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クリエーター  作者: 如月灰色
《第四章 人の業》
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~第七十一話~八大地獄

七十話を書いて、今そのままこれ書いてます。話の構成上とはいえ…どうなんでしょう。

「ノアを真似たか。学習能力はあるようだな」


 アスモデウスが、下卑た笑いを浮かべる。俺はキーランスを参考に、氷の壁を作りこいつの行動範囲を狭める。クッ!あいつの後塵を拝するとは…。しかし、効果的なのもまた事実だ。俺は、一族の誇りにかけてこいつを葬らねばならない。我が一族…ヘラクトドス家の名誉の為に!

 何も答えず、無心で槍を振るう。外したそばから、接触したところが次々に凍る。


「フハハハ!いいぞ?さっきとは、集中力コンセントレーションが違う!殺気が違う!お前の言葉に、嘘はなかったようだな!いいぞ!貫いてみよ!貫かれるのも嫌いではな…」


「黙れ異常性癖が。耳が穢れる」


 ミドルレンジからの突きをかわされ、アスモデウスのすぐ傍の壁に、横ばいに氷柱が出来る。幾合隔てても、形勢は変わらないように見えた。


「…なんだ。買い被りか。最初は見直したが、同じ事一辺倒ではないかそれなら、こっちから行くぞ!責めるのが、俺の真骨頂…」


「安心しろ。もう終わった」


 転調は、慣れがあるから効果があるのだ。同じ事の繰り返し。次第にそれは思考を停止させ、裏の狙いを気づかれ難くする。お前の敗因は、その慢心だ。


「何っ!?」


 ようやく自分の置かれた状況に気づいたか。攻撃を外す度に作られた氷柱。氷の壁で隔離され、氷点下数十度の世界でそれは次第に成長し、肥大化する。途中からアスモデウスを囲うようにわざと攻撃を外し、次第にやつの活動範囲を狭めていく。そして最終的に…あいつは身体一つ分まで追い詰められるまで気づかなかった。いや、俺相手ならいつでも倒せると油断していた。だから、この氷の檻に気づかなかった。


「貴様…謀ったな!?ただの犯され方じゃ済まさないぞ!!」


「やれやれ…。お前らは終始そればかりか。その分だと、あの女も同じか?まぁあいつがどうなろうと知ったこっちゃねぇが。下品で下劣で愚劣な悪魔。お前との因縁も終わりだな。残念だったな、見せ場がなくて」


「きっ…貴っ様ぁぁぁぁ!!!」


 最後の仕上げにその胸をゲイボルグで貫き、氷の檻は施錠された。気づくと、悪趣味な笑いがこみ上げていた。これでは、あいつ…キーランスと一緒ではないか。気に食わん。

 さて、もう一人の獲物も横取りしてやるか。こいつは、思ったより手応えがなかったからな。




「フンッ!ハッ!」


 中距離の攻撃はこいつには効かない。罪人の剣(ガリアン・ソード)をしまい、魂喰い(ソウルイーター)を斬りつける。血を吸っていないこいつは、今はただの片手剣だ。そして、こいつはやはり簡単に吸わせてくれないだろう。


「ホンット、まだまだ青いなぁ、お前は。しかし、ノアが来てからはだいぶマシになったか。これが友情パワーってやつか?」


 ベルゼバブがかっこつけて講釈垂れながらステップでかわす。


「黙れ!」


 からかわれて頭に来る。他の二人がどうなっているかは、その土と氷の壁に阻まれてわからない。


「主!これを!」


 内側からヘル・ブリング(晶の指環はヘラと呼んでたか?)の声が聞こえた。鎧に守られていない、左手に手首から何かが這い上がる。数瞬で形を成したそれは、篭手だった。


「なんっだ!?これ…!」


 その間もベルゼバブの攻撃は続く。やつは一人で盛り上がっているのか、こちらの変化に気づいていない。


「いいからそれで受けて!打って!」


 よくわからないまま言うようにする。まだやつの速度についていけない俺は何度か攻撃を喰らってしまうが、偶然にもその内の一つを左手の篭手で受けることに成功する。


「これは…!」


 やつが柄にもなく怯んでいる!今だ!


「ガッ!!」


 胸の中央に俺の掌底を受け、ベルゼバブが派手に吹っ飛ぶ。なんだ!?今まで魂喰いを受けても平然としていたこいつが。


「それは…破魔の篭手か!」


「えぇ。ご名答」


「お前が操るのは魔の物だったはずだろう!?何故そいつを持っている!!」


「あら、これだって破『魔』よ?『魔』を冠する物に変わりなくてよ」


 俺の内側から、ヘル・ブリングの皮肉たっぷりの声が聞こえる。悔しいが、俺にはこいつらの会話がわからん。


「破魔の篭手…またの名を、ヤールングレイプル。雷神トールが所有物で、貴方が殺したマドラの武器、ミョルニルと力帯メギンギョルズと三位一体の宝具。これそのままでも魔を砕く力がある、立派な武具よ」


 マドラ…晶との禍根を産んでしまったあの一件。あいつの一撃で、俺は全てを悟った。いや、魂が理解したと言った方がいいのだろうか。雷の一撃を受け、俺の全ての脳細胞が働き、五感はおろか第六感までが刺激され、天啓を受けた。そのショックで、しばらく意識不明に陥る羽目になったが…。

 俺は、晶と和解しなくてはならない。今のままでは、確実に俺たちは争う運命にある。そしてそれは、世界崩壊の足がかりになってしまう。あの一撃で…俺は予見した。黙示録を見た。変えなければならない運命…。晶の身内をこの手で葬って和解などと、なんて都合のいい話だ。俺なら無理だ。しかし、その元凶を作った張本人がここにいる。俺も晶も、戦う理由なんて、己の大事なものを護りたい。ただそれだけだったのに。


「クッ!ミョルニルは葬ったというのに、まだ邪魔をするか…」


「ベルゼバブ…俺はお前を倒さねばならない。前世の因縁というだけでなく、世界を護り…晶との絆を取り戻す為に!」


「勝手なことを!この世界に来たお前らを精神操作(マインド・コントロール)していたのは、レヴィアタンの独断だ。俺は関係ない」


「それでも…『嫉妬エンヴィー』は俺の敵に変わりない」


「ハッ!確かにそうだな!だが一撃当てただけで調子に乗る…っ!?」


 やつの胸に裂傷の痕のようなものを見つけ、突進して魂喰いを斬りつける。理由はわからない、だが、正解な気がする。


「グッ…バァ!」


 血が噴出し、魂喰いを濡らす。剣がメキメキと音を立て成長する。


「貴っ様…気づいていたのか?」


「なんとなく…だよ」


「正解だ!我が主!破魔の篭手に打たれたそこは、少しの間魔力抵抗値が落ちる。魔素の塊であるそいつらにとって、鎧を剥がされたようなものだ!後は…わかるな?」


「おうよ!ヘラ!」


「その呼び方は止めろ!」


 魂喰いに斬りつけられて魔力を削がれたのか、ベルゼバブの動きはかなり精彩を欠いている。今の俺もボロボロだが…これなら対抗出来る!


「調子に乗る…!?」


 俺らの数メートル先、晶が作った壁が突然音を立てて崩れた。どうした…無事なのか?晶…。





 僕が作った壁が瓦解した。その原因は、降り立った二人の天使によるものだった。


「あっ…こんなの…」


 ベルフェゴールが喘ぐが、それも僕も無視して一人の天使が言い放った。


「七つの大罪が一角、ベルフェゴール…お前の命運は、最早尽きた。永久に地獄を彷徨え」


 すらりとした長身に、ウエーブがかった流れる金髪。純白の衣に、孔雀のような翼…。そいつは、女だった。


「ミ…ミカエル…」


「そう。我が名はミカエル。神に似た者。貴様らを奈落に落とす、断罪の天使だ」


 ミカエル…大天使長ミカエル。なんだこいつの神気は…。僕にもわかる。規格が違いすぎる。


「安心して。貴方と仲間は大丈夫だから。旅立った貴方の大切な人たちも、ラファエルが送っているわ」


 もう一人の天使…僕に話しかけるそいつも、ミカエルとほとんど遜色のない神気を纏っている。圧倒的過ぎて、息をするのも忘れてしまっている。


「私はガブリエル。神の人、ガブリエル。私たちは、貴方の味方だから」


 ショートカットに落ち着いた口調。顔は下手すると僕より年下なんじゃないかと思う位童顔だが、見誤るはずがない。


「セ…熾天使セラフか……」


「安心しろ、人間。今は、お前をどうこうする心算はない」


「元より、貴方は創造主に選ばれた天国への扉(ヘブンズ・ゲート)の主。さぁ…心を空にして。私達が、貴方の敵を討ち滅ぼす力を授けます」


 ガブリエルの手が僕の頬をなぞり、僕は目を閉じた。輝くトラペゾヘドロンに、ミカエルの手がかかる重みを感じた。


「我、断罪の剣となりて、神の御名に応えん」


 目を開けると、ミカエルが僕の剣に溶け込んでいく。火…炎の魔力が、右手を焼く。


「ちょっ…ちょっと!聞いてないわよこんなの!ベルゼバブ!アスモデウス!」


 ベルフェゴールは何時の間に用意したのか、服を着て、飛びのいている。横目で見ると、膝をついたベルゼバブ、氷漬けになって身動きが出来ないアスモデウスがいた。ガラム、油断してんな?まだ生きてるぞ?そいつ。


「神の枝葉…ヒトの悲しみを満たす器。我は罪を受ける器とならん」


 僕の体内に、水の魔力が満たされる。相克する魔力を受け、僕の手が火傷を負うことはない。


「「時を越え、闇と氷の力を得て、地の底に其らを封せんとす!奈落ナビス!八寒地獄!!マカハドマ!!!」」


 更に白夜とガラムの魔力を吸収し、その剣先に渦巻く物は…。


「ブラック…ホール…」


「全てを引き寄せ、光すら閉じ込める地獄への入り口…。さぁ、やつらに引導を渡せ!」


 ミカエルの声が頭に響き、僕は本能のままに七つの大罪どもへ向け、その剣を振るう。


「待て!それは駄目だ!幾ら俺らでも、そこだけは抜けられない!」


「いや!嫌っ!まだ足りないの!キーちゃん!まだ貴方の命を吸い尽くせて…」


「むぉ!うえあえん!いあわ!えあうほろふえ!(クソ!抜け出せん!貴様!ヘラクトドスめ!)」


「待て!ノア!そこだけは嫌だぁぁぁ!!!」


「いや!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「ふおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 三者三様に、その黒い闇に吸引され、何事もなかったかのように辺りに静寂が訪れた。火が爆ぜる音だけが、周囲に響く。


「地獄の最下層の氷原は、いくら貴様らでも寒かろう…だが、同情はせんぞ」


「ノ…アキラ。お疲れ様。疲れたでしょう。今はゆっくりおやすみ」


 放心状態の僕からいつの間にか抜けたガブリエルが微笑むと、僕は糸が切れたかのように気を失っていった。

 待て!まだ白夜がいる…あいつも、やらなきゃいけないのに…つうか、任務が…。


 ………


 ……


 …

なんか一番大事なところなのに急いでしまった感があってすみません。ホントすみません…出勤時間が迫ってるんです…。短いスパンで二話とか、ホントに言わなきゃ良かった…。あっ、色々オリジナル設定加えてます。篭手とか、天使の名前の意味微妙に変えてみたり。あと、個人的には同性愛は否定も差別もしません。私に関る事でなければですが(笑)

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