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クリエーター  作者: 如月灰色
《第一章 二つの世界》
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~第六話~キュートス国、再び

こんにちわ。あなたの白カカオです。…すみません。第五話読み返して見たら、誤字とか酷いのなんの…気がついた範囲で加筆、修正しました。

 金曜日。月末前の週末の追い込みに追われた僕は、生気の抜けた目で車を走らせた。自分でも気分で運転技量ががらりと変わる自覚はあるので、例の自販機で一休み。ここまで来れば帰った方が楽なんじゃないかという意見もあるが、気分の問題だ。寄り道して帰るということに意味があるのだ。


「なぁ、ダービー。後で向こうに顔出そうと思うんだけど、どうかな?」


ーーーいいのではないか?主よ。汝の欲する事をせよ、と、昔の偉人も言っておろう?


「なんか言い回しが微妙に違う気もするけど。そしてお前に昔のとか言われてもなんか違和感ある」


ーーーほっといてくれ。しかし主よ。どういった風の吹き回しだ?


「あぁ、ただなんとなくだ。それに、ちょくちょく顔出してあっちのこと勉強しないと、いざという時に困る」


 そう。実はもう覚悟は決めていた。やっぱり難儀を抱えている者を放っておける程、僕はドライにできてない。お人好しすぎるとも言われるが。それにどちらにせよ、僕にいずれ白羽の矢が立つこともわかっている。こっちの世界では一般人のサラリーマンだが、向こうまで含めると『ただの』とか『一般人』とかそういう素晴らしい言葉は効力を失ってしまう。なんせ国王のお墨付きだし。嬉しくないけど。


ーーーそうか…大した心がけだ。


「なに、後で面倒になるのが嫌なだけさ」


 …というか、半分はお前のせいだ。ほぼ毎晩人の夢に邪魔しにきやがって、さらに人類や亜人や神々の闘争の歴史なんて見せられたら嫌でも覚悟が決まる。僕はそういう難儀な性格なのだ。最初は流石にびびってたけど。つうか確信犯なんじゃねぇか?こいつ。


ーーーならば我はそれまで麗しい汝の姉君と妹君の姿を目に焼き付けるとしよう。キュートスに行けばまた麗しい姫君達も見れるしな。いやはや、汝を主に選んでよかった。


「しばらく寝てろ!この色情聖霊が!」


 強制的にチャンネルを閉じた。僕の中の魔術回路が相当緩くなったおかげで、暇人(?)なこいつはポンポン外に意識を向けて来ているのだが、力をつけたのはこいつだけではない。こいつとの接触で魔術的思考がすくすく育った僕も、自分の意思でチャンネルの開閉位はできるようになった。…にしてもこいつ…ただの変態ではなかろうか?順子なんてまだ未成年だぞ。


ーーーなに、そんな瑣末なことは主の国の決まりごとにすぎ…


「引っ込んでろ!!」


 こいつ、本当に凄いアイテムなのか?



 夕食を終え、トレーニングウエアに着替えた僕は、日課にしているロードワークに出た。田舎は車社会だから、意図的に運動しないと簡単に豚になってしまう。よくここまで体絞ったもんだ、本当に。数キロの道のりを歩きつつ走りつつ、ゲートが開き易いという自販機前。


「さて…行くか」


 ひとりごちて虚空に集中する。魔力の練り方は、癪ながらダービーのおかげで大分慣れた。


ーーー主のこの『とれーにんぐ』とやらもな。健全な魂は健全な肉体に宿る、とはよく言ったものだ。だがゲートの顕現はまた力の種類が違うからな。どれ、我も手を貸そう。


 それは助かる。ちなみにトレーニング中こいつに話しかけて暇を潰してるのは秘密だ。主にこいつに。癪だし、調子こきそうだし。

 無事ゲートが開き、数日ぶりの異世界旅行。ダービー曰く、正確には次元の位相が違うだけで隣合わせに存在している世界ゆえ、異次元と表現しても差し支えない、そうだ。異次元旅行か。そういやハ○ヒで異次元人だけまだ出てなかったよな…たしか。…とか考えているうちにゲートの出口へ。そして懐かしのキュートスへ…


「アキラーーーー!!」


 ぶっっ!いきなり鳩尾にタックルを食らった。襲撃かと思ったらエリーだった。とりあえず、痛い。悶絶する時間くらいくれ。


「ってぇ…つうかなんでここにいるんだ?もう結構な時間だぞ」


 確か向こうを出たのは22時を回っていたはずだが。


「なんとなくアキラの魔力の気配がしたから抜け出してきたっ!」


 犬じゃあるまいし…。つうかエリーでもわかるなら国王もわかってそうな気が…


「エリー!アキラ君やーい!」


 ほら、やっぱり。子供か。


「やっぱりアキラ君か。待っておったぞ。さぁ、とりあえず我が城へ」


「展開はやっ!いや、こんな夜分遅く悪いっスよ。今日は適当に野宿して、明日日が出たら伺います。にしても国王まで…」


「アキラ君の匂いがしたのでな」


 匂いて…なんかエリーのときよりやだな…。つうか時間まで計算に入れなかったのは流石にまずかった。科学が発展していないこちらさんはもう寝ててもおかしくない時間だ。なに、こんな暖かい夜なんだ、風邪も引かないだろう。


「いいのかな?アキラ君。冥の刻はすなわち地獄の時間。悪霊レイスなんかはこの時間活発に動き回るからのう。実戦経験もないのに、いやいや大した男だ…」


「泊めてください国王様」


 それは流石に泣きが入る。幽霊こあい。


「さぁさ、参ろうか」


「アキラ、汗臭いよー?」


 三人仲良く城を目指す。汗臭いなら嗅がなきゃいいのに。


「あぁ。あっちの世界で運動してきたからな」


「うむ、日々の鍛錬を欠かさないとは見上げた騎士精神よ。他の騎士共にも見習わせたいもんだ」


 待て…?僕は騎士じゃねぇぞ?


「湯浴みでもするがよい。そのままでは体調を崩してしまう」


「私も一緒に」


「だが断る」


 このガキんちょめ。


 夜分遅くに訪問し風呂を貰い一泊させて貰うなどと非常識にも程がある僕は、朝食までご列席させて貰った。なんというVIP待遇。


「ときにアキラさん?今回はどのような事由で?」


 王妃がこないだと同じ微笑で僕に尋ねる。まぁ深夜近くに突然訪問したとなっては聞かない方がおかしい。


「勿論、私と遊びに」


「違います」


 ここの国王、こんなんで国統治できてんのか?


「違うよねー。私と遊びに」


「それも違う」


 馬鹿親子…。


「此度は一つ相談と…この世界についてもう少し教えていただけたらと思い参りました」


「ほう、相談とな…早速聞こうか。必要なら人払いもするが?」


「いえ、このままで結構です」


「しかしなんだ。急になんだ改まって…」


「真面目な話だからです」


 流石に普段の調子でこんなことは話せない。


「国王、僕も自分の世界に帰って色々考えました。この世界のこと、僕の世界のこと、自分自身のこと…そして一つ、決めたことがあります」


「結論を聞こう」


 国王がシリアスモードに入ってくれた。良かった。


「僕を、この国の軍に入れてください」


 頭の中で『僕はエ○ァンゲリオン初号機パイロット、碇シ○ジです』とか先に集中力が切れたり。決して表情には出さず。


「なりませぬ!」


 予想外に、ディーン王女が反論する。


「アキラ様はいかに素晴らしい素養をお持ちであれ、あくまで客人です。この国の、この世界の問題はこの世界の住人が解決すべきです」


 渋い顔の国王。


「ディーン王女様、お聞き下さい。前回こちらに訪問したときに感じました。この国はなんと温かい、素晴らしい国だろうと。そして僕はこの国が好きになりました。しかしこちらの世界ではギラン地方からの侵略を度々受け、少なくない数の犠牲がでていることも知っています。僕が希少な魔力を持っているなら、それで少しでも多くの悲しみや苦しみが減らせるなら…僕は力になりたいのです」


 我ながら優等生臭い回答だなぁ。本心だからどうしようもないんだけど。


「しっ、しかし…」


「それに、キュートス国はこちらの世界の盟主であり、この世界と僕の世界との重要な拠点です。もしこの国に何かあったら、僕の世界の平穏だって危ぶまれるでしょう」


 ここで利己的な見解。そして…これが恐らくトドメの一言。


「勿論戦は怖いですが…僕に踏み出すきっかけをくれたのはこの指輪でした」


「ダビデの…」


「六星環?」


 王妃とセリーヌ王女が久方ぶりに口を開く。


「えぇ。向こうに戻ってから、こいつはよく僕に話しかけてくるようになりました」


 しょうもない会話しかしてないけど。


「なんと…指輪の聖霊が…」


 大臣が絶句する。


「大臣が、体を以て僕に魔法の使い方を教えてくれたおかげです」


 何故そこで顔を赤らめるジジイ。僕の周りは変態だらけか。間違った事言ってないよねっ!?


ーーー主、類は友を呼ぶと言うぞ。


 …黙れ、筆頭変態紳士が。


「そして聖霊が教えてくれました。僕には大切なものを守る力があると」


 しばしの沈黙。昔からこういう沈黙苦手なんだよなぁ…


「うむ、許可しよう」


「「貴方(お父様)!!」」


「というより…こちらからもお願いする。どうか…この国に、この世界に手を貸してくれ」


「父上っ!」


 アレン王子が頭を下げる国王に叫ぶ。


「アレン、お前も現場にいるならわかるだろう?今、決して押されてはいないが余裕もないこのセラスの現状を…。民を預かり、守る者としてこれは千載一遇の機会なんだ…なぁアキラ君。こんな私を、汚い人間(?)だと思うか?自分の為に、利用できる者は利用する。例え、それが外から来た友人だとしても…」


 これにはアレン王子もぐうの音も出ない様子。現実を見てきたからこそ、閉口してしまう事実もある。


「いえ、国の頂点に立つ者として、当然の判断だと思います。それに、これは僕からの陳情ですから」


「ありがとう。アキラ君を護国騎士団の一員と認めよう」


「ありがたきお言葉にございます」


 平伏してふと見上げると、エリーがドヤ顔で成り行きを見守っていた。


『全部わかってるもんねー』


 と言わんばかりに。本当にわかってるのか?


「それと大臣、アキラ君はこの先この世界に滞在する事も増えるだろう。必要なこと、望む事は全て教えてやってくれ」


「仰せのままに」


 これで(僕のせいで)長くなった朝食はお開きになった。


 からのこないだと同じ執務室。あの(頬を染めた)表情の後ジジイと二人っきりはなんとなく嫌だったので、暇そうなエリーも誘ってお勉強会が始まった。


「とりあえず、こちらの時間の感覚とか日付について教えてください。まずはこっちの日常に慣れないと」


 時間の感覚は重要だ。でないと昨日のようになってしまう。


「はいはーい。私が教えるー」


 挙手制ではないんだが…元気な先生で何よりです。たぶんわしが育てたとか後で言い出すタイプだな。


「んとねぇ、まずは季節っ!四つに分かれてるの。『芽吹きの節』『緑葉の節』『紅葉の節』『枯葉の節』の四つっ!テストに出るよー」


 テストすんのか?これ。にしても自然と調和するエルフらしい暦でわかりやすい。


「一つの節は十二週の曜から出来てるの。で、曜は六つ!『水』『金』『地』『火』『木』『土』」


 神様は学ばなかったのか効率を覚えたのか、はたまたサボったのかこの世界をたった六日で作ってしまったらしい。どっちが先かは知らんけど。こっちは惑星の順番か。


「ちなみに金と木以外の四つの曜は、その名の属性が持つ作用が大きく影響を受けるのじゃ。満月は力がより大きく、新月は逆により小さくなってしまうので注意じゃぞ。月の周期は七日で一回りじゃ」


 七日か…随分と早いんだな。


「へぇーそうなんだぁ」


 知らなかったのか、『先生』よ。


「最後に一日の中の時間っ。『天』の時間と『冥』の時間ね。細かい時間は感覚だから気にしないでっ」


「ちょっ、そんな適当なのか!?」


「えぇ、エルフは寿命が長き故」


 …そんな問題でいいんだ。


「では、次は我が国の軍についてじゃ」


「私わからないから任せるねっ」


 ちょこんと僕の隣に座り直すエリー。聞いてもわかんないだろうけど、本人がいたいなら好きにさせてやろう。別に何も拙くないし。


「我が軍は『騎士団』と『魔術師団』の大きく分けて二つで成り立っております。この二つの総称が『護国騎士団』と呼ばれておるのじゃ」


 ふむふむ…。


「これらはさらに、前衛と後衛の二つずつ、計四つに分かれ、陣形もこの四つの比重の違いで成り立っております。基本的には、前衛騎士団、前衛魔術師団、後衛魔術師団、後衛騎士団という順番の配置じゃ」


 なるほど、サッカーみたいなもんか。FW、OMF、DMF、DFって感じかな。前騎は突撃部隊、前魔は攻撃魔法及び魔法補助、後魔は回復と魔法補助、後騎は最後の砦ということらしい。


「さて…以上を踏まえてアキラ様、ご希望の配置はございますかな?」


「はい、僕は後衛魔術師団を希望します」


「後衛か…確かに後衛なら前衛より命を危険に晒す心配はないですな」


「いえ大臣、僕はあくまでそんな消極的な理由で後衛を選んだわけではありません。僕の回復魔法は確かに後衛向き…ですが気持ちはあくまで『攻め』の後衛です」


 思わずニヤリと笑みを浮かべる。決意を決めた日から考えていた構想が実現すれば、この国の戦をガラリと変えてしまうかもしれない。そう思うと、笑みを隠すことが出来なかった。

さて、今回も説明回になってしまいましたが…思ったより長くなってしまいました。たぶんネタを挟まなければ多少は…そこは私の気分だったってことにしてください。なんという自分勝手。どうもすみませんでした。なんとこの話、書き上げるまで普段の一、五倍時間かかってます。なぜだぁ…

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