~第七十三話~幕間
ども。登場人物紹介のところで、なんとラスティンを忘れていたので追記しました(汗)短いですが…。あとは作者が言うのもなんだけど、ホントのモブの方々なんだよなぁ…。七つの大罪どもに関しては、もう少し落ち着いてから…この章が終わった後にでも。そういや、用語とか色々解説せにゃならんこともあるなぁ…設定とか実は後付け多かったりするから、にんともかんとも…。ちなみに、この話の中核の初まりの者たちも後付けだったりします。悪いね、ヘボ作者で!
「…そろそろいいですか?アキラさん」
入り口前から、デンゼルの声が聞こえる。そういや、こいつ呼ぶのラスティンさんに頼んでたんだったな。
「お前、いつからいた?」
「そいつとアキラさんが、長い口付けをしてるところからですよ」
「ほぼ最初からじゃねぇか…で、どこまで聞いてた?」
「大体全部聞いてます」
………。
「納得いかないところは多々ありますが…まぁ、ボクはアキラさんに従うだけですよ。アキラさんのことだから、きっと何か考えがあるのでしょう」
「おい、人聞きの悪いことを言うな」
「…で、そいつ。どうするんです?この作戦中」
「僕が、団長に話す。近くに確かシーリカの隊があったはずだろ?それで、承諾を得たら僕の部隊手伝わせる」
「おいっ!アキラ!」
「ラスティンさん、大丈夫。こいつはそれしか選択肢がないから。もし何かあったなら…」
「何かなんて、するわけないだろう。晶は、小さい頃に俺を受け入れてくれた俺の恩人だ。洗脳が解けた今、晶と敵対する理由も、裏切る理由もない。それに…」
白夜が拳を握り締める。篭手をしていない裸の掌から、爪を立てて滲んだ血が滴る。
「俺の大切な人達は、同じ人間に殺された。…ちょうど、今回みたいに。今度こそ…護りたい。理不尽から、蹂躙される人たちを…」
白夜がうつむく。他の面々を見ると、ラスティンさんは難しそうな顔をしている。デンゼルはまだ納得してないようだ。
「デンゼル、マドラ前団長の意思でもあるんだ」
「…はぁ。わかりましたよ。でも勘違いしないでください。ボクは、アキラさんを信用してるんですから」
「二人とも…すまん、今だけでいい。俺を信じてくれ…」
「白夜。話に行こう。デンゼル、シーリカの部隊はどこで休んでる?」
「ここでて左に行った所に集落跡があります。シーリカ部隊長はそこにいます」
「悪いな」
「おいっ!アキラ、体はもういいのか?」
「大丈夫です。白夜に治して貰いましたから」
そしてどうしても同行したいというデンゼルとヘル・ブリング…ヘラを含めた四人でシーリカのところに向かう。時間にして、徒歩で十分足らず。その間、ずっと無言だった。
「たのもー」
シーリカの部下達が頭を下げるのに片手で応えると、シーリカが休んでいると思わしきテントみたいなのの入り口を開ける。
「どこの道場破りよ。それに急に開けたりして、私が着替えてたら…って、彼は…」
「久しぶりね、シーリカ。と言っても、ウラヴェリアの時ぶりだけど」
「ヘラ…!」
シーリカの眉間に皺が寄る。しかしその顔も、次の瞬間別のなんとも言えない表情に変わった。
「こうして顔を見るのも、数世界ぶり…。アンタのことだから、何かあったってのはわかってる…」
シーリカがヘラを抱きしめる。そういやシーリカは、転生してないんだったな。その分、原初にたいする憧憬も強いのだろうか。
「私、とんでもないことしてしまった…」
「大丈夫…わかってるから!わかってるから…これからは、私も一緒だから…」
二人の声が震えている、そういや初まりの者たち中で、女性はこの二人だけだったか。今は、ココ…ココルはいないから。数少ない同性の同胞。何か思うことがあるのだろうか。
「ココルの時も、ホントは辛かった…。この世界でも、助けられなかった…」
「わかったから!わかってるから…」
「えぇーと…無粋なことしてごめん。シーリカ、セラトリウス団長に繋いでくれるか?」
すっげぇ声かけづらかったけど、頑張った。僕頑張った。
「えっ?…あぁ、ごめん。ちょっと待ってて」
若干涙目になっているシーリカが、五火七禽扇を手に握り力を込める。
「団長、シーリカです。えぇ。えぇ…今アキラに代わります」
代わると言いつつ、音声を拡張するシーリカ。ハンズフリー機能みたいなもんだ。
「セラトリウス団長、アキラです」
「おぉ。ご苦労じゃな、アキラ殿」
「幾つか報告することと、許可を頂きたいことがあるんですが…」
「報告はよい。千里眼で大体見とる。嫉妬に色欲か…難儀であったの」
「はい…」
戦闘のことを思い出し、思わず唇を噛む。確かに倒せた。撃退出来たけど…また僕は、護れなかった…護れなかったばかりか、自らの手をかけてしまった…。
「主、全て主が悪いわけではないであろう?」
「わかってるよダービー。わかってるけど…」
「して、許可とはなんじゃ?」
「マドラ前団長を殺した、初まりの者たちの最後の一人…ヘラ、白夜が今一緒にいるんですが、今回の作戦中だけでも僕の部隊の管理下におきたいのですが」
「それはつまり…」
「裁きは、国に帰り次第受けさせます。ですが、白夜の力があれば。こちらの戦力が大幅に上がることもまた事実です。万が一何かがあったのなら、僕が白夜を処分して、僕が国に帰ってから処罰を受けます」
「アキラっ!?」
シーリカが驚いているが、僕も覚悟が伝わったのか再び口をつぐむ。
「初まりの者たちの最後の一人か…。よい。好きにするがよい。この世界…全ての世界の調停者。大いなる意思に、私は委ねる。思うようにするがよい」
「寛大な判断、ありがとうございます。それと…」
「まだあるのか?」
「はい、今回の作戦が終わって白夜の処分が決まったら…一度、向こうの世界にいかせてください」
「…それがよいかもしれんな」
「アキラ、どういうこと?」
シーリカとラスティン、デンゼルが首をかしげているが、白夜とヘラはわかったようだ。この二人は、向こうの世界の実情を知っているから。
「今回、黒幕は確かに色欲の二人だったけど、それだけじゃない気がするんだ。もっと向こうの世界の黒い部分が関っているような…。幸い、僕は向こうじゃ一般人とは少し違う立場があるから、最大限まで利用して真相を突き止めてくる。…じゃないと根本的解決にならないし、二つの世界の壁が大きくなってしまう」
無言の時が流れる。白夜が俯いているのは、その黒い世界を知っているからだ。
「確かに僕と…白夜がいた世界は、綺麗でもあるし科学が発達した魅力的な世界ではあるけど、同じ位後ろ暗い世界でもあるよ。でも、その部分は一部でしかなくて、多くはちょっと愚かな、でも善良で無垢な人たちなんだ。でもその一部が強すぎるから、その大半の人たちも自覚無く黒く染まってしまうこともある…。だから僕は、少しでもその部分を消毒してくる。しなくちゃいけない。それが出来るのは、きっと僕だけだから…」
僕の噛み締めた唇から、一筋血が落ちる。悲痛な気持ちではない。これは覚悟だ。
「重いね…」
シーリカが、震える声を無理に抑えて言った。
「私達が背負ってるものは、いつの世も重い。そうよね?ヘラ。だけど、今一番重いのはきっとアキラだから…」
シーリカが、背中に手を回して僕を抱き締める。その僕より少し小さな体は、背負ってきたものの重さに震えていた。
「だから、頑張って。ヘラが帰って来て、ようやく私達皆揃った。私達はみんな、世界を変えてしまうほど恐ろしい運命を背負っているけど、それを理解できて力を貸せるのも私達だけだから…。だから、帰ってきて。私達…仲間のところに」
姉御肌に見えて、実は人一倍不安を感じていたのは、シーリカなのかもしれない。カイムと同じくその身一つで悠久の時を越えてきて、この世界でも初めはその運命を手放そうとして…でも、僕たちが集まるのを信じて待っていたのは、シーリカなのかもしれない。
「大丈夫。僕はちゃんと戻ってくるから。この世界の、エリーとお前らが僕の居場所だから…」
「ゴホンッ!」
背中で咳払いが聞こえた。
「いい雰囲気なところ申し訳ないですが…いいんですか?アキラさん、シーリカ部隊長。リーナス王女が待ってるのに」
デンゼルの毒が炸裂する。不覚なことに、今のこの部屋の状況を失念していたらしい。
「これは友好のハグだよ」
「まぁわかってますけどね」
「よし、団長から許可も下りたことだし、明日の夜明けとともに掃討戦に出るぞ。攻撃は、ラスティンさん頼む。デンゼルは僕と敵の手から逃れた獣人たちの保護。…今回は護り抜くぞ。デンゼル。お前の魔法にも期待してる」
「わかりました。でもこっちからの攻勢は本来の任務には…」
「デンゼル。攻めなきゃ、攻められるだけだ。それに、僕は敵の兵器にお前らより覚えがある。被害は最小限に食い止める」
「晶。俺は…」
「白夜。お前は単独で特攻して殺しまくれ。自分達と同じ人間が銃弾の雨をものともせずに突っ込んできたら、きっとあいつら『化け物だ!』って動揺するから。そこで敵の隊列が破れたところを、ラスティンさんに任せる。お前の鎧なら、サブマシンガンの銃弾も受けれるだろ?」
白夜が、強く頷く。自分の手で英雄を失ったキュートス国への償いに、その身を捧げる覚悟を決めたようだ。ぶっちゃけ、僕にしてみれば適材適所で利用してるとこがでかいんだけどね。
「晶…。俺は、殺す事に躊躇いはない。向こうの世界にいたときもそれが日常だったし、それでこの世界の人たちへの償いに少しでもなるなら、喜んでこの手を血で濡らそう」
「ん。期待してる。よし、じゃあ戻るぞ!夜明けまで時間が無い。デンゼル、皆に急いで準備させて」
「了解しました」
「つうか人の部隊んとこで作戦会議するのもどうかと思うけどな、私…」
シーリカがなんか言ってた気もするけど、細かいことは気にすんな。
「あっ!あとガロン!…ありがとな、運んでくれて」
「なんだ、気づいてたのか」
壁にもたれて腕を組んでいるガロンが、驚きの表情を浮かべる。
「別に隠れてるこたぁねえと思うけど」
「お前達の事情はわかった。俺は、シーリカとともに行くだけだ」
「…そういえば、私達の内部事情って、トップシークレットだったはずよね…いいのかしら、伏せられてるのに副官が二人も事情知っちゃうとか」
「アキラさんは、アキラさんですから。それにこうでなくちゃ面白くないし」
「うむ、シーリカはシーリカだ。それ以上でもそれ以下でもない。今まで一緒に戦ってきたシーリカであることに変わりはない」
「ガロン…ありがと」
「じゃっ、シーリカ。サンキュな!」
手を上げて自分の持ち場に戻る。夜の外は、大分冷えるな。
「ホント、きな臭いことになったなあ…。でも、住み分けを侵して、陵辱していい理由なんてない。絶対止める。何があっても、この世界は護ってやる…」
ボクの決意は、白い息とともに空に浮かんだ。
「好き勝手に呼んで最後は挨拶もなしか…全く、マドラといい勝負じゃわい。本当に…」
「あっ」
シーリカが、その声にセラトリウス団長と繋がりっぱなしなことに気づいた。
すみません。私も繋がってるの忘れてました。では、次話『掃討戦』で。久しぶりに部隊戦書くかぁー。