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クリエーター  作者: 如月灰色
《第三章 楽園》
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~第六十話~霜柱の共闘その1

ホワイトチョコレートです。ご指摘を受け、とりあえず第一章の修正をしました。中には自覚していたにも関らず放置してしまっていた物もありましたが、これほどまでとは…。自分の注意力の無さに、夏休みの最後の日を思い出しながらやりました。でも、やっぱりきちんとした形で読者の皆さんに読んでいただきたいしなぁ…。またご指摘やご報告等どございましたら謹んでお受けいたします。

「グァルルゥゥゥーーー!!!」


 マンティコアが一瞬で間合いを詰め、僕とガラムの間に突進して来る。間一髪二人とも直撃は避けたのだが…。


「なんで助走もなしにこんな破壊力があるんだよ…」


 マンティコアが頭から突っ込んだ先、樹齢四桁もかくやという立派な大木がへし折れていた。マンティコアがゆっくりと僕らに向き直る。


「総員各班ごとにまとまり、迎撃体制を取れ!必ず救護班と攻撃班は一組になれよ!…ガラム」


「なんだ?キーランス」


「…その呼び方はこの際いい。お前の隊、隊列はどうしてる?」


「なんだ唐突に。定石どおり、属性をばらして何班か作っているが」


「良し!各班ガラム部隊長の班に随伴しろ!救護班は怪我人の保護、攻撃班は前衛のサポートに徹しろ!」


「おいっ!貴様勝手に…」


「それが…部下を守る為の最善の策だ。皆、僕やお前とは違うんだよ。お前も、部下は失いたくないだろう?」


「クッ…仕方ない。総員、キーラ…アキラ部隊長の指示に従え!」


 バラバラと、しかし迅速に指示通りにまとまる。ガラムも、伊達に隊長を冠していないようだ。指示系統の確立がしっかりしている。これなら、少なくとも被害は最小限に抑えられそうだ。


「おい、キーランス…」


「なんだよ貴族様」


 ガラムが呼び方を改めてくれないので、僕もちょっと皮肉って呼んでやる。


「貴様、今まで小賢しい手を使って何度も戦場を潜り抜けてきたらしいな」


「小賢しいとはなんだ」


「癪だが、今回はお前に指揮を預けてやる。…ヤツの戦闘力は、恐らく竜族クラスだ」


「あぁ」


 突進の直前のあの威圧感は、緑竜を倒した時に近くで感じたそれに似ている。…まぁ、あの時はマドラのおっさんが無双してくれたけど。


「そして、非常に口惜しいが、俺の部隊にはまだ竜クラスとの戦闘の経験がない。この間は、留守だったからな」


「そうみたいだな」


 ガラムの隊員を横目で覗き見る。このレベルの敵に対して緊張するのは当たり前だが、ガラムの隊員やデンゼル…あのバリアス戦を経験していない隊員達の緊張の種類が微妙に違う。恐怖の色が主に滲み出ている。古参の魔術師団員は臆せばそれが穴となるのがわかっているのか、ただ静かに集中するばかりだ。


「本当に癪だが…指揮は貴様に預けてやる」


「…どうした?お前がそんな弱気に」


「俺のプライドなど…部下の命には代えられん」


 グレンも最初はいきり立っていたが、向き直って正面から対峙したマンティコアの威圧感に若干押されているようだ。こいつも、いっぱしの部隊長というわけか。自分の力…経験不足を認め、部下の為に最善を尽くす。全く持って正解だよ。僕も逆なら同じことをするだろう。でもな…。


「お前の気持ち、受け止めた。でもな、ガラム…」


「…なんだ」


「今は僕と『お前』が頭なんだ。脳が恐怖に萎縮しては、体も動けなくなっちまう」


「貴様…!この俺が貴様に頭を下げているのに…」


「いつもどおりにやってみろよ」


「っ!?」


「絶対に勝つって自信を持て!ヤツを倒すのは自分の力なんだと笑ってやれ!お前は…部下達の希望なんだ。部隊長ならきっとなんとかしてくれるって、僕達の部隊長は凄いんだって信頼してくれる。そんな希望が弱ってたら、僕やお前より弱いあいつらはどうすればいいんだ?絶望しかないだろう?だから、いつもみたいに高笑いしてやれ!部下達を安心させてやれ!」


「っ!?キーラ…」


「大丈夫だ!!」


 長口上を待ってくれる程マンティコアは辛抱強くはないらしく、ダッシュして僕目掛けて鋭い爪を振り下ろす。さっきのアレを見ていたから、気配さえ読み間違えなければ避けることは難しくない。ったく、戦隊ヒーロー物を百回見直してからきやがれ!


「だから!笑えって!お前が笑えば、部下の士気は上がる!士気が上がれば、最大限の動きを示してくれる!そうすれば!こんな獣相手に遅れを取るわけないだろう!?部下を守るのはお前なんだ!ガラム!!」


 マンティコアの追撃をギリギリでかわしながら、ガラムに講釈たれてやる。ったく、世話の焼けるお坊ちゃんだ。


「言うようになったではないか、主!」


「伊達にあの世は見てねぇよ!」


「そもそも見てないであろう!?」


 攻撃の余波が、マンティコアの爪の形そのままに周囲に広がる。部下達は壁を生成してなんとか難を逃れるが、間に合わない者にはやはり相応の傷を負わせる。幸い、深手を負った者は居なさそうだ。救護班が迅速に治癒をかける。


「よしよし、流石僕が手塩にかけた部下達だ。優秀優秀。…デンゼル!」


「…聞いてましたよ、アキラさん。どんな相手でも怯んだら負け、勉強させてもらいますよ。全班、散らばり敵に的を絞らせないで下さい!我々がバラければ、その分一度に受ける被害も小さくなります。この森の中難しいとは思いますが、出来うる限り散ってください!」


 優秀な僕の副官は、僕の意図をほとんどちゃんと汲んでくれたようだ。だけど、六十点だな。


「お前ら質問だ!こいつに勝ちたいか!?勝って功績を挙げたいか!?」


 別に皆まで聞く必要はないのでそのまま勢いで叫ぶ。


「挙げさせてやる!前衛魔術師団第一部隊員に告ぐ!動き回りながら攻撃魔法でヤツを削り続けろ!」


「しかしそれではマンティコアの注意が…」


「後衛魔術師団第三部隊攻撃班!お前らは前衛の連中の補佐だ!威力と命中率強化の!救護班は引き続き消耗した者の回復に努めろ!」


「だからアキラさん!そうすると無闇に的を…」


「的を絞らせない為にお前らを動かしてんだろ?それに、最終的に狙われるのはあくまで僕とガラムだ。リーダーを先に始末しようとするのは本能だからな」


「しっしかし…」


「デンゼル…僕を、誰だと思ってる?」


「「「っ!?」」」


 部下達一同の目の色が変わるのがわかる。…指示という名の演説に夢中で、さっきからかすり傷が増えているのはご愛嬌。別に致命傷じゃないし。


「古代竜も倒した…竜殺し…」


「そうだ!僕は竜殺し(ドラゴンスレイヤー)のアキラ!その僕が獣相手に負けると思うか?間違いを犯すと思うか!?」


「「「!!!」」」


 僕の宣誓から数テンポ間を空けて、次々と攻撃班が前衛魔術師達にサポートの魔法をかける。


「お前ら…」


「俺は!俺たちは!アキラ部隊長を信じた!あの人が居る限り、負けるはずがない!」


「勝って…ヤツに勝って、私達も力になれるってアキラ様に見せてやるわ!」


 僕の部下は、いい感じに火が点いてくれたようだ。いいぞ、もっとやれ。


「…射て!氷の魔弓!」


 僕の部下の熱気に感化されたのか、前衛魔術師からの最初の一撃がマンティコアに命中する。


「グッオオオオオオ!!!!」


 たぶんそれほどのダメージではないだろうけど、マンティコアが悲鳴を上げる。意外と役者だな、獣の癖に。


「いける…いけるぞ!」


「遅れを取るな!ヤツを倒すのは俺だーー!!」


 一度きっかけがあると、次々と前衛魔術師達の飛び道具がマンティコアに飛び交う。時々ある反撃に傷つく隊員もいるが、救護班が素早く対処する。


「…役者なのは主であろう?前にも似たようなことはあったが…」


「今までパワーバランス的に、ここまでいい感じの実戦経験をさせられなかったからな。今回は、数の暴力ってやつだ。この先僕がいなくても、隊がそれなりに高いクオリティになるように仕上げておかないと。竜殺しの僕の傘の下では、いつまでも強くなれないから。口でああ言ったけど、僕は手を出すつもりはほとんどないよ。それに…」


「?」


「ガラムの自信もな」


「…」


「あいつ、竜殺しの僕、ウラヴェリアを倒したカイムとグレン、シーリカに劣等感に似た焦りを持ってるみたいだから。個人レベルならそれもいいかもしれないけど、部隊を率いるトップとしてはいささか頼りない。あいつは…つうか、トップはそうなんだけど、無駄に自信持って強引に引っ張るくらいがちょうどいいんだよ」


「ガラムの…仲間の為…か…」


「あいつだって、一応仲間であることには変わりないからな。前世的にも」


 ダービーも色々と思うところがあるようだが、僕は件のお山の大将をそろそろ気にかけなければならん。無駄にプライドが高いあいつが僕に頭を下げてまで望んでいる成功だ。あいつにも、それなりの成果を得てもらわにゃいかん。大きく息を吸い込む。


「ガラムーーー!!!」


 戦況を呆然と見ているガラムに向かって声を上げる。


「お前の部下が必死こいて戦ってるんだぞーーー!!お前は何やってんだ!!!!まだチキってんのかーーー!!フォイフォーーイwwwww」


 草生やして煽ってやった。

区切りがわからず半端にやっちまいました。まぁいつものことですが(笑)続きます。

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