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クリエーター  作者: 如月灰色
《第一章 二つの世界》
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~第七話~いざ、魔術師団へ

こんばんわ、早くも参上しました白カカオです。いや何があったって反響をくれた方々、本当に、本っっ当にありがとうございます!嬉しくて嬉しくてニヤケ顔が止まらないので、調子こいて早くも次話いっちゃいます!いっちゃうのは頭の中だけにしろとだれか止めてください…はじめましての方も、お楽しみいただければ幸いです。

「それで、です。大臣?僕の後衛魔術師団入り、許可してもらえますね?」


 絶句のまま固まった大臣に追い討ちをかける。貴方が国王の次に実権を持っていることくらい、僕の頭にはきちんと入っているのですよ?何せ、王族と昼夜つきっきりでいる官職なんて、貴方位だ。


「…この場ですぐ…とは参りませぬ。今一度、お待ちください。私めはあくまで魔法監督省の大臣。護国騎士団とは管轄が異なりますゆえ、魔術師団長とかけあって参ります」


 そういうと、大臣はよろよろと執務室から出て行った。なんか、無茶言って悪いことしたかなぁと少し反省してみる。エリーはポカーンとしている。返事がない。ただのしかば


「アキラ、魔術師団に入るの?」


 エリーが曇りの無い瞳をこちらに向ける。初めて会った時は王族らしく振舞っていたが、こうして見るとまだあどけないローティーン(?)の少女なのだ。


「あぁ」


 ニコっと笑って短く返事をする。


「でも、魔術師団だって、兵隊さんなんだよ?人(?)、殺すお仕事だし、もしかしたら殺されちゃうかもしれないんだよ?」


 どうやら、今になってやっと僕が戦場に赴くことへの実感が湧いてきたらしい。


「あぁ。わかってるよ。僕はきっと敵を殺すし、殺されるかもしれない。だけどね、大切な人を守ることって、きっとそういう事なんだ。誰かを守る為には、他の誰かが傷つかなきゃいけない。そりゃ話し合ってみんなで仲直りできれば一番いいよ?だけど…全部が全部そうはいかないんだ。山脈の向こうには、こっちの人を傷つけようとする人がいっぱいいる。中にはいい人もいるかもしれないけど、僕にはそれがわからない。だから少なくとも、僕は僕の周りの大切な人たちを守りたいから、戦うんだ」


 宥めすかすように、ゆっくりエリーに話しかける。今は全部わからなくても、一部だけでも伝わってくれればと。


「大切な人…?」


「うん。エリーや、国王様、王妃様にアレン王子、セリーヌ王女にディーン王女。大臣と、食堂のおばちゃんも、この国の人みんな」


「この国の人みんな?会ったことない人も?」


「うん。会ったことなくても、誰かを失えば誰かが悲しむから。それと、後僕の世界の家族や友達もね」


「うーん…」


 エリーは少々消化不良を起こしている様子。まだ早いかな?こういう話題。


「エリーだって、家族とか友達がいなくなったらいやでしょ?」


「うん…」


「それと一緒さ」


「だったら…」


「んっ?」


 俯いていたエリーが僕を見上げる。


「アレン兄ちゃんやアキラもいなくなるのも嫌。だから、戦争に行っても、絶対帰ってきてね?」


「あぁ。約束するよ」


 じゃあ約束っと、不意打ちにアキラにキスする。ホント、マセガキだなこいつ。キスが持つ色んな意味、わかってやってるのか?つうか色々死亡フラグ立ててる気がするんだけど…気のせいだと思いたい。あぁそりゃもう全力でっ。



 突然、バタンッと乱暴に扉を開ける音がした。


「ここか?大臣。騎士団に入りたいという人間のガキがいるのは」


「待たれよマドラ団長!そのものは我が魔術師団を希望されているという話ではないか」


「なぁに、非力なくせに戦場に立ちたいなんて命知らずのツラを拝みに来ただけだ。そうピリピリするなセラトリウスの爺さん。あぁ?こいつか?この真昼間から王女様と乳繰り合ってるこの坊主がそうなのか?」


 こいつホントにエルフか?ってくらい筋骨隆々なおっさんと、白い髭を胸下まで伸ばした爺さんのご登場。なんか…テンプレ通りだ。わかりやすくていいけど。


「ちっ、乳繰り合ってなんかないもんっ!」


 エリーが顔を真っ赤にして反論するが、そういうのは得てして逆の結果を生むんだけど…。


「まぁまぁ。アキラ様はエリー様のお気に入りじゃからのう」


 ほら、そこの大臣ジジイが何の解決にもならんことを言う。


「そんなことは置いておいて、本当にしておるのう、指輪」


 セラトリウスと呼ばれた爺さんが僕の指を見て目を丸くする。流れが変わったことに、なんとなくホッとした。なんでだろ?


「じゃあ、やっぱりただのクソガキではないんだな?」


 マドラと言ったか?このおっさん。僕、もう2○歳のそろそろおっさんの仲間入りする歳なんだけど…。まぁエルフは寿命が長いからそういうもんなのか。少し腹立つけど。


「だからそうだと言っておろうに」


 大臣が頭を掻く。なんか…苦労してんだな。散々けなしてごめんなさい。そりゃ男色に走ってもたぶん文句は言われないよ。


「アキラ様?何か失礼なこと考えてませんでしたかの?」


 おっと、顔に出てたか。


「声に出ておりましたぞ!?」


 それは失敬。


「面白いガキだな。マリオンの爺さんや。こいつと一手合わせさせてくれんか?」


「何を言って「いいですよ」何ですと!?」


 大臣の言葉より早く、僕が返事した。人間様を舐めてるおっさんに一泡吹かせたくなった。


「面白そうじゃないか。マリオンや、一つ許可してはくれんかの?」


「セラトリウス、お主まで…」


「魔術師に必要なのは冷静さと判断能力。…まぁ勝てるとは思えんが、その辺、じっくりと観察させてもらいたいのでの」


「よし!賛成多数で決まりだな。早速演習場へ行こうぜ」


 マドラ団長が息巻いてノシノシ歩く。大臣、面倒ばっかかけてごめんなさい。

あっ


 

 …というまに演習場へ。コロシアムのような丸い場内に、囲む観客席。…つうかまんまコロシアムだ、これ。


「ようし!勝負は簡単、どちらかが負けを認めるか、あるいは審判の判断でこれ以上は危険と見なされたら終了だ。異論はないな?」


「うん、それでいいよ」


 ちなみに審判はセラトリウス団長。大臣は公平な判断が出来かねるということで、エリーと観客席へ。

 …なんで満席なの?


「おぉぉ、アレが人間か」


「意外と小さいな」


「私人間って初めて見たぁ」


 …どうやら僕が客寄せパンダだったみたいで。噂話に戸は立てられぬって言うからなぁ。つうか小さいって言ったヤツ、後で一撃かます。これでも日本人の平均ジャストはあるんだよ!…あくまでジャストだけど。


「アキラ君やーい!頑張れよー」


「なんでアンタまでいんだよ国王っ!!」


 …この国、ホントに救う価値あんのか?


「じゃあ…そろそろ行くぜ?」


 ゴング…があるかは分からないけど、合図も待たずにいきなりマドラ団長が駆け出した。これ、軽いめのスチールプレート借りたけど、やっぱ慣れないから動きづらい!

 ゴウッと言う音と共に背後の地面がえぐれる。外した?…違う。わざとだ。証拠にこっち見てニヤニヤやらしい笑みを浮かべている。


「こんんのやろ…」


 急いでその場を離れると、あくまで余裕しゃくしゃくと言ったところか、首と手首を鳴らしている。


ーーー落ち着け、主。興奮しすぎるな。


「わかってるよ!」


 始める前は自分でも驚くほど落ち着いていたが、いざ蓋を開けると鼓動の早鳴りが自覚出来るほどあがっている。心の中で落ち着けと数度唱えながら相手をよく見る。さっきの攻撃をもう一回するとなると、あくまで直線運動だ。避ければいいだけだが、プレートの動きにくさに余裕を持って早く行動に出ると、進路変更されて追撃を喰らいかねない。見ろ…相手をよく見ろ。そして、自分の動けるギリギリまで見切って…


「今っ!」


 サッと…とはいかず無様に転げ回りながらもかわすことに成功した。さっきまで立っていた所から土煙が上がっている。


ーーーよし、それだ!主よ。


「まだだっ」


 土煙の中で動く影を見つけ、もう一度横に転げ回る。ワンテンポ遅れてもう一度轟音が鳴り響いた。


「ほう…二度目はともかく、三度目もよけたか」


「あいにく、視力だけはいいからね」


 余裕ぶって見せるが、すでに肩で息をしている。プレート、マジ動きにくい。


「だが、よけてばかりじゃ勝負にならん…ぞ!」


「わかってるさ!」


 ぞと同時に突っ込んできたマドラ団長と僕までの間合いに意識を集中させ、魔力を放つ。ぶっつけ本番だけど、大事なのはイメージならきっと上手くいく…ハズ!


ーーーズゥンッ!


 と地面が響いて、高さ2m半位の土の壁が出来る。質量保存の法則によってか、その全面と背面に深い堀が出来ていた。観客からどよめきが起きる。ちょっと気持ちいい。


「思ったよりやりおるな。だが、俺の前では無駄だよ」


 壁の向こう、マドラ団長の声が低く唸った。


「…拙い!」


 言うが早いか、この日三度目の土の味を味わう。初めての戦闘での魔法の感動に酔う時間すら霧散させ、壁を爆散させたマドラ団長の恐ろしい笑顔が目に映る。


「ふはっはっは。本当に楽しいな、坊主」


 うるせえ。こっちは死ぬ気でやってんだ。楽しむな戦闘ジャンキー。でも…


「やっべ。ちょっと楽しくなってきたわ」


 どうすればこの化け物に膝をつかせれるんだろう?


ーーー主、いかんぞ。争いを楽しむような


「違うよ…」


ーーー何?


「殺す気なんてこれっぽっちもないさ。ただ…どうすれば一撃食らわせれるか、考えるだけでワクワクする。一撃、一撃でいいんだ。あいつのド肝を抜く、一撃があれば…」


 ダービーとの会話の間にも、マドラ団長の攻撃は手を緩めない。進路の土をえぐり足場を崩し、突進の勢いを時の魔法で緩め、逆に自分の速度を加速させてもなお、マドラの攻撃は止まない。ところどころに傷を受け、体が痛みを訴えても、僕は笑うのを隠せない。そんなエルフの騎士団長と突然現れた人間のまさかの壮絶な『試合』に、観客席は静まりかえっていた。



「なぁ、おっ…マドラ団長」


「なんだ坊主?」


「そろそろ僕ガス欠なんだ。次で最後にしよう」


「根性なしめ。もうへばったか」


「うるせえよ」


 そう。もう限界が近い。体の痛みはアドレナリンが誤魔化してくれているが、気力がもう限界に近い。あーあ…まだ一泡吹かせてないのに…。


「さぁ…来なよ」


「自分で動けぬか。しょうがない、これで終わりだ!」


 マドラ団長の最後の一撃が来る。せめて、これを完璧に防いでこの試合を終わろう。…完敗だ。気持ちいいくらいの。


「っはああぁぁぁ!!!」


 人間、精一杯力入れると出る声ってやっぱこれなんだなとどこかで考えながら、最後の力を振り絞る。目の前にせり立つ、壁。


「馬鹿めっ!これでは最初と変わらんだろう!?」


「違う、違うよおっさん…今度こそ、怪我するぜ?」


 僕が仰向けに倒れるのと同時に、鈍い音が耳に届いた。最初に土の壁でブラインドを作り、鉄製の胸当てとヘルムを変異させ内側に内蔵させた、特製の壁。マドラ団長のあの突進なら、死にはしないだろうがダメージは与えられるだろう。カウンターでドン。


ーーー主…主!よく戦った。見事であったぞ。


「へっ…もう精も根も尽き果てたっつーの…」


 やけに印象的だったのは、澄み切った空。こっちの空も僕らの世界の空も、変わんないなぁ…って。


「勝負ありじゃ!勝者、マドラ団長!」



 今、僕はさっきまで戦っていたマドラ団長の背中にいる。早い話が、いい歳こいておんぶされてるわけだ。本当は抗いたいが、そんな体力どこにもない。実際、最後の方は気力だけで戦っていた。


「のぅ若造」


「一応格上げ…されてんのか?坊主から若造」


「一応な。お前、ウチに入らねぇか?」


 僕をおぶっているマドラ団長の頭には幾本か赤い筋が流れている。そうやら厚い鉄の板の部分にちょうど頭が入ったらしい。…偶然だけど。


「遠慮するよ。武器の扱いより、魔法の方が僕には合いそうだ」


「そうか…」


「それに敵が見当もつかないような魔法で痛い目合わせる方が、楽しいし」


「そいつぁいい性格してるわ。やっぱ魔術師向きだ、お前のひねくれ方」


「ひねくれとは失敬な!」


 隣のセラトリウス団長が憤慨する様が、なんだか可笑しい。


「ちなみに聞く?僕がどんな隠し玉持ってたか」


「おうおう!聞こうじゃねぇか」


「あの土の壁に無数の棘を生えさせて…」


「えげつなっ!」


「なぁに、そんなもん俺が本気の大剣を持ってすれば…」


「のぉ、なんか、仲良くなっておらんか?あの二人」


 間に入ったツッコミを虚しくスルーされ、国王御一行に話を向ける大臣。


「まぁ…いいんじゃないか?上手くやっていけそうではないか、騎士団と魔術師団」


 国王が取りまとめた。珍しい事に。


「アキラの護国騎士団入り、これで文句なしだねっ?」


「うん、初めての実戦であの実力を見せつけられたらね…」


 アレン王子が、あまりにも様変わりした演習場を思い出した。アレは…騎士と魔術師の戦いじゃない…ちょっと落ち込む王子だった。


 何はともあれ、神谷晶、自分の意外な一面を発見し、護国騎士団入隊決定…。





 追記

 翌日、二人仲良く…もとい連帯責任で巻き込まれた魔術師団長と大臣の四人が黙々と演習場を直す光景が見られた。

「これ、兵士の基礎体力作りにやらせればいいのに…観客席で煽ってたんだし」

 っと、晶の呟きに皆が気づかされたのは日が傾き、作業も終了間近のころだった。

ということで、いかがでしたか?初めての晶の戦闘シーン。…ごめんなさい、もっと上手く書けるように精進します。それとエリーがどんどんアホの子みたいになっていく…そして晶が最強系にズンズンと…罵声非難どんどんください、覚悟してます。…それではまた次話、お楽しみに。

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