序章
恋愛ギャグコメディです!!
白雪姫――
それは、俺が彼女に出会い、一番最初に思い浮かんだ言葉だった。
透き通るような肌に純白の髪、小さな口に吸い込まれてしまいそうな程に穢れを知らないような目。
服装は、白を基調とした若干幼さを感じさせるワンピース。
まるで絵本か小説の美少女が間違って迷いこんだかのような彼女の容姿に俺は立ち尽くしていた。視線が彼女の存在に固定されて、全く動かない。
今でも、明確にこの時何故こんな事になってしまったのかは分からない…が、きっと人間は自らのキャパを超えた存在を認識すると、思考が停止してしまうのではないだろうか?
たまたま、それが自分にとっては彼女で…
彼女にとっても俺だったのかもしれない。
彼女は少し驚いた顔をするとツカツカと何処か上品に歩きながら俺の前に来る。
そして、次の瞬間、不意に自分の頬に強い衝撃が伝わった。
一瞬にして、なにがなにやら分からなくなる。
やがて、時間経過と共に強まる痛みで、自分が彼女に平手打ちされたのだと気づく。
彼女はキッと俺を睨みつけながら、涙ぐんでいた。
不思議と怒りは生まれなかったが、かわりに何故彼女が泣いているのかという疑問と、元々初対面で平手打ちされるはずがないだろうという気持ちで頭が混乱する。
だが彼女は至極当然のように、怒り心頭で言った。
「来るのが遅い! この、駄犬め!!」
「……はっ?」
「聞こえなかったのか? このルーザー!」
「ルーザーって何だよ!!」
これが、俺と彼女、宇都宮美淩との出会いだった……。