~閑話休題~聖夜の奇跡
どうも。白カカオです。二日遅れのクリスマスプレゼントです。…プレゼントなら当日に投稿しろやってことですが、夜勤明けプラス連休をリア充に過ごしたので…。被りたかったなぁ…サンタ帽。ということで、最終章スタートの閑話です。
「アキラ君!アキラ君!メリークリ○○ス!」
「えぇーい!朝っぱらから書き手に自重を余儀なくさせるような言い間違いをするな!クリスマスだクリスマス!」
キュートスに帰ってきて数日目の朝、なんか色々間違った国王が僕…俺の部屋に飛び込んできた。サンタの服は白じゃなくて赤だし、連れているのはケンタウロスじゃなくてトナカイだ!ヒゲは…まぁ正解にしておくか。別に三つ編みにする必要はないんだけど。どっかの校長じゃあるまいし。
「しっ、しかし向こうの留学生から送られた資料を元に、仕立て屋に作らせた物なのだが…」
「…一応その資料とやらを見せてもらおうか」
国王が素直に差し出した手から、一枚の紙を受け取る。ナニナニ…?服のニュアンスは大体合ってるハズ…白黒なのがやけに気になるけど…。
「生地は基本的に白の無地で…ってなに?倒した敵の返り血で真っ赤に…っておい!留学生!お前らの周りにはサンタ討伐戦の猛者しかいないのか!?知識が偏り過ぎだろ!」
「サンタ討伐戦…?サンタとは子供たちにプレゼントを配る存在なのではないか?」
「その認識が出来て、なぜ極一部の人間によって作り出されたレッドキャップ紛いのサンタの衣装を作らせた…」
「しかしサンタは、家の煙突から入れるほどの小さいおっさんなのだろ?レッドキャップの亜種だという考察も出来…」
「ない!なんでそんなとこだけ現実主義なんだよ!もっと突っ込むとこあんだろ!トナカイとソリは空飛ばねぇとか!」
「いや…そっちの方が夢があっていいかと…」
「めちゃくちゃすぎんだろ!
「そうか…妻や娘たちにもサンタの衣装をさせてやろうと思って楽しみにしてたのだが…残念だ」
…おい、待て?妻や娘ってことは…エリーもか?
「主…」
流石ダービー。一心同体だ。俺が考えたことに一瞬でたどり着いた。エロセンサーともいう。
「主!ハーリー!ハーリー!ハリアップ!」
「わかってる。まぁ落ち着け。…国王、もしかして、さっきの企画書に女性用のサンタコスも描いてあるか?」
「あぁ…描いてあるがしかしこれは違うのであ…」
「ちょっと貸してみろ」
国王の手から件の紙をひったくると、裏面にたしかに描いてあった。…間違いない、俺の推理通り、日々の戦いに心も体も疲れきった男どもに夢と希望を与える、ミニスカサンタのそれが。
「国王、無駄じゃねぇぜ?」
「おお!どうしたアキラ君!かけてもいない眼鏡が光って見えるぞ!」
「なぁんだ、簡単なことじゃねぇか。国王…いや、オッサン!仕立て屋に行って、この俺が塗りつぶした部分に赤い布をあててもらってくれ!それだけで謎は全て解けた!」
「き…君は一体…」
「神谷晶、探偵さ」
「ヒャフゥー!さっすが主ぃ!いよ!大統領!」
「いや、ダービー…大統領はやめてくれ。こないだの今じゃ色々しんどい」
「………朝っぱらからなにやってんのよ、お父様たち。朝ごはん、いらないの?」
水色のネグリジェのような寝着をキタ━(゜∀゜)━!…もとい、着たディーン王女がドアの前で冷ややかな視線を送りながら立っていた。
「…ディーン王女がそこにいたことなど、まるっとお見通…」
「そ。アキラ様は朝ごはんいらないのね」
「いる!いる!すぐ行く!」
国王がバタバタと娘の後を追うのを横目に、窓の外を眺める。そうか、今日は向こうだとクリスマスなのか。マテリアルと半マテリアルが共有する、初めての年、初めてのクリスマスだった。白く雪が舞う中、街がにわかに活気づく気配が感じられた。
俺がこっちに帰ってきてから、いや…向こうにいる間もか、色々あった。
まずは、白夜の処分。初まりの者たちが全員揃い、国はその存在を公に公表するに至った。これから起こることは、間違いなくこの世界…いや、位相や次元を超えた全ての世界を巻き込む最終戦争という出来事だ。その重要なピースを国民に隠すなんてことは到底出来るはずもなく、それを乗り越える為には、初まりの者たちの最後のピースである白夜…ヘル・ブリングのヘラの存在は絶対的に必要なことだった。国民の動揺はやはり大きく、今や伝説級の英雄であるマドラのおっさんを討った張本人である白夜に対する非難の目、そしてそれを許し味方に入れた騎士団への視線は冷たいものがあったが、時間が経つにつれて少しずつ…本当に少しずつだが緩和されていった。彼らは今、シーリカの家に間借りしているようだが、男である白夜の肩身は狭いようで…たまに来るシーリカの彼氏と仲良くなることでなんとか間持ちしているらしい。シーリカとヘラの尻に敷かれている白夜も、少し見てみたい気もする。
そしてもう一つ懸念していたこと、獣人族の移民。これにはやはり住居の手配や職の斡旋など、国の執行部がなんとか準備をしていたらしい。正確には同時進行だが。元々そこそこ広い領土があるキュートスだ。仮設住宅などは早く手配していたらしい。土魔術師達は臨時収入が入ったと喜んでいたそうだが、それって土建屋の仕事だよな?魔術師って頭脳労働者じゃないのか?まぁ微妙な心境だけど、結局バリアスから住み着いたドワーフたちの協力も得て、まぁ順調そうだから良し…かな?適材適所って言うし。しかし住むところがあってもここもギリ資本主義…まではいかないけど、働かざるもの食うべからずの世知辛い世の中だ。勿論自給自足も出来ないことはないが、それは肉食系獣人なら持つだけの話。草食系獣人は、作物は育つまで時間がかかる。なら買わなければいけないが、いかんせん先立つものがない。となると収入が必要なわけで。それには元々東の平原の長、九尾の筋の者で元西の平原の住人、そして現キュートスの住人である狐型の獣人巫女のコトリが積極的に行動してくれているらしい。そういや九尾の婆ちゃん…最近知ったんだけど、やっぱり女性らしい。まぁ玉藻の前だったり妲己だったり傾国の美女だった彼女はやっぱ女性だわな。…彼女は荒れた平原に残ることを選んだそうだ。元来あまり人の多いところに居座る主義ではないらしい。…若い頃に贅を尽くしすぎたから、今は隠遁したいといったところがもっぱらの本音だそうで。獣人族の問題も、いずれ時間が解決してくれるだろう。俺の中では、バリアスの時と同じ感じになるんではないだろうかと睨んでいる。
「アキラー!こっちこっち!」
ぼんやりしながら街を歩いていると、ミニスカサンタの格好をしたエリーが俺を呼んでいる。今俺たちは、国王一家一同引き連れて街を闊歩…散歩している。朝食の時に浮かれきった国王がぶちまけた今日一日サンタコス令で、王家お揃いでサンタの格好をしている。勿論俺も巻き込まれたが、食客でありエリーと夫婦にもまだなっていないというグレーなところを突き、帽子だけ被るという見事な落としどころに落ち着いた。…まぁこの一家がお祭り好きなところも相変わらずで、そんな人たちが統治している国なのだから、国王の『無駄な』カリスマ性も相まって国民の大多数がお祭り好きに染まってしまうこともある意味必然で…今晩には町中がサンタコスで溢れるだろうことが予想つく。確かに俺も祭は嫌いではないし、美麗なエルフ達の(ミニスカ)サンタコスなんて眼福であることに変わりはないのだけど…あまり巻き込まれたくないのもまた事実。
ーーー主!主!ここは天国か!?いや、ヴァルハラか!?
ーーーそれは今通り過ぎた女の子が多いバーの名前だろうが。
つうかフィクションの世界がなんて名前の店やってんだ。
ーーーもう…我はこの世に未練はない。今すぐ死んでしまっても構わない。
ーーーお前って死ぬの?殺していいの?
ーーー…やめてくれ。主に介錯を任せたら、阿鼻叫喚で死ぬより恐ろしい地獄を味わいそうだ。
ーーーわかればよろしい。
「アキラ!早く!」
「お、おう!すぐ行く!」
エリーの隣りに駆けつけると、腕に気持ちいつもより強めにしがみついてきた。
「どうした?」
「また考え事してたでしょう?」
「いや、ダービーと会話を…」
「また…昔の彼女のこと?」
帰ってきて俺の一人称の変化に気づいたエリーは、少しナイーブになっているようだ。懇願されては隠し事はできない性質の俺なので、馬鹿正直に話してしまったのがいけなかったのかもしれない。エリーが俺の過去の…特に恋愛ごとに敏感なのは知っていたはずなのだが。
「…違うよ」
「嘘。少し間があったもん」
…特別意味はなかったんだけどなぁ…。最近のエリーは少し不安定だ。もしかしたら、この戦いの終末が近づいていることを感じているのか…前から妙なところに敏感な節があったし。からの初まりの者たちの国民に対する公表…何も思うなという方が無理があるか。
「なぁエリー」
「んっ?」
小首を傾げて俺を見上げるエリー。不覚にも少しドキッとしたのは胸の内に留めておこう。
「国王とかアホみたいに騒いでるけど」
「アホとはなんだアホとは」
「向こうの世界で、一般的に何をするかわかってるか?」
「うーん…わからないや」
「…だろうな。プレゼントを渡すんだ。親は子供に、恋人たちはお互いに」
「プレゼント…かぁ。アキラは何かくれるの?何か欲しいものあるの?」
自分で話を振っておいてなんだが、特に欲しい物がなかったことに気づく。こっちの世界に来てから、めっきり物欲と無縁になってしまった。
「…いや…特にないや。でもエリーには何かあげようと思ってる」
「何かって何!?」
「馬ー鹿。それ言ったらサプライズにならねぇだろ。それにまだ考えてないから、教えれない」
「ええー!」
頬を膨らませてエリーが抗議する。ここ数ヶ月の間に落ち着いたのは間違いないのだが、こういう時に出る子供っぽさは相変わらずだ。愛嬌があっていいと思うけど、それは親馬鹿?…は違うな。彼氏馬鹿?…とは言わないよな。とりあえず、たぶん馬鹿なんだろう。
「…でも私は、アキラにプレゼント出来る事、あるかな」
そんなくだらないことを考えていたから、エリーの小さい呟きを聞き漏らしてしまう。
「なんか言ったか?」
「ううん!何も言ってないよ!」
「おーい!アキラ!」
なんつうかベタなタイミングで、少し離れたところからカイムの声が聞こえた。手に袋を持っているところを見ると、どうやら買い物中らしい。
「おう。何買ってんだ?」
「これさこれ!」
カイムがニコニコしながら袋から出した物は、俺を脱力させるには十分なものだった。
「…なんでお前も乗ってんだよ」
「アキラだって被ってるじゃない、帽子」
「これは精一杯の妥協案だ」
カイムが次々とサンタグッズ…いや、クリスマスグッズを出していく。というより、サンタっぽいコートを出してそのまま着おった。
「似合う?」
一回転して見せるカイム。お前そんなキャラじゃなくね?
「はいはい似合う似合う」
「エリーちゃんも可愛いね」
「えへへ。ありがとう、カイムさん!」
カイムの言葉に嬉しそうに俺にしがみついてくるエリー。腕に当たる感触は…まずまずだな。
「カイム、アキラとエリーちゃんも!ってゆうか、国王様んち大集合?」
「お前ら、何やってんだ?」
さらに少し前方からシーリカにヘラ、白夜組、隣の路地からグレンとガラムが現れた。なんというエンカウント率。
「お前ら何してんの?」
「私は、外が楽しそうだからヘラとお買い物に。荷物持ちもいるしね」
「まぁ…そういうことだ」
シーリカの言葉に、ヘラが恥ずかしそうにそっぽ向く。二人の頭にも、俺らと同じくサンタ帽。似合っているが、ヘラ的には恥ずかしそうだ。
「白夜…ご愁傷様だな」
両腕に複数の袋、更に抱えるようにテンプレな大小様々な箱の山。トドメに背中になにやらデカい物を背負っている。これは最早なんらかの修行と言っても差し支えないだろう。
「そう言ってくれるなら手伝ってくれ、晶」
「却下」
「俺は…なにやら祭の声が聞こえてきたからこの引きこもりを連れて外に」
「ふんっ!余計なお世話だ」
「…の割に、帽子どころか服までサンタコスを纏っているのはどういうことだい?ガラムくんやい」
「うっ!五月蝿い人間風情が」
なんか久しぶりに聞いたな、それ。
「まっ、みんなクリスマス楽しんでるみたいだし、俺とエリーは国王のとこに戻るかな。じゃ、メリークリスマス!」
たぶん、メリークリスマスの意味もわからないだろうが、そう言い残すと俺とエリーは国王のご一家のところに戻った。そこかしこで出店や、路上パフォーマーやらバーゲンやらで賑わっている。うん…どこも誰もみんな、楽しそうだな…。平和過ぎて、何か胸が締め付けられる。この平穏が永遠に続かないのなら、せめて少しでも長く…安らかでありますように…。
「っておい!国王の野郎もしかして酒飲んでやがるな!?」
「えっ!?ちょっと待ってアキラ!」
「てめぇ馬鹿国おー!酒弱いエルフがドワーフと勝負なんか出来るわけねーだろうがー!!」
エリーの手を引き、賑わう街中を走る。空は雲が覆い被さり雪がちらつくのに、少しも寒さなんか感じなかった。この街の熱気と、繋いだ手に伝わるエリーの体温で。
「…やっと落ち着いたな」
酔いつぶれた国王を背負い野次馬の群れを抜け、夕方からさらに城を開いた晩餐会が続き、身も心もクタクタに疲れきっていた。終盤になりある程度落ち着いたところで、俺とエリーは俺の自室に避難していた。どっかりとベッドに腰かけて、年寄りみたいに声を上げている。
「でも…楽しかった」
椅子に腰掛け、テーブルに肘をかけたエリーが、照明代わりの蝋燭に照らされて見える。オレンジの明かりが温かく、エリーの美しさを引き立てていた。
「なぁ、エリー…昼に言ってたこと」
「…昼?」
「プレゼント」
「くれるの!?」
エリーが椅子から飛び上がって、大袈裟に喜ぶ。たぶん嬉しいこととか楽しいことがあると、エリー基準で童心スイッチが入るんだろう。
「まぁ色々考えたんだけどさ、エリー最近俺とのこと色々不安がってるじゃん?だからさ、不安がなくなる物用意した。つうか、これから作る」
「これから…?」
俺はベッドから立ち上がると棚からあるものを出す。
「…ウォークマン?」
「そ」
「ウォークマンくれるの?」
「またそれは違うんだけどな。まぁ見てろって」
ウォークマンの中の金属分子をいじり、変移させーの圧縮しーので形を整えていく。たぶん物理とか化学の人たちが見るとぶっ倒れるようなことを、イメージだけで作り上げる。そして出来上がったのは、小さな輪っかだ。
「…指輪?」
「あぁ。結婚しよう、エリー」
「………えっ?」
呆気にとられるエリー。これが俺からのサプライズ成分を多分に含んだクリスマスプレゼント。つうかこれ以上のサプライズが人生にあってたまるか。下手すりゃありそうだけど。
「返事、くれないの?」
「えっ?…えぇ!?」
「そうか、受け取ってくれないならこのプレゼントはあげれないな」
「えっ!?やだ。やだ!貰う!」
「じゃあ…プロポーズ、受けてくれるな?」
「あっ、はい…でも!なんで?これ、アキラの大事な物じゃ…」
おずおずと手を伸ばしては引っ込めるエリーに笑いかけることをやめられない。
「これ見たとき、エリー驚いて喜んでくれただろ?だからまたこいつで、エリーに驚いて喜んでもらいたかったんだよ。思ったより喜んでくれてないみたいっつうか、リアクション薄いけど」
「そんなことない…そんなことない!ありがとう…あれ?」
エリーの目から一筋の涙が流れる。それを見て、俺は安心してもう一度エリーに告げた。プラスアルファをおまけしてやって。
「これをエリーが受け取ってくれたら、正真正銘、俺はエリーだけのものだ。その誓いは、未来永劫違えることは出来ない。俺がエリーから離れることはない。受け取って…くれるか?」
エリーが俺を見て、たっぷり間を空ける。言葉の意味を噛み締めているようで、現実を受け入れるようで、心の整理をしているようで。でも俺は安心して待っていられた。
そして数秒後、エリーは今までに見た一番の…泣き笑いを見せてくれた。
「…はい!」
そしてその細い指に指輪をはめた直後、エリーは僕の胸に飛び込んできた。ミニスカサンタの、俺の世界一大事なヒト。
「私からも…でもこれはプレゼントっていうか、報告かな?」
「いいよ、プレゼントでいい。話してみて」
「私…子供出来たみたい」
…今度は俺が言葉を失う番だ。今、なんて言った?
「………えっ?」
「子供…出来た。アキラと私の…子供…」
エリーに…子供?いや、たしかにエリーとするときは何故か避妊を気にせず中で…ゲフンゲフン!…は置いといて、マジか?
「それも…双子みたい。魔力を二つ感じるから、たぶん…」
「えっ…えっ…」
「アキラ…泣いてる?もしかして、嬉しくなかった?私、ここからじゃアキラの顔が…」
「……嬉しくないわけ…ねぇだろっ!エリー!お前と俺の子供だぞ!アッハハハ!最っ高のプレゼントじゃないか、エリー!そんな宝物が出来て!嬉しくないわけないだろう!アッハハハハハ!!」
「アキラ…!アキラぁ!」
「幸せだっ!今俺、すっっげぇ幸せだ!幸せだぞちっくしょー!!」
嬉しくて嬉しくて、幸せで嬉しくて、全ての感情が吹き出てもまだ足りないくらい幸せで、それでも足りないとわかっててなお大声を上げて歓喜する。自分の声を聞いて何度も実感する。実感しようとする。今この瞬間は、現実なんだと!
「私もっ!すっごく幸せ!」
「エリー!」
「アキラ!」
「エリぃー!」
「アキラぁ!」
何度も互いの名前を叫び、手を取り振り上げ、抱きしめあう。最も原始的で、しかし最上級な喜びの表現。今ならきっと、世界の全てを愛せるなどと馬鹿なことすら浮かぶほどの幸せ。
ーーーゴーン!ゴーン!
「あっ…」
十二時を告げる鐘が鳴る。救世主と呼ばれた男が生まれ落ちた日を告げる鐘が鳴り響く。
「お外…綺麗だね…」
「…あぁ」
幾度も鐘の音が響き、窓の外には月明かりに照らされて雪が深々と降り積もる。蛍の光はたしか、雪灯りを頼りに勉学に勤しむ歌だっただろうか。これだけ明るければ、それもわかる気がした。でも、これだけ美しくて幻想的な風景を目に、果たして昔の人は勉強は捗ったのだろうか。
「どうしたの?アキラ」
ーーーゴーン!ゴーン!
「なんでもないよ」
もう一度、ギュッとエリーを抱きしめる。
ーーー大丈夫。エリーはどこにも逃げやしない。十二時の鐘が鳴ってもどこにも行きやしない。エリーはシンデレラではないから。シンデレラより幸せにしてみせる、世界一愛しいヒトだから…。
ーーー主…くっさ。
ーーーこういうときはきちんと空気読め、ダービー。
だいぶ長くなりましたが、本当はもっと詰め込むつもりでした。まぁ今年もなんやかんやありましたが、来年は2012年予言の年ではありますが、願わくば自分自身、大切な人、家族や友人達…勿論読者の皆さんも幸せでありますように、幸せになれますように…最後の方書きながらそう考えました。ジョンも歌っていますが、そして過去形ですが、皆さんメリークリスマス!えーんどハッピーニューにゃ…イヤー!