩、実は超お金持ちの孫らしいぜ。
何の気まぐれかは知らないが、ファーストキスの相手が婚約者を決められるらしい」
「へぇ。つまり、この前のはその関係?」
「多分そうだと思うぜ。丁度この発表があった翌日みたいだしな。
大方、婚約者に自分を選んで、逆玉の輿を狙ったんだろうな。」
「でも、それって本人の了解とかとってあるのか?」
「さぁ~、俺も流石にそこまで情報通じゃねぇし、ニュースには細かい内容は出てない。
ただ、どっちにしろ良くも悪くもお金持ちの暇つぶしって感じだろうな」
「そうか」
城坂の話を聞いて、少しだけことの全容が分かった気がする。
多分、城坂の言うとおりなんだと思う。
だが、なら一つ疑問が残る。
本当に、彼女はそれでいいのだろうか?
好きでもない相手とキスをし、婚約し…本当に、幸せなのか…?
勿論、俺みたいな庶民じゃ分からない考えがあるのかもしれない。
だが、だとしても――あの日、泣いて俺のことを心配してくれた彼女は、自嘲気味に笑う彼女は、決して幸せではなさそうだった。
むしろ、どうしたらいいのか分からなくて、泣いて全てを拒否して、途方にくれていたように今なら思う。
可能なら、もう一度彼女に会って確かめたい、そう思った。
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