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クリエーター  作者: 如月灰色
《第三章 楽園》
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~第六十五話~スクランブル

最近週一ペースで申し訳ない、白カカオです。

「…そろそろ出てきたらどうだ?」


 鳳凰が僕の後方に向かって声をかけた。山肌の影から、ぞろぞろとガラム率いる前衛第一部隊と後衛第三部隊が現れた。


「お前ら、何時の間に…」


「朝起きたらアキラさんがいないもんで、魔力探査と風魔術師の追い風(トップスピード)を使って来ましたよ。強力な魔道反応を感じて心配してきたら、大きな鳥と雑談ですか、全く…」


「こいつとこの周囲の有様を見て感想がそれか。全く、時々お前が怖いよ」


「それは褒め言葉として受け取っておきます」


 デンゼルの後ろを見ると、僕の部隊の風魔術師が肩で息をしている。まぁこの人数全員に補助魔法をかけたんだから当然か。苦労かけたな。


「ちなみにガラム部隊長も、こう見えてなかなかの狼狽っぷりでしたよ」


 デンゼルがニコニコ…というよりニヤニヤしながらガラムを見やる。


「ばっ!…俺の任務が、こいつのポカのせいでしゃかになることを恐れただけだ」


「はいはいツンデレツンデレ」


「貴っ様…」


「ところでアキラ様。先ほどからシーリカ様から伝令が繋がっておりますが」


「お前っ!早く言えよ!」


 とりあえず鳳凰と不死鳥を置いといて、ルバートが取り出した水晶…のような玉を受け取る。これは中に雷属性が封されていて、魔力の増幅や指向性を高める効果がある、なかなかのアイテムだ。


「はいはいどうした?」


 友人との電話のように適当な対応をする。仕事という意識が感じられないのはほっといてくれ。


『はいはいじゃないわよ!こっちに今すぐ戻ってきて!東の平原に不自然な魔道反応があるの!アンタの任務は今これを聞いた時点で終了!そっちの調査に入るわよ!』


「全く、人使いが荒いと言うかなんというか…」


『文句言わないの!セラスにとっては勿論だけど…私達にとっても大変なことになりそうなことだから…』


 シーリカの声から必死な様子が伝わる。なんだよ矢継ぎ早に…休ませろ。


「それは…どういうことだ?お前さんが『私達』ということは、我らに関係あることなのだろう?」


『あっ!ダービー!?アキラより貴方の方が物分りよさそうね。ちょっと待ってて』


 玉の向こうからガサゴソと音がすると、密談モード…というべきか、周りに聞こえないように音声を僕らだけに向ける。これもこの玉の機能なのだから驚きだ。科学が発達しないわけだ。


『さっきは他の部隊員がいるだろうから説明をぼかしたけど、ここからはトップシークレット。魔道反応の正体は、たぶん新たなゲートだと推測されているの。そしてその付近から…見覚えのある魔力の気配が感じられたわ』


「見覚えのある気配?」


「チッ!空気が読めねぇのか貴様は。部下どもに聞こえるだろ」


「あっ、ごめん…」


『色欲のアスモデウス、ベルフェゴール…』


「……あいつらか…!!」


 ガラムの表情が険を帯び、若干魔力の放出が見られる。なぁ、なんでこいつこんないきんでんだ?


ーーー…主は他の者と比べて、まだフィルターのかかりが強いようだな。七つの大罪ども…やつらは主達がいた原初の世界の崩壊の直接的な原因を作ったとともに、主ら初まりの者たちに深く因縁を刻み付けた。『色欲』のアスモデウス、ベルフェゴールの二人…やつらのせいで、ガラムの家…ヘラクトドス家は没落したのだ。


 ガラムの家が没落?公爵家だったか?


ーーーあぁ。最も有力な家系であったヘラクトドス家に侵入したやつらが当時の当主…ガラムの父を唆し、神器戦争の引き金を作ったのだ。戦時は一応有力氏族として前線から離され庇護を受けていたが、戦争が終結した後、ヘラクトドスは民衆から糾弾を受け、ガラムなど子息の誰かに相続する前に自殺。その魂はイスカリオテにて地獄の最下層、コキュートスに導かれたと言う。


 当主を背信の徒としておいやられ、ヘラクトドス家は没落。戦後でインフラも整わない内に民衆の手によって最有力の権力者を失った世界の中心の国は自ら崩壊の道へ…か。まぁ、背信って言っても、別に何か信仰があったわけではないだろうけど。


ーーーその通りだ。つまり『色欲』の二人は、ガラムにとって前世からの倒すべき怨敵というわけだな。…我らにとっての『強欲』のベヒモス、マモンのようにな…。


 ちなみに、他のやつらにもいるのか?そういう敵が。


ーーーすまん、我の記憶もまだ完全ではないのでな…。


『ちょっとアキラ!聞いてる!?』


「おっ、おう!聞いてるぜ?」


『じゃあすぐ戻ってきてね!今日中に!』


「今日中!?」


ーーーブツッ!


 無理難題押し付けて勝手に通信切りやがった。ここから海岸まで、どんなに頑張っても一週間近くかかる。風魔術師の疲弊具合を考えると、まぁそれくらいが妥当なラインだろう。そこから今度は小舟で二日。来る時はバハムートに引っ張って貰ったからすぐ来れたけど、人力では流石に速度に限界がある。土属性と雷属性の肉体強化をかけてもそれくらいが精一杯だ。更に航海中に襲撃を受けることも考えるとさらに延びる可能性があるし…どんなに頑張っても半月はかかるぞ!?それを一日て。無茶にも程があんだろ。


「…何をしている。早く行くぞキーランス」


「…だな。半月かかる道のりだ。早く出るにこしたことはないか」


「何を言っている。一日で充分だ」


「…は?」


 何を言ってるんだこいつは。アララギからキュートスまで、どんなだけ時間かかると思ってるんだ。こんな計算もできないのかこの貴族様は。


「おい鳳凰!」


「なんだ、ヘラクトドスの坊よ」


「…まぁいい。俺らを乗せてけ。ロック鳥やサンダーバードどもにも指示を出せ。今日中に俺らをキュートスに運ぶのだ」


 待て待て待て!いきなりナニヲイッテン…


「仕方ない。大罪人どもが関っている以上、それくらい力を貸そう」


「えぇーー!?いいの!?」


「アキラ、貸し一だぞ。その代わり、数百年ぶりに旦那の顔を見せてくれ」


 鳳凰の隣に侍っていた不死鳥も同調した。お前はそれが目的か。


「…ふぅ。なんか他に手段もないか。総員、搭乗準備!整い次第至急キュートスに向かうぞ!」

出勤前なので、半端ですがこれでご勘弁を…。次話は、きちんと時間取って書きます。

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