~第七十九話~スターゲイザー
どもカカオです。軽く寝違えたっぽいです…。昨日スカイプ中に寝落ちしたから絶対それだ…。でも書くことに支障ないので書きます。
「あー…星が綺麗だな…」
目の前には満天の星空。僕は砂浜に寝っ転がって現実逃避していた。
「月が…綺麗ですね…」
「うっせぇ!気持ちわりぃんだよクソダービー!誰のせいでこんなことになってんと思ってんだ!」
ショボンとするダービーを尻目に、現状を再確認する。僕はこれから、あの戦争に参加した国の首脳をぬっ殺しに行かなければいけない。そして今僕がいるところはどっかの島。気分的に南国。
「だって…主が次元迷ってる間、地球が自転待ってくれなかったんだもん…」
「自転止まったらえらいことになるだろうが…」
「…ちなみにここはオセアニア諸島あたりだ、主」
「現在地わかってんのか馬鹿タレ。先に言え」
…ということであっさりわかった現在地。幸い無人島らしいので、なんの躊躇いもなくガルーダで飛行出来る。まぁ誰かいたところでやるんだけど。…最初はあの国潰そうと思ったんだけど、時差とか距離的に作戦変更するか。別にどこから潰そうと気分の問題だから関係ないんだけど。
「じゃあ、夜半過ぎになったら決行するか。ダービー。月が南中から傾いたら起こしてくれ」
「…寝るのか?主」
「あぁ。三次元に戻ってきてから無理したから、若干疲れた」
出来れば二次元に行く方法も知りたいんだけど、難しそうだから夢に見るだけにしよう。あー…月と星の光がちょうどいい感じだ。真っ暗だとちょっと怖いし。安心して寝よう。
「主、そろそろ頃合いだぞ」
夢の中にダービーが起こしに来ると、大あくびをして体を起こした。
「ガルーダの飛行速度と加速の効果を演算して、主の体力の回復を考慮したギリギリの時間だ」
「んっ…サンキュ」
さて、寝起き一発エリクサー!少し喉も乾いていたので染み渡る染み渡る。…そういう飲み物じゃないけど。
「それじゃ…行くか。着地点の座標はお前に任せる!」
「了解だ!」
ガルーダの翼を借りてビュビュンっとひとっ飛び。飛行機と同じような高度で飛んでるから管制塔で観測されてるかもしれないけど、どうせ未確認飛行物体で済まされるんだからキニシナイキニシナイ。…まぁその飛行物体が観測された方角で、暗殺が次々と起これば関連付けられるかもしれないけど…まぁキニシナイキニシナイ。
「っと。到着」
サクっと目的地に着いた僕が今いるのは、標的の家…の屋根上。国としては中東の某国。いい家に住んでるな。まぁ今から、永遠に手放す事になるんだけど。普通に侵入するのもなんなので、分子配列を細工して、人為的にトンネル効果を起こしてストンと降りてやる。たしか、すぐ下で寝ているはずだ。
「遊び心を忘れない主だな…」
「復讐なんてただでさえも気落ちする仕事、楽しまねばやってられん。殺す間際の表情とか、断末魔とか…」
「人間の心は天使と悪魔、善と悪が混在する混沌だと言うが…今の主は完全に悪に傾いてるな」
「いいの。平和の裏側には、こういう汚れ役も必要なんだから」
ということで、いざストーン!
「なっ!?何者だ!!」
「ダービー通訳!」
思いの外着地のときの音が大きかったらしく、簡単に標的が起きてしまった。
「SPは何をしている!」
「無理もないさ。僕は天井から来たんだから」
「なっ何を!貴様は誰だ!何が目的だ!」
意外に可愛らしい寝巻き姿で、禿げたおっさんが喚いている。その格好だと逆に滑稽だぜ?
「何って、こんな夜更けに来るなんて、暗殺に決まってるじゃん」
「あっ暗殺!?貴様はどこの国の…」
「最近アンタ方が侵攻に失敗した国の者だよ」
ポケットから、血染めのその国の国旗を出す。蒼白だった顔色が更に変わり、月明かりしかないにも関らず土気色になっていくのがわかった。
「貴様は…!そういや向こうに一人日本人が要人を務めていると聞いたが、まさか…」
「そっ。ご名答ー」
「待て!貴様の国には攻めておらんはずだろう!!」
ガタガタ震えて、両腕で体をかき抱いている。似合わねぇぜ、おっさん。
「馬鹿だなぁ。アンタらのとこと違って、仲間意識が強い世界なんでね。隣人がやられてるのを傍観なんて出来るはずがないさ。同胞の為なら命を投げ出す…そんな連中なんだよ。だから、直接関係ないなんてことはないのさ。あの世界に土足で踏み込んだ時点で、お前らは敵」
「しっしかし!貴様は人間だろう!?人間なら、こちらの世界の世界が豊かになる方が喜ばしいんじゃないのか!?」
「…アンタ馬鹿だろ。奪って得るものに幸せなんか感じるはずないだろ。向こうとこっち、共存して、初めて本当に繁栄足りえるんだよ」
「だがっ…あんな化け物どもと与するなんぞ…」
…よくこんな小物をトップにしたもんだ。これはもう何が悪いのかわからん。
「はいはい。死亡フラグ乙。つうか、不可侵条約っつうもんがあるだろ」
「そんなもの!向こうを支配して得られる物を考えると護るメリットが…」
「もういいや。駄目すぎる、こいつ」
言葉を遮って溜息を漏らす。何かもう聞くに堪えないから、さっくり殺っちゃお。
「なぁ、お前アメリカのバンドとか聞く?」
「いきなり何を…」
「T.レックスって知らないか。そのバンドにマーク・ボランってすげぇボーカルがいたんだけどさ」
「わけのわからない話をするな!」
「マーク・ボランはさ、自分は三十歳前に全身バラバラになって死ぬって予言してたんだ」
「その話とコレとなんの関係が…」
「まぁ聞けよ。で、マーク・ボランは本当に全身の血管がボロボロになって死んだんだ」
頭まで真っ赤にして声を荒げる禿げを無視して、冷ややかに語ってやる。今のフレーズで、自分がどうなるかわかってないんだろうな。僕がここに来た意図を覚えていれば蒼白になって命乞いするところなんだけど。
「ちなみに魔法って便利でさ、個人個人属性があるんだ。例えば僕は土の属性。今日は鉱物を使ってみようと思う」
「魔法など、笑い話にもならん!それで脅しのつもりか!?」
「ちなみに今回のテーマは鉄。鉄分って、人間の体内にも結構あるよね。血液中にさ」
「馬鹿馬鹿しい!おい!だからSPはどうし…」
「無駄だよ。壁の素材を変えて、今ここは完全防音だから」
「クッ!なら…」
禿げがベッドの枕元に手を伸ばした矢先、軽く実力行使にでる。僕は動かないけど。
「グッギャアアアア!!!」
その伸ばした手から、指が五本丸ごと消えている。否、切り落とされている。
「貴様っ…何を…」
「だから言ったじゃん。ま・ほ・う。お前の血液中の鉄分を凝固させて刃物に変えて、そのオイタしようとした指を切り落としただけ」
ここまでヒント出してまだわからないのか。禿げは脂汗を流して震えている。刃物を生成する量の鉄分を失ったのだ。貧血のそれもあるのかもしれない。ブルブル…ぼくはわるいはげじゃないよ。
「で、おさらい。マーク・ボランというバラバラになって死んだ偉人の例を出しました。実際は血管の破裂だけど。そして、今大ヒントなことに僕が魔法で出来る事を実際にやって見せました。さぁ、導き出される答えはなんでしょう?」
禿げは答えない。ようやく自分の末路に気づいたのか、パニックで声が出ないのかもしれない。まっ、関係ないけどね。
「つうことでさよならだ。奪っていいのは、奪われる覚悟がある者だけだ。…奪っていい理由にはならないけど。じゃねっ」
満面の笑みを浮かべてやり、対象の全身の鉄分を消費して、体内から一気に放出させる。禿げは赤いスプリンクラーになって、その場に倒れた。でもこれじゃ、なんだかよくわからないな。最悪、初見はエボラ出血熱だ。
「じゃあ分かりやすいようにっと」
禿げから出てきた剃刀状の刃物を並べて、意思表示をする。
「これでよしっ!」
「a dead person…報復か。なんだ主、洒落た遊びをしおって」
「だから、遊び心は大事なんだって。まぁ…最後の単語は足りなくて血文字にしたけど。明日の朝になれば発見されんだろ。さっ、次行くぞ次!出来れば今晩中に済ませたいんだ」
ガラっと窓を開け、夜風を浴びる。禿げが血をブチ撒かしたせいで鉄臭くて仕方なかったから、外の空気が旨い。
「ダービー。次、ヨーロッパな」
「了解だ」
月夜に、翼の生えた人間が舞った。目撃者がいたなら、天使にも悪魔にも見えただろう。
自分が英語全然なんで補足説明します。復讐となるとrevengeとなりますが、どちらかというと不正に対する報復という意味合いのavenge(a dead person)という言葉を選びました。…すみません、ヤフー辞書です。あっ、あと殺害方法はジョジョ第五部のスタンド、エピタフから引用してます。