~第六十六話~招かれざるインベーダー
ども、読者さん。ども初見さん。白カカオです。これを書き始めてから四ヶ月経ってました。最初のペースを貫いてると軽く百話いってそうな感じでびっくりしてます。歌、上手くなりたいです。
鳳凰の背にガラムが乗り、不死鳥の背中に僕が乗り、一同キュートスへ。帰りにケット・シーの一族にマンティコアのことを報告するのを忘れてたことに気がついたけど、まぁいいやと開き直って不死鳥に意識を向ける。なんか息が上がってるし、やっぱこの速度で飛ばすのは疲れるのか?
「なぁ、大丈夫か?不死鳥」
「なに、全く問題ない…ふぅ」
「いや、やっぱ無理してんだろ?回復かけてやろうか?」
「いや、数百年ぶりに殿方に乗られていると考えると…」
「クソ変態かお前は。僕は降りてガルーダ使うぞ」
「いや、嘘だ。私に乗っててくれ」
その乗るって単語に他意を感じるんだよ!…まぁいい。僕は寝る。羽毛でふかふかだから寝心地いいし。
「ミャー」
僕の腕の中に戻ったマンティコアがごろごろと顔をこすりつける。ああ、癒されるなぁ…。おやすみ、マンティコア。
「ニャー!ミヤー!」
わかったわかった。ダービー、相手してやれ。
「我は今指輪だぞ…」
うん、知ってる。おやすみ。
「ダービー、今何時だ?」
「こっちに時間の概念がないから何とも言えんが、日の傾き方から言ってだいたい夕刻四時くらいか」
気づくと、眼下にセラスの大地が広がっている。この速さだと、キュートスまであと三十分足らずか。あくまで体感だけど。
「なぁ不死鳥!キュートス国の手前で降ろしてくれ!グレンも呼んでやっから!」
「お主の温もりを感じられるのもあと僅かか…後ろ髪が引かれる思いよ」
「お前の後ろ髪ってどこだよ。つうか気色悪いこと言うな。覚えてるか?元々僕は鳥嫌いなんだ」
「女の子に向かって気色悪いとはなんぞ。私は今悲しみの炎に身を焦がされて…」
「おい馬鹿!やめろ!僕が焦げる!!」
こいつ、自分が不死鳥だってこと忘れてやがる。抑えていた不死鳥の身に纏われた炎が一気に炎上しやがった。熱いよ馬鹿!!
それから数分後、キュートス国手前についたんだけど…。
「迎撃体制用意!!!」
ちょっと待て!着陸する手前不穏な声が聞こえてきたぞ!?
「後衛騎士団第二部隊弓兵配置完了しました!」
待て待て待て!!勘違いされとる!!僕僕!!敵違う!!
「待て!僕だ!後衛魔術師第三部隊長のアキラだ!!」
「えっ…」
いまの声はジュダイさん!やっと見覚えのある声が聞こえた!よし!これで勝つる!
「ブ○ント自重」
「ちゃんとさんをつけろよ馬鹿指環」
「ふん!助かったと思ったらその気の抜きようか。よくそれで生き残れたもんだな」
「お前とは鍛え方が違うのだよ、貴族様」
「きっさま…!」
ガラムが鳳凰から飛び降りて、ゲイボルグを構えやがった!馬鹿!ゲイボルグ級の武器を構えたら…。
「「「ギェヤーーー!!!」」」
ほら!ロック鳥とサンダーバードが騒ぎ出しやがった。まだ乗っている部隊員達が振り落とされている。まぁほとんど高度がない状態まで降りてたから、大した怪我はしないと思うけど。
「全員整え直せ!!」
「待って待ってジュダイさん!」
「おいおい敵襲かぁ?」
もんのそとからおまつりおとこがあらわれた!
「グレン!ちがっこれは…」
僕が言うまでも無くレーヴァテインを構えるグレン。だから人の話を聞…。
「やめなさい!!!」
不死鳥からこいつとは思えない声が聞こえる。その途端、暴れていた鳥どもが一気に大人しくなった。
「えっ…」
待て、お前火口のときこれだけの人数はどうのって言ってなかったか?
「ご息災でしたか…貴方…」
不死鳥がグレンに顔を向け、懐かしそうな表情を浮かべる。あぁ、なるほど。
「アキラ」
「ん?」
「帰って来て早々悪いんだけどさ…」
「あぁ、コレ?こいつ、お前のレーヴァテインの不死鳥の嫁だってよ」
不死鳥の背中から飛び降り、親指で鳥を指してやる。
「長い間、寂しい思いをさせた、お前。変わりなかったか?」
グレンのレーヴァテインからいきなり声がする。僕とグレンが驚く前に、
「嗚呼、四百年ぶりの貴方の声…!それだけで私の下半身は…」
「全年齢向けだっつったろ馬鹿鳥!!」
思わず突っ込んでしまった…。
「ふっ、今夜は我の剣がお前の…」
「乗っかるなこの馬鹿剣!」
グレンがレーヴァテインの腹を門の壁に叩きつける。よくわからないけど、アレは痛そうだ…。そしてグレン、グッジョブ。
「あぁ!貴方!」
「うっさい!!」
「なるほど…客観的に見て、我もああいう扱いを受けていたのだな。主、これからはもっと我を」
「却下。お前もアレも自業自得だし」
「ねぇ、俺らの武器もああなのかな…」
「知らない。…考えたくない…」
ようカイムにシーリカ。どうしたそんな疲れた顔して。
ここは会議室。議題はシーリカの言っていた例のゲートの話。集まっているのは隊長格ばかりで、副官すら人払いされている。ちなみに僕がアララギ島に行ってる間、カイムは後衛魔術師団第四部隊長に昇格している。だからなんで僕がいない間に事が進むんだ…。
「して、シーリカ。東の平原の現状を報告せよ」
「はい。現在もゲートは拡大中。東の平原の民に、避難勧告は出されていないようです」
円卓に姿勢正しく座るシーリカが、神妙な面持ちで報告する。
「待て、ゲートってせいぜい人一人分の大きさじゃないのか?」
「それは、アキラが来る時のゲートでしょ?ゲート自体は、大きさは不定形なの。石ころサイズから、文化交流の時に国王様と大臣が作った人数人なら余裕で入るくらいのサイズまで…。でも自然発生型でここまで大きくなって、まだ成長し続けているものって…」
「…あいつらのテコ入れだろうな」
国王が眉間に皺を寄せて苦々しく口を開く。こうして見ると、迫力あるんだな…。
「あいつらと言うと…」
ジュダイさんが聞くと、セラトリウス団長が国王の代わりに答えた。
「七つの大罪…ギラン側を支配し、我らにとっての最大の敵じゃよ」
団長の言葉に、カイム、シーリカ、ガラムが下を向く。なるほど、こいつらは因縁をしっかり見据えてるもんな。でも、こいつらの敵が誰なんだろう?
「七つの大罪…傲慢のルシファー、ベリアル、憤怒のサタン、アラストル、嫉妬のレヴィアタン、ベルゼバブ、怠惰のベルフェゴール、アスタロト、リリス、強欲のマモン、ベヒモス、暴食のベルゼバブ、モロク、色欲のアスモデウス、ベルフェゴール。計十三名からなるこの世界の闇を司る者達だ。まぁ…こやつらに関しては、君達の方が知っているだろう?アキラ君、シーリカ、カイム。グレンにガラム?」
突然国王から名前を呼ばれ、僕ら五人が一斉に顔を上げる。
「国王!!それは…」
「もう、いい頃合いじゃないか?大臣。彼らは、この国の…世界を守る為に重い使命を背負っている。彼らの負担…我らも幾分でも背負わせてもらおうとは思わないか?」
「しっ、しかし…」
「それとも彼らのような若者が、身を裂くような思いをしておるのに、みな任せて我ら年長者は胡坐をかいておればいいのか?」
「うぬ…」
「もういいだろう?セラス南部の湖より封印を解かれ、今この城にある預言書『ナコト写本』。これに書かれた『原初より生きとし、そして継がれし魂。すなわち初まりの者たち。六人が再び集いし時、再び聖と邪の戦が起こるだろう。その者達、深き痛みと共に地に堕とさん』…初まりの者たち、スターターズ…。君達のことであろう?神なる神器に選ばれし五人よ」
会議室を静寂が支配する。これは…何とも居づらい。
「大変です!」
長く感じた静寂の時間は、けたたましい扉を開ける音によって壊された。
「貴様!立ち入り禁止を書いてあるだろう!!」
「申し訳ありません!カルバン団長!しかし火急の…」
「よい、話せ」
「はっ!」
国王の許しに、下級騎士が片膝をついて報告する。
「東の平原より報告!ゲートが開かれました!中から黒尽くめの人型の軍勢が攻め込んでいます。平原の長、九尾を筆頭に迎撃しておりますが、やつらの妙な遠距離攻撃により確実に削られております」
「妙な攻撃…?」
「はっ!魔法ではない物理攻撃のようですが…これが、回収してきた物です」
下級騎士が国王に何かを渡す。不意に悪寒が走り、急いで国王の下に寄る。
「アキラ君?」
「これは…」
国王の手のそれを覗き込み、戦慄した。なんでこんな物がここに落ちているんだ…。
「アキラ君…?何か…」
「九ミリパラベラム…これは…僕の世界の武器です…」
そんな…なんで…。
「主!落ち着け!」
「僕の世界の人間が…何で…」
「落ち着け!主のせいではないだろう!?一旦落ち着くのだ!」
「どういうわけかはわかりませんが…アキラ君には悪いですが私達の世界が侵略されていることに変わりはありません」
「カルバン団長!?」
後衛騎士団第一騎士団長になったアレンさんが制止してくれるが、僕の為とわかってても他人事にしか聞こえない。思考が追いつかない。
「全騎士団長に告ぐ。これより東の平原にてセラス防衛戦を行う。至急準備せよ!」
お詫び。七つの大罪を冠する悪魔に関しては、オリジナル要素を多分に含めます。あと9ミリ弾を出しましたが、ミリ系に関してそこまで明るくないです。まぁ創作ということで許してください。